表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/176

地面の下メニュー

その1の続きです。少し説明が多い回です。細かい点など齟齬が多いかもしれませんがあまり深く考えずに読んでください。

[5時のニュースをお伝えします。速報です。先ほど未明、バルエイス魔法科学研究所にてバルエイス共同保護区内初の転生者が確認、表明されました。えー現在公表されている情報によりますと。転生者の個体名称は「ヤエヤママイカ」身体年齢は10代、身体性別は男性、とのことです]

 走っていたはずだった、普通の一般道を、最近舗装されたばかりのざらざらとしたアスファルトの上をはだしで駆け抜けていた。そしたら死んだのだ。何かにぶつかって、なんだっけ、車だった気がする。

[私個人としては、以前から疑問に思っていたのですよ。何処から来たのかもわからない人に莫大な資金と設備を投資する、その博打にね]

 何がいけなかったのだろう。やっぱりあれか、ほぼ半年ぶりに部屋から出たのがいけなかったのか。やはりひきこもりひきこもりらしく部屋でおとなしくしているべきだったのだ。だけどそうできなかった。

[しかし、現時点で無イに対抗できる手段は妖獣以外にないというのが事実であり、そして妖獣を操縦することが可能な種族はいないということも、まぎれもない事実です。ただし、ただ一つの例外、転生者を除いて]

 あーあ、引きこもり白アスパラ野郎のくせに今日は何となく日向ぼっこしたいなんて考えるんじゃなかった。いやそんなことは1ミリだって考えていないし、これからも多分考えないだろうが。それにしてもまさか、成人するより先にあの世に来てしまうとは。せめて死ぬ前にとびきりの美女とあまーい一夜を共にしたかった。寝起きにコーヒー飲んだりとかしてさ。

[多機能式防衛兵器フェアリービースト。通称妖獣は、科学者と魔法学者の知識と技術の限りを尽くして開発、製造されたまさに天才の偉業、と当時は世間に注目、賞賛されました。しかし]

 それにしてもずいぶんと現実味のあるあの世だよな。まさか俺が極楽に行けるはずがないから、ここは地獄のはずなんだが。それにしては居心地が良い。良すぎて逆に落ち着かない。

[確かに技術はすごいんだろうけれど、兵器としては失敗作だったね。使えない兵器などゴミも同然、いやそれ以下だ]

 出された食事もすごくリアリティがある。野菜を中心としたメニューは彩り豊かでしゃきしゃきと新鮮だった。米によく似た白い食べ物はもっちりとしていて、噛むごとに甘みが増した。しかし白飯の量は異様に多く、結局半分ほど残してしまった。あと食事の中に当たり前のようにそえられた錠剤類は無視しておいた。

[このように一般人はもちろんのこと、訓練を積んだ兵士であっても妖獣をコントロールすることはほぼ不可能であることが記録として残っています。過去にも何度も操縦を試みましたが、すべて無駄に終わりました。理由としては操縦に必要な魔力が膨大すぎるため、指先を動かすことさえままならない。という説が有力とされています。したがって妖獣は長らくの間、無用の長物として封印されました。我々は楽園への道を閉ざされたのです]

 室内設備も申し分ない。清潔感あふれるやわらかいベットに、穏やかな光をたたえる室内照明。きれいに清掃しきったトイレなど久しぶりすぎて感動すら覚えた。

[だがそれはもう過去の話だ。転生者の存在によって、妖獣は目を覚ました。我々は再び楽園への道を進むことを許されたのだ]

 窓の外は暗かった。異様なまでに暗い。この部屋に閉じ込められてだいぶ時間がたつ、何度も脱出を試みようとしたが無駄だった。仕方なく鍵のない窓に近づき、外を眺めていたのだが、どうもこの建物は地下にあるらしい、空がなかった。地獄なのだから地面の下にあるのは当たり前かもしれない。しかし窓の外の無数の人工的な照明によって生み出されるおぼろげな景色は、俺がこの世界において排他されるべき異物なのだということを、ささやかに実体を持って教えてくれるようだった。なんにせよ、こんなにいたせりつくせりな地獄があるのならば、死ぬことも悪くないのかもしれない。

[ヤエヤママイカは我々、バルエイス民にとって希望の光なのです]

[これでシャーロットシティと対等になれる]

[忌々しい無イ共に鉄槌を、駆逐を、殲滅を、絶滅を]

[楽園を取り戻しましょう]

[ヤエヤママイカ]

 テレビによく似た器具の画面の光を消した、人間らしくない身体特徴を持った生き物たちの言葉が途切れる。操作方法は食事を運んできた女性に教えてもらった。彼女の手には鱗が生えていた。

昔から何かとニュースを見る機会がたくさんありました。ニュース番組は独創性と創意性とともに情報を吸収できるので大好きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ