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採用しようか

イメチェン

 なんともすんごい驚きがそこに立っていた。

「る、ルドルフ隊長殿?ど、どうしたんだよその恰好」

 彼女は明らかに変化していた。と言ってもただ服を着替えただけなのだが、しかし。

 俺の背後にいる男性陣が驚き、感慨深そうに息を漏らしたのが聞こえた。ムクラはきっと顔が真っ赤になっているだろう。

「なによ、そんな物珍しそうな顔して」

 ルドルフは視線を逸らしながら、ポニーテールにまとめた髪の毛を手で触る。後れ毛がふわふわと風に舞っていた。

「思い切って目を取ってみたんだけど、やっぱり変かな?」

「いやあの、変って言うか…」

 確かに今の彼女には右目が無かった。以前より瞳の動きに違和感があったが、やはり義眼だったのか。体の傷跡と何か関係があるのだろうか。

「廃墟にいたとき実は目を外してたんだ、なんか違和感があって。そしたらバランスを崩しちゃって。だから壁に寄りかかったら…」

 子供っぽく言い訳している彼女の顔には、桃色と黒色でデザインされたシンプルな眼帯が着けられている。なかなか似合っていて、貫録を作るのに役立っているように見える。

 でもそれ以上に、特筆せねばらない変化がルドルフの身に起こっている。ちゃんと黙示しているのに、理解がなかなか追いつかない。

「私の服だと、やっぱり少し小さめでしたね」

 ソルトがうきうきした様子でルドルフの元へ駆け寄った。

 そうだよ、服が。

「その、スカート」

 最初にあった時のルドルフは、質の良さそうな暗い色の長ズボンを穿いていた。だが今はミニスカートである、OLが着ているのに似ていいる、それをもっと短くしたミニなスカートなのである。

「すみません服を貸していただいて」

 ルドルフはお揃いとなった服を着ているソルトに礼を言った。

「いいんですよ、上だけでも念のために持ってきておいてよかったです」

 ソルトは自慢げに胸を張った。

「研究所特製の携帯衣服が役に立ちました、あとでファーザーに報告したいので、ぜひとも感想を聞かせてください」

 ルドルフは自分の衣服を改めて確認している。

「上着の着心地はなかなか良いよ、ただスカートが久しぶり過ぎて違和感が…」

 そう言うと足をもぞもぞとさせた。薄手の黒タイツに包まれた太ももがこすれ合った。

「生産所の人に貸してもらったんだけど、やっぱりなんか変だな。今は時間が無いけれど、あとで着替え」

「嫌だ!」

 破裂音みたいな叫び声が通り過ぎると、後に残ったのは沈黙だった。全員が俺を見ているのがわかる。顔を中心に全身が沸騰した湯の如く熱くなった。

「え、あ、あの、」

 自分でも何を言おうと、しようとしているのか理解できず、只々混乱していた。女性陣がきょとんとしている、すぐにでも適当なことを言いたいのに脳がぐるぐる回って何も思い浮かばない。

 その時背後から両肩に、硬い手が優しく触れてきた。

「転生者様は隊長殿のイメチェンをいたくお気に召したようですよ」

 片方の肩に手を置くウサミは、実に面白そうに俺の赤ら顔を眺めていた。

 もう片方のムクラは黙って親指を天に向けている、そして自分も顔を赤くしながら女達に笑いかけた。

「僕もルル隊長はそっちの方が良いと思うよ!」

「ルルぅ?」

 今度は俺だけではなくルドルフも驚いた、今すごい呼び名が聞こえた気が。

「なに、その呼び方」

 ルルと呼ばれた少女は左目をぱちくりとさせていた。

「え、だって英雄がそう呼んでたじゃん」

 ムクラは平然として俺の方を見てくる、え、俺?

「俺はそんなこと」言ったっけ?記憶に…。

「こっちの方が言い易いし、これからはそう呼ばない?」

「いいですね!そうしましょう!」

 俺と隊長が反論よりも、ムクラとソルトのテンションの高さの方が勝っていた。

「我らがルル隊長、万歳!」ソルトが両手を上げる。

「ルル隊長ガンバ!」ムクラも手を上げる。

 そしてその手を胸の前まで下げて、拳を二つ作った。

「よし!この勢いで掛け声も作ってみよう!カッコいいやつ!」

 ルドルフ、もといルルが流れる状況に合点がついていけず、口をぽかんと開けていた。

 ムクラは構わず力説する。

「こういうさ、戦いのときにはやっぱりみんなですごい気合の入る掛け声を叫ぶものでしょうよ」

「そうかあ?」

 俺も首をかしげる、そんなことをしているのは日曜日の朝にしか見たことが無い。

「要らないだろそんなの」

「それは大いに違うよヤエヤマ君」

 ウサミが肩にずっしりの体重を乗せてきた、重い。

「あらゆる民族に共通しているように、戦いの前には己を鼓舞することも必要なのさ」

 口を耳に近づけて囁いてくる。

「そうでもしなけりゃ、怖くてやってらんないだろ」

 そして体重を俺から離す。

「重要なのは雰囲気、そして感覚だよ若者達」

「何ですかそれ」

 やっぱり緊張感のない空気に、俺も溜め息が出てきてしまう。

「無責任な社会ルールみたい」

 空気と共に疲れも抜ければいいのに。しかし相変わらず頭痛は脳に残っていた。

 仕方ない、と考えておく。

「決め台詞かあ…」

 さっさとテキトーに決めてしまおう、しかし上手い言葉が思いつかない。

 俺は何となく動いていない兵器を眺める。操作している時は忘れがちだが、こうして外から眺めているとやはり機械的な雰囲気がある。

 赤く濡れる体。

「それじゃあ」

マイカ・・・太もも

ムクラ・・・胸

ウサミ・・・顔

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