視線が刺さる
あんまり見ないで
ウサミが言う所によれば、こういうことらしい。
「やあやあヤエヤマ君、心配したよ突然このクソ忙しい時に、隊長殿とセットで行方不明になるものだから、僕はもう衝撃を受けたよ。心配し過ぎて全毛根から、ありとあらゆる毛髪が抜け去るところだったよ。
まあそれはどうでもいいんだけどね、君も薄々感づいている風だけれど、実は緊急事態が起こったんだ。地下都市アラジステムで僕らが取り逃がして、以降行方知れずになっていた巨大生命体が、君達がいない間に見つかったんだ。見つかったって言うか目的は現在進行形で僕らのいる此処、第7地上生産所へと猛進している。浮遊探索機から送られてくる情報によれば、あと一時間もしない内にヤツはここへやってくるらしい。大変だね!」
「た、た、大変じゃないですか!」
ウサミの軽薄な語りでも誤魔化し切れないほどの、予想を超える緊急な事態に、一番状況を理解していない俺が最も狼狽えていた。
「危じゃないですか!みんな避難しなきゃ!」
「安心したまえ英雄君」
ムクラが足を微かに引きずりながら落ち着かせてくる。
「君と隊長さんがイチャコラしている間に、僕たちでやるべきことはしっかりとやっておいたから。」
どうも彼はまだ色々と、厄介な勘違いをして言うようだ。でも今はそれを丁寧に訂正している時間もなさそうだ。
ウサミはムクラの言葉に少し気を取られかけたが、状況を顧みて受け流した。
「浮遊監視カメラから送られてきた情報によれば、あと一時間もしない内に奴さんは此処へやってくるらしい」
「どうにも監視カメラの調子が悪かったみたいでね」
ムクラは不安を隠し切れず眼鏡を弄くっていた。
「無イが近付くまで気付くことが出来なかったんだよ。作業員の人たちはみんな避難所に逃げて、今は作戦に必要な人員だけが作戦を手伝ってくれているんだ」
ムクラの説明に俺は驚いた。
「ここの所長さん、協力してくれることになったんだ」
ずっと体にへばりついて安否を確認していたソルトが、そこで自慢げに胸を張った。
「私が何とか説得したんです‘‘このままだと巨大生物に全員粗挽き肉にされて、蛆虫に食まれちゃいます‘‘と目を真っ直ぐ見て説得したら、所長さんも納得してくださいました」
ソルトは感激しているようだった。
「理解力のある御仁で本当に良かったです」
キト所長の苦渋が目に浮かぶようだった。彼からしてみれば僕らはとんでもない厄介者だ。
そして同時に頼みの綱でもある。
「雨ざらしになった所悪いけれど」
ウサミは俺をじっと見下ろす。
「戦えるかい?」
俺も彼を、そしてその向こうに存在している兵器を刺すように見据える。
「わかりました、大丈夫です、戦えます」
人に見られるとドキドキします。




