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今更な疑問点

今気付いてしまった

 それにしても。

「どうして俺はその、転生者とか言ったか、そう言った存在なのにできないことが多いんだろう」

「だから、そんな他人の勝手な評価は必要ないでしょ」

 卑屈な意見にルドルフが憤りかけたが、気にせずこの際だから常々考えていたことをこの場で吐露してみることにした。

「元の世界で死んだ奴がこの世界で生き返ることを転生だとして、それはどういった条件で、何を切っ掛けにして選ばれるんだ?」

 まさか死にゆく人間すべてに異世界転生が強引に発動されるとは、あまり考えたくない。生命の終わりくらい穏やかな幻想を抱きたいのに、抱きたかったのに。

「俺の世界にいた全ての人間が、あの兵器を動かせる資格を備えているのか?」

「…それは」ルドルフは相応しい言葉が見つからないように口籠り「あたしから明かすことのできる情報の範囲を超えている、すまないが教えられない」

 申し訳なさそうに、オブラートを厳重に包んだことだけを言った。

 別にあの地下世界の機密を暴こうとは思っていないので、他の無難な質問に切り替えてみる。

「じゃあさ、怪物と戦うのにどうして俺が、転生者が必要なんだ?確かにあの兵器を動かすのは大変なのかもしれないけど、でも俺みたいに力が全く足りないような奴でも問題なく動かせたじゃないか」

 思えばどうして今まで疑問に思わなかったのだろう。あれだけ巨大な地下空間を築き、そして継続できる人々が、魔法を技術として日常に活用し、科学力も十分に発展させている人々が、どうして生存を脅かす危険な生物に対抗する方法を生み出せないのか。その唯一と言ってもいい巨大兵器の運用を、別世界の素性も碌に判別できない人間一人に任せるなんて。

 出っ歯の男のへりくだり過ぎの態度が耳に蘇る。あの施設は地下世界でも重要な役割を担っていて、そこのトップである男は人格はともかく社会的観察眼は備えているはず。そんな立派な大人がどうして、未熟な子供にしか見えない転生者に世界の命運を託したのか。

 考えれば考えるほど、理解と納得が離れていく。俺は、本当は。

「こちらから教えられることは無いのに、質問するのもおこがましいと思うけど」

 考え事が止まらず黙り込んでしまった俺に、ルドルフの遠慮がちな声が後ろから聞こえてきた。

「あたしの方から質問してもよろしいかな?」

「え?ああうん、いいよ何でも聞いて」

 思いがけないおねだりに、つい軽々しく承諾してしまった。

「ヤエヤママイカ、えっと、まずは名前を省略することを許してもらえないだろうか。君の名前はあたしにはちょっと言い辛くてね」

 名前、俺の名前なんて。

「好きに呼んでいいよ」

 そういえばわざわざ「転生者ヤエヤママイカ」と呼ばれることにだって違和感があった、自分から通称を要求するのも、なんというか気が引けたので黙っていたが、相手が変更を望むのならば喜んで受け入れよう。

「それじゃあ、ママイカ君でいいかな?」

「嫌です」

 訂正、やっぱり名前は自分が納得できる形の方が良いのかもしれない。

後になって気付くことばかりでした。

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