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身勝手な不快感はいつか誰かの役に立つのか

疲労感たっぷり。

「妖獣とのシンクロテストで、肉体が膨張したり融解しないのはすんごい事なんだよ、奇跡に近い事なんだよ」

 ムクラは一人でふむふむと、持論に納得を重ねる。眼の煌めきはまるで、憧れのヒーローを目の当たりにした少年のようだった。

「ここまで魔力体制が強固な個体は他に類を見ない。やっぱり転生者はこの世界の、僕らの英雄なんだ」

「ええ…、それはいくらなんでも大げさなんじゃ」

 発熱による頭痛が、埋もれていた脳の記録を掘り起こす。そういえば、出っ歯の男もムクラと似たようなことを熱弁していたっけ。その時と同じ、無条件で不釣り合いな尊敬を向けられたことによる、絵図来たくなる居心地の悪さが心臓を握り締める。

 みんながみんな、よく解らないことで称賛をしてくる。何がすごいのか俺だけが理解できずに、空虚だけしか残らない。

 そんな俺の身勝手で要領の悪い鬱積など気にも留めずに、ムクラは意気揚々と一人言葉を続ける。

「ねえねえねえ、前の時みたいにさ、ばびゅーんとジャンプとかしてみてよ」

 無垢な少年の如き瞳の輝きが、俺の鬱屈をさらに募らせる。だが青年はいたって朗らかだった。

「あの意味解んない形のモンステラを撃退したようにさ、戦いの爪をシャキーン!と出してみようよ」

「そんなこと言われてもなあ」

 あの時は自分でもひくほど異様な状況で、だからこそ勢いのままその爪とやらを、正直どんなものかあまりそうぞ出来ないが、自然と使用することが出来たのだ。

「出来るかな…?」

 こんな所でいうのもあれだが、自身が無い。

「ダイジョブダイジョブ!1回出来たなら、なんやかんやで2回目もできるから!多分」

「ホントかよ…」

 とはいえこれ以上うだうだしている場合ではない、こうしている間にも時間は刻々と流れ去っていく。

 そうなのだ、ムクラの言う通りなのだ。俺はすでに一度、今体を置いているこの巨大兵器を自力で動かしたのだ。自分の肉体、あるいはそれ以上の俊敏性を機体で発揮していた。

 そうだ、俺も少しぐらいはポジティブな思考を持つんだ。

「ぐっ」

 発破を仕掛ける勢いで力む。まずはとにかく指先を動かし、爪で地面を掴もうとした。だが上手くいかない、体が全く自由に動いてくれない。継続していた、しかし会話の中で少し和らいでいた痺れが猛烈に復活し、確実すぎる実体を得ようとしている。動かそうとする部分から、びっしりと鉛製の鱗が生えてきているみたいだ。

「ふん、んぐぐぐぐっ?」

 鱗の感覚は全身に広がる。とてつもなく気持ち悪く、どうしようもなく不快だった。

番号付けない方がよかったかも、今更ですが。

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