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目的地周辺まで来ました、ナビゲーションを終了します

起き抜けのチュウ。

 するとすぐにするりと、強固だった腕が解かれる。圧迫されて変形していた首の中の気管が、形状記憶よろしくの反発力を以て、無事正常に元の形状を取り戻す。酸素が一気に体内へ取り込まれ、安堵の汗が背中に滲む。

「お目覚めですか?」

 声がする方を見ると、まるで何事もなかったかのようにソルトが笑っているのが確認できた。

「おはようございます!マイカさん」

 ぜえ、はあ、と息を荒げている俺に向かってそれはもう明るい、爽やかな挨拶をしてきた。

「お、お、おはよう、ございます…」

 とっても素敵なモーニングコールに息を絶え絶えにしつつ、こちらも努めて快活に挨拶を返そうとした。口を開くと嫌な涎がこぼれそうになる。

 タイヤの音は継続して鳴っていた。

「本日も作戦があります、張り切って頑張りましょう!」

 ソルトはきらきらと瞳を輝かせて、胸の前で拳を二つ作った。

「あ、うん、そうですね…」

 地球で生きていた頃にはまずお目にかかれなかったポーズに、何も言葉が返せず生返事しかできない。

「えーと、今どこを走ってるんだ?」

 まだ眠気が抜けきらず、日曜日のドライブ中に車で寝てしまった子供みたいな質問をしてしまう。

 なんだか夢見が悪かった気がする。しかしその内容がまったく思い出せずに、じんわりと火照る頬を撫でながら周囲を見渡す。

 ルドルフの呆れたような溜息が聞こえた。いつまでも寝ぼけている転生者様に、そろそろ嫌気が差してきたのかもしれない。

「えーとね、今は」

 ウサミが何か電子機器らしきものを操作した、ピコピコ音がしじまに落ちる。

「メインロートを通過して上層の街、ハイフォトゥールを目指しているよ」

 わざわざ説明してもらったのだが、言っている意味が分からない。謎の都市名にぽかんとしていると、

「あーっと」

 ウサミが言葉を、外部の訪問者にもわかりやすい物に選び直す。

「要するにだね、高速?って言うのかな、移動用のでかい道を通ってアラジステムより上にある、保護区でもかなり上の方、地上に近い所にある街へこれか向かうんだよ」

「なるほど」

「解ったかい?」

「何となくわかりました」

 とりあえずぼんやりとした想像のできる、わかりやすい説明だったと思える。

「向かっているとは言っても、目的地はもう近くなんだけどね。あと10分もあれば到着する」

「マジですか」

 マジで寝てる場合ではなかった、二度寝なんかもっての外だ。

「ですので、早急にコンディションを最良に整えてください」

 ソルトが顔を近付けてきた。

「わかりました」

 俺はとっさに手で彼女の顔面を拒んだ、唇の湿った感触が皮膚に吸い付く。

「体調管理なら自分でできるから、ソルトは手伝わなくていいから」

「ええ…、大丈夫なんですか?」

 ソルトが唇を尖らせたまま、瞳に憂いを浮かべる。

「大丈夫だから」

 とにかく彼女の行動を阻止しなくては、またしても変な夢を見そうな気がする。そんな直感があった。

後書きが思いつかない、すみません。

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