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忖度テクニック

思やりたい。

「あの怪物はそんなにヤバい物だったのか」

 襲いかかった時にはそんな危機感を抱けなかった、ただ余裕がなかっただけかもしれないが。

「それはもう、激ヤバですよ」

 ソルトは砕けた言葉で驚きを表現しようとする。

「レベル2ならまだちょっとしたことで済みますが、3異常ともなると最早天災レベルです。ここまで来ると文字通り神様に助けを求めるしかない、あるいは運命に身を捧げるしかない、とファーザーは言っていた気がします」

「へえー」

 なんだか空想じみた規模の話にいまいち真剣みが持てず、生返事しか返せない。

「まあ、あれだ」

 気だるげにウサミが付言する。

「少なくとも確認できる範囲で、犠牲者を一人も出さなかった。その事実は確かにあって、これだけでも我々の立派な進歩だ。俺が神だったら花丸満点を進呈したいくらいだね」

 犠牲者、俺はあの野郎、じゃなくて男性の姿を思い浮かべる。ひりひりとする頬を撫でながら、彼はあの後無事に避難できただろうかと、無意味に思いをはせた。

「それでは駄目なんだ」

 ルドルフが歯を食い縛る。

「我々はもっと高みを目指さなくてはならない。我々の世界を完璧に保護し、そして拡大する」

 まるで誰かからしつこく言い聞かされたことを復唱するように、若者は言葉を紡ぐ。拳はきっと赤くなるほど握りしめられているに違いない。

「楽園のその先に、きっといつか」

 きっといつか何があるというのか、何をしようとするのか。ルドルフの口からそれを知るより先に、

「隊長さん!」

 少女の素敵な邪魔が入ってしまった。

「お飲み物は欲しくないですか」

 俺にした時よりは若干強引めの語調で、ソルトはルドルフに注文を促した。

「まだまだ作戦は終わってません、そんなに気を揉んでいたら疲れて倒れちゃいますよ」

「…いらない」

 ルドルフはぶっきらぼうに言い返す、だがソルトもしつこい。

「またまたそんなこと言って、顔色も悪いですし尻尾も心なしかささくれ立ってますよ。何か温かいお飲み物を」

「うるさい、いらないと言っているだろ」

 ルドルフも何故か頑なだった、彼もソルトが相手だと言葉に硬さが抜けている、感じがする。それもあるが彼はどうも、何かにおびえている節も見られた。短い沈黙の中で考察をしていると、

「はいはいはい!」

 空気を誤魔化すつもりで、ムクラが声を上げた。

「ボク、僕欲しいです飲み物。珈琲とか紅茶とか、何でも」

 仕事をきちんとひと段落させた彼は、彼なりに気まずさを察知し、しかし己の余裕を犯さない程度に場の雰囲気を変換しようとしていた。

思いやり、大事にしたいです。

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