綺麗な言葉を並べたいだけ
綺麗な言葉遣いをこ心がけましょう。
「まあ、あれだ、つまりこう言いたい」
ウサミは茶を飲みほして言葉を続ける。
「ヤエヤマ君、君が本日体験した出来事はこの長ーい歴史と広ーい範囲を持つバルエイス共同保護区においても、なかなかお目にかかれない事象だってことだよ」
「そうなんですか」
そんなこと言われても、俺はここに来てまだ幾日しかたっていない。歴史を勉強する余裕もやる気もなかったので、比較できる知識すらない。
「そんなにしょっちゅう、あんな怪物に襲われるなんて大変ですねえ」
ホンの気遣いのつもりで言った台詞だった。
しかし返ってきたのは同調の言葉ではなく、低く響く唸り声だった。ウサミのものではない、これはルドルフの声だ。
「んなわけないだろ、この…」
「え、いや、あの」
深手を負った獣のような呻きに、俺は不安になる。
「大丈夫ですか、ルドルフさん」
「10年、いやもう11年になるか」
若者は俺に構わず、苦しげな独白を続ける。
「あんな下層にまで侵入を許すなんて、情けないにもほどがある。いったい何のための名前持ちだ?これではただの恥知らずではないか」
苦虫を噛み潰すような声。
「これじゃあ何も変わってない、何一つ学習できていない。無知で無料な木偶の坊みたいなものだ」
若者の牙がぎりりと鳴る。
「クソッ、ああクソッタレ!何が楽園獲得だ、何が有効利用だ。御託を並べただけの、子供じみた責任転換だろ!市場の買い物客の方が、まだ筋が通ってる…」
「ルドルフさ…」
若き隊長が一体何に憤っているのか、さっぱり分からなかった。正直いきなり怒り出して、意味不明な単語を並べ始めたので、不気味だと思った。
しかしあまりの剣幕に彼は決してふざけていないことを理解し、そして同時にかけてあげる言葉を探しあぐねていた。
「まあまあ隊長さんよ」
期待が左に大きく揺れた後、ウサミが落ち着いた声で語りかけた。
「あなたともあろうお方が、クソッタレなんて汚い言葉を使ってはいけませんよ。世俗に混ざったと勘違いされます」
ウサミの諌めに、ルドルフは舌打ちのみを返した。
「やれやれ」
困った生徒を見守るような溜息を、ウサミは一人こぼした。
「でも確かに、今日はびっくりしましたよ」
まだ実態を給湯室に残しているソルトが、二人の会話に違和感なく参加してきた。
「あんなにも大きい無イは、資料にもあまり残されていませんし、ましてや肉眼で見る機会なんてめったにありませんよ」
背の低い少女も自分だけの言葉を並べる。そうしたくなるほど彼女の体にも驚愕の余韻が残っているのだ。
悲しいことが起きました。最初に書いた文章が何故か消失し、掲載されているのはもう一回書き直したものなのです。びっくりしました、そして少し疲れました。