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想いが固まり、清々しい心で迎えた翌日。こっちが妬いているとも知らず、親友はいつも通り先公にデレデレしていた。
「へえ。じゃあキュー先生も見回り班だったんですか」
「うん、理事長先生と商店街方面をね。もう大変だったのよー!コンビニの前で堂々と座り煙草吹かしてる子達がいて」
片手を口元へやり、警笛を吹くジェスチャー。
「私、早速注意しに行ったの。そしたら何故か当の本人達より、理事長先生や通りすがりの壬堂君達の方がわたわたし始めて。あれって何だったのかな。二人共分かる?」
勇猛果敢な女教師の突撃を暫し想像。数秒後、俺達は揃って噴き出した。
「??」
「くくくっ!」
「ははは!でも良かったです、先生に怪我が無くて」
安堵の声に、もう!憤慨するド天然教師。
「君達まで理事長先生達と同じ事言わないの!うーん。そんなに危なっかしいかな、私って」
「無自覚なのが一番ヤバえんだよ。な、ハイネ?」
「ええ。女性なんですから、もっと危機意識を持って下さい」
「にゃー」
「ミーコまで、むー……」
怒りの余り虎河豚化する頬。こうして見るとマジで餓鬼だな、この先公。
(けど、こんなに親しくても、ハイネの本当の顔は知らない……今の所、一歩リードかな)
微かな優越感に浸りつつも、自然思考が行くのはその原因だ。流石に生まれつきではないだろう。ああなってしまう程の過去、俄かには想像し難いが、
(親父さんとの謎の距離感も、大方そいつが関係しているんだろうな。生憎当人は無自覚なみてえだが)
こっちが気を揉んでいるも知らず、憎ったらしい位ヘラヘラしやがって。腕を伸ばし、むんずと眼前の首根っこを掴む。
「わっ!?いきなり何するんだよ、ロウ!?」
「五月蝿え、俺を無視すんな!」
「別に無視してないよ。考え事している風だったから、気を遣って声掛けなかったのに」
「何応!」
両頬をこれでもかと、勿論手加減は目一杯して、外側へ引っ張る。
「いひゃい!ひふじんだ!!(痛い!理不尽だ!!)」
「あはは、二人が喧嘩なんて珍しいね」にこにこ。「ほらほら、取り敢えずロウ君は手を離してあげて。ハイネ君も謝るの。でないと二人共、デザートのフルーツサンドあげないからね」
そう言って白い菓子箱、昨日上司から貰ったブツを示す。
「うっ。それは」
「こんなんでも一応は先公だな。卑怯だぞ」
いたいけな生徒達にふふん♪音楽教師は如何にも得意げに貧乳を張ってみせた。