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厭な奴に見つかった。
「久し振りだな、毛むじゃくら」「……」
折角の休日。親友を誘ってボウリングに来たって言うのに、最悪だ。
「何無視してんだよ、あぁ?」
「ダチを待ってんだ。悪いが席を外してくれ」
「へえ。もうすぐ帰って来るなら紹介してくれよ。俺達友達だろ?」
黒髪を一房金に染めた不良、ジケイト・ベーは前の学校の同級生だ。もっと有り体に言えば―――俺を散々虐めていたグループの親玉。
「ところでさぁ、ちょっくら金貸してくれよ。どうせ今日も、『お父様』から沢山小遣い貰ってるんだろ?」
素性を隠す現在と違い、公立校時代は金持ちの私生児と散々揶揄されていた。勘違いも甚だしいが、当たらずとも遠からず。ダイアンは母方の姓だし、学校行事に参加していたのも母のみ。尤も、それは親父が特殊体質で、極力不測の事態が起こらないよう配慮した所が大きいのだが。
「……嫌だ」
「は?お前、俺に逆らえると思ってんのかよ?」
胸倉を掴まれ、薄い緑の瞳に暴力的な光が宿る。が、俺は頑として首を縦には振らなかった。
「中坊にもなって、何時までも餓鬼みてえな真似してんじゃねえよ。カスが」
転校で禊は済んだ筈。もういい加減ウンザリだ、過去に引き摺られるのは。
元虐められっ子の反抗にガンッ!予想通り奴は頭を小突いてきやがった。
「ちょっと見ねえ間に随分偉くなったもんだな―――なら、こっちにも考えがあるぞ」
ニヤッ。
「大事なお友達に教えてやろうじゃないか、手前が」「―――そこ、僕の席なんだけど。どいてもらえますか?」「っっっ!!!??わああっっっ!!!」ドサァッ!
誤解を招く表現だが、ジケイドの反応は決して大袈裟な物ではない。奴を見下す緑の眼はそれ程までに恐ろしく―――絶対零度だったのだから。
(あ、ああ……これか、委員長が言っていたのは……)
直視を免れている俺の心臓さえ、未知の恐怖にバクバク鳴りっ放してやがる。まして至近距離、しかも正面から眼光を喰らったジケイトのダメージは相当な筈だ。