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 出席を取った担任は即自習を告げ、足早に退室。勿論置き土産として、教壇に数学の小テストを残してだ。そいつを協力して解き(ズルだって?一体何の事だ?)、残り時間は事件以外の話題を雑談して過ごした。

 終了直前の校内放送に因り、二限からは普通に授業の運びとなった。とは言え午後は緊急全校集会、からのホームルーム即放課後の変則的時間割だが。

 んな訳で二限目、キューの先公担当の音楽。ウキウキするハイネには及ばないが、俺もあいつの授業は好きだ。(俺達は違うが)音程が多少外れても怒らず、とにかくまずのびのびと歌わせる教育方針。その大らかさのため、最初は『Dr.スカーレット』の姪と恐れていたクラスメイト共も、最近はやや馴染んできた様子だ。

 女教師は敢えて事件に触れず、いつも通り音楽観賞と歴史を行った。最後に歌を二つ歌い、授業終了。次は体育……フケるか。


「あ、ダイアン君。ちょっといい?」「あ?」「何か御用ですか、キュー先生」


 息ピッタリで振り返る俺達へ、先公は手で払い除ける仕草をした。

「ハイネ君はいいの。ほら、次体育でしょ?早く行って着替てて」

「あ、はーい……じゃあロウ、また教室で」

「ああ」

 釈然としない風の親友を見送り、招かれるまま音楽準備室へ。半開きの所を覗いた事はあるが、入るのは初めてだ。

「珍しいな。あんたが俺だけに用事って」

「あれ、そう?」

 準備室は金管や銀管、木管楽器でほぼ占拠されていた。一応隅の棚に声楽部の楽譜も突っ込まれているが、如何にも肩身が狭そうだ。

「でもミーコの餌やりとか、よく頼んでる気が」コンコン。「あ、来た来た!」

 ドアを潜って来た人物を確認し、軽く吃驚してしまう。何故アンダースン先公がここに?

「わざわざ御免ね、アラン君。しかも次授業なのに」

「別に構わんさ。擦れ違った何人かに、最初のストレッチは頼んでおいた」

 Tシャツにジーパン姿の体育教師はそこで俺に視線をやり、ようダイアン、筋骨隆々の右腕を挙げた。

「え、何だこれ。まさか二人掛かりで説教とか」

「はっはっは、違う違う。だからそう怯えるなよ」

 爽やかにニコニコ。相変わらず絵に描いた様な体育会系は、顎に手をやり得意気に続ける。

「にしても俺の睨んだ通り、お前滅茶苦茶足速いな!気が向いたら何時でも授業に出て来いよ。今までの欠席全部チャラにして、ついでに最高評価付けてやるからさ!」

「おいこら、生徒を点で釣るなよ。うちの担任じゃあるまいし」

 苦笑。

「そうよ、アラン君。真面目に出席している子達に申し訳無いと思わないの?」

 幼馴染からも諭され、分かってるって、分厚い肩を竦める。

「けど、ダイアンに関しちゃ割と本気なんだぜ。お前だって見ただろ、体育祭のこいつの見事な走りっぷり。ははっ!あれでハイネが横にいなきゃ、確実に学園新記録出てたのにな」

「……んな訳あるかよ」

 他ならぬあいつが頼んで来なかったら、俺は絶対あの場に立たなかった。二人だったから勇気を出して―――過去のトラウマを乗り越えられたのだ。

「でも本当に綺麗で格好良かったんだよ、あの時のロウ君」

「止せよ、あんたまで」

 照れ臭さから頭をガシガシッ。

「俺の事なんていいから、さっさと本題に入れよ。二人共、本当に一体何の用だ?」

 すると先公は腕組みする幼馴染を見上げ、意味深に頷いた。

「えっと実は、私達……今朝の緊急職員会議の後、理事長先生に呼び出されたの。ハイネ君は昨日の連続殺人犯に狙われる可能性が高い。だからお二人に影ながら守って欲しい、って」

「お前も噂を聞いているかもしれんがあいつ、被害者の条件に当て嵌まっているらしくてな。まぁ他にも該当する生徒はいるが、何分あいつは親元を離れている下宿生だ。で、保護者代理の俺達に話が回って来たって次第さ」

 確かに片方頼りないとは言え、大人二人掛かりの警護ならそうそう“翡翠蒐集家”も手を出せないだろう。個人的には癪に障るが、止むを得ない。

「だが、残念ながら俺達は教師だ。部活の都合に加え、キューには出張もある」

 おや、風向きが、

「だから、ロウ君。理事長室を出てから、二人で相談したの。警護作戦のためにもう一人、時間に融通の効く仲間を引き入れよう、って。勿論、あなたにも色々と用事があるのは承知しているけど、でも」

「皆まで言うなよ。水臭えな」

 俺は鼻を擦り、自信満々に笑う。

「やってやるよ。で、やっぱ本人にはバレないように見張った方がいいよな?」

 狂喜乱舞する内心を悟られないよう、冷静なトーンでアンダースン先公へ質問する。

「ああ。知ったら変に気を遣わせちまうだろうし、あくまでこっそり頼む」

「了解。んじゃ取り敢えず、連絡用に携帯番号交換しとこうぜ」

「お、成程。お前頭良いな」

「フツーだろ、これ位」

 二つ返事でOKを出した親指を引き、俺はポケットの携帯に手を伸ばした。 




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