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「―――久し振りだな。こうやってあんたに組み手してもらうのは」
ザッ。右脚を後ろに下げ、助走態勢に入りながら呟く。
「いいや、今日は私がしてもらう側だよ。身体を動かしていないと、不安で今にも脚が竦んでしまいそうだからね……!」来る!
一秒遅れ、俺も敵に向かって跳んだ。親父相手に手加減なんてしてたら、それこそ一撃で沈められる。囮の左キックをかましつつ、固めた拳をフルパワーで突き上げる!
ドガッ!バシッ!バキィッ!ドスッ!!「やるな!」「そっちこそ!!」
合わせて武道百段は伊達ではない。無手技も柔道空手カポエラ等々極めたこの男に、本来なら修行も積んでいない俺が敵う道理は無いのだが。
背負い投げされつつも、地面に叩き付けられる前にどうにか腹筋で持ち堪える。技を掛けた後の一瞬の隙、ここだ!
「でいやっ!!」「くっ!!」
渾身の回し蹴りが脇腹に炸裂するも、感触は軽い。咄嗟に後ろへ避けられたか。だが、勝負はまだこれからだ!
「はっ!」「遅えっ!」
身体を捻って掌底突きをかわし、そのまま押し込みざまに肩の付け根を肘で強打。よっしゃ!髭が一瞬歪むも、カウンターで飛ぶ膝蹴り。回避し切れず半分喰らいながらも後ろに飛び退き、鳩尾を擦って距離を取った。
「おい、糞親父!久々だからって手加減すんなよな!!」
「してない!」
そのまま付かず離れず攻防を繰り広げ、時が経つのも忘れた頃。流石に本気が過ぎたか、父子共にふらふらの体で鉄棒へと寄り掛かった。
「はぁっ、はっ……腕を上げたな、ロウ」
「あんたもやるな、親父……」
日頃の練習の賜物だ。にしても前々から不思議に思っていたが、あの爺本当に何者だ?アドバイスの的確さと言い、到底ずぶの素人とは思えないのだが。
回収した上着を腕に掛け、未だ荒い息の父は頭を下げる。
「ありがとう。これだけ動けばどうにか眠れそうだ」
「別に礼なんていい。俺も本気出せて楽しかったぜ」
差し出された右手を束の間見つめ、武道の先達はガッチリと己がそれで握り締めた。




