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始まりの日常


 日本でも珍しい男が奉納演武を行う清澄神社……この神社がある街で生まれる新しい恋の物語───

 

 タンッ……トントッ……タン……。

 薄暗い祭場を模した練習場で一人俺の作り出した息遣いと舞の足捌きの音、持っている練習用の模造刀が風を斬る音が響いている。

「ふぅ……まだまだだな……」

 最後のステップを踏み終え模造刀を鞘に仕舞い、入り口近くに置いていたタオルを取りうっすらとかいていた汗を拭いていると、母屋に続く戸が開き親父が入ってきた。

和哉かずや、まだ居たのか…明日も学校だろう」

「あ~……まだ四ヶ月あるけど未だに不安だからね……」

 俺が、舞う八月の奉納祭りにはまだ四ヶ月ある。しかし、俺が親父の代わりに舞うようになって二回目だったからまだ不安があった。

 「まだ三ヶ月あるゆっくりしたら良いさ。」

 「そうするよ……で?何か用があるんじゃ無いの?」

 「おぉ、そうだった。明日から三カ月程県外にある分社全てに行く事になっていてな、伝えるのを忘れていた。」

 うちの神社は本山になっていて、県外に約七十軒程の分社がある。

 「大事な事じゃねぇかよ……」

 模造刀を壁に掛け、親父と練習場を出て母屋に向かいながら話をした。

 「ははは……悪いな、凪沙なぎさには伝えてあるから心配は要らない。母さんも一緒だから二人になるが、今更不安には思って無い」

 「という事は、お金もいつも通り?」

 「ああ、何時もより少し多めにお前の方に入れるって母さんが言ってたぞ。」

 「そっか……分かった」

 「それだけだ。それじゃ明日は早いから俺は寝るぞ。和哉も風呂に入って早く寝るんだぞ。」

「分かってるよ。」

 親父と別れて自分の部屋に行くと、消した筈の電気とテレビの音が聞こえてきた。

「またか……」

 部屋の戸を開けると妹の凪沙が俺のベッドに横になってテレビを見ていた。

 「あ、お兄ちゃんお帰り~」

 「ったく……勝手に入るなって何時も言ってるだろ…」

 「だって、居間にはお母さんが占領してるし~」

 「ならせめて俺に一言言ってから入れ」

 軽く凪沙の頭を撫でるように軽く叩き、パジャマと下着を持った。

 「えへへ~。あ、お風呂、お兄ちゃんで最後だよ」

 「あいよ。テレビ見終わったら戻れよ」

 「は~い」

 凪沙の軽い返事を聞き流し、風呂に行く前に水を飲もうと居間に行くと、電気が点いていた。

 「あら、和哉今からお風呂?」

 居間に入ると母さんがテレビを見ながらノートパソコンで何か仕事をしていた。

 「さっきまで練習してたからね。それよりも明日朝早いんだろ?寝なくて良いの?」

 「直ぐ寝るわよ。コレももう終わるしね」

 「………そっか……後、凪沙が俺の部屋を占領するから、仕事は部屋でしてくれよ」

 「う~ん……部屋だと集中出来ないのよね……あ!凪沙の部屋にもテレビ付けようかしら?」

 「アイツの寝坊が増えるから止めてくれ……んじゃ入って来るわ」

 「は~い、行ってらっしゃい」

 コップに注いだ水を飲み干し、母さんが居る居間から出て風呂に向かった。


────────────────────


 小一時間程経って風呂から上がり居間に入ると母さんはもう寝たみたいで電気が点いたままだったがテレビは消えていた。

 「……戻るか」

 居間の明かりを全部消し自分の部屋に戻った。

 「……………」

 「すぅ……すぅ……」

 部屋に入ると何時も通り凪沙がテレビと電気を付けたまま寝落ちしていた。

 「ったくもう…」

 凪沙の背中と膝裏に腕を入れ横抱き…いわゆるお姫様抱っこをして直ぐ近くの凪沙の部屋に運んだ。

 「……よいしょっと」

 ベッドに寝かし、春だけどまだ肌寒いから軽めの布団を掛けて凪沙の部屋を出た。

自分の部屋に戻り少しネットを開いて動画を見たりしていると、いつの間にか日付が変わっていた。

 「……寝るか」

 電気を消しベッドに入るとすぐに眠りにつけた。


────────────────────


 朝、俺はいつも通り五時前に起き宮司の服を着て大体五時から日課としている境内の掃除を始めた。

 三十分位してると、毎日犬の散歩に来てくれる近所のお婆さんと世間話をしていたらもう六時になりかけていたからお婆さんと別れて家に戻って家族四人分と何時も来る幼馴染みの分の朝食を作った。

 「おはよう和哉、何時もありがとね」

 「おはよ母さん。別に毎日のことだから気にしないで良いよ」

 料理がもう出来た位に母さんがやってきてその後すぐ親父が居間に入ってきた。

 「おはよう和哉、昨日も言ったが家を頼むぞ」

 「おはよ親父、分かってるよ。任せといて、凪沙にも色々やらせるし」

 「うん、なら安心だ」

 七時前になり、親父と母さんは出発して行った。


────────────────────


 そろそろ凪沙を起こそうかと考えていたら、パタパタと走る足音が聞こえ居間に幼馴染みの香奈が入って来た。

 「カズ兄おはy『ガシッ!』痛たたたたたた!?」

 入って来た香奈の頭を鷲掴みして笑顔で朝の挨拶をしてあげた。

 「おはよう香奈……しかし何時も言ってるが、走るな!」

 「わ、分かった!分かったから!頭割れるぅぅぅ!!」

 「ったく……朝飯出しとくから凪沙を起こしてきてくれ」

 「はぁ~い……」

 香奈を解放してやると頭を押さえながら凪沙の部屋に向かって行った。…………もちろん歩いて。

 「さて、用意するか」

 三人分の朝食を用意していると凪沙の部屋から騒がしい音が聞こえてきた。

 『な~ぎちゃん!おっきろ~♪♪!!』

 『キャアァァァァ!?』(ドサッ)

 「…………朝から元気だな」

 十分位してニコニコ顔の香奈と脹れっ面の凪沙が居間にやって来た。

 「おはよう香奈、朝から元気だな?」

 「おはようお兄ちゃん……ねぇ、香奈ちゃんのあの暴力止めるように言ってよ!」

 「え~?暴力じゃ無いよ!?」

 「暴力だよー!」

 二人がじゃれ合ってるのを見ながら朝食を食べ始めた。

 「んで、香奈どうやって起こしたんだ?」

 「え?なぎちゃんが掴んでた布団を思い切り引っ張っただけだよ。あ、なぎちゃんお醤油頂戴」

 「はい。ね?非道いでしょ?」

 じゃれ合ってると思ってたら二人は仲良く並んで座りながら朝食を食べていた。

 「香奈、次も期待してるぞ」

 「りょ~か~い♪♪」

 「えぇぇ!?」

 両親が居ないだけで何時も通りの朝食の時間でした。


 二作品目です!よろしくお願いします!

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