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34 ようこそ、ヴァリスへ

ようやく執筆にとれる時間ができました。いまさらな更新で読んで頂けるかもわかりませんが、よろしくお願いします!

 

「どうしても駄目なの?」

「ええ、規則ですので」

 

 先ほどから目の前の兵士は同じことしか言わない。私が言うのもなんだけど、もうちょっと融通が利いてもいいんじゃないかと思う。

 

「何度も言いますが、流石に魔物を進入させる訳にはいきません。どれ程人に懐いていようと、そこに存在するだけで人は恐れるのですから」

 

 とは言えここまで言われては、私にはどうしようもない。郷に入っては郷に従えと、古い文献で読んだこともあるし、そう言ったものには従うべきだと思う。

 私は後ろで鎮座しているストームライガーとルティアに振り返る。ルティアは動かせる手ができて嬉しいのか知らないけど、ストームライガーの毛を引っ張って遊んでいる。

 ……いや、あんたも遊ばれてないで嫌ならどけなさいよ。微妙な表情をしているのがわかってしまう。

 

「お嬢様、仕方ありませんが……」

「そうね」

 

 エミリアが心配そうに私に耳打ちする。仕方ない。人生って仕方ないことばかりだ。

 私はため息を吐くと、控えている二匹の元へと歩を進める。

 

「ごめんね、あなたたちは入れないみたいで」

『あー、そりゃそうか……んじゃま、俺たちは外で待ってるよ』

 

 以外に物分かりよくルティアが答える。ちら、とルティアが隣のストームライガーに視線を向けると、小さく頷いた。ひょいと口に咥えると平原の方へ歩き出す。

 

「ちょ、え、そんなんでいいの?」

『そんなんでもなにも、しょーがないだろ?』

 

 あとでちゃんと呼んでくれよー! と言い残し、ルティアたちは去っていく。

 ……ちゃんと合流できるのかしら。

 少し、寂しさを感じる。この旅が始まってから、ずっとルティアに助けられていたからだろうか。思っていたよりも、ルティアに愛着を持っているように思う。

 

「ご協力、感謝します。ようこそ、ヴァリスへ」

 

 小さく頭を下げると、兵士はその身を横にどかした。

 小さな門を潜ると、潮の匂いを一層強く感じる。

 わっ、と人の奏でる騒がしさが耳を貫いていく。

 

「えへへ、すごいですよね! さすが、大陸一番の港です!」

 

 まるで自慢するかのように、シャンテが笑う。ゴブリンに襲われていたところをルティアに助けられたらしい、アルケミストの少女。

 

「ちょっと、シルル、あんまりきょろきょろしないでよ」

「ご、ごめんね、ほら、私、森育ちだからあんまり港に慣れてなくて……」


 物珍しそうに辺りを見回しいたシルルに忠告すると、恥ずかしそうに顔を伏せた。

 まぁでも、その気持ちはわからなくもない。私がいた王都は石造りが基本だったのだが、どうもここでは混合しているらしい。また、あちこちに見える人も、日焼けしていて、活気があるように感じる。

 

「うちに寄ってくといいです。助けて貰ったのですから、できる限りお礼はするのです」

 

 とは、シャンテの言葉だ。

 直接助けた訳じゃないが、それでもだと言っていた。まー、傍から見たら、私はまるでモンスターマスターって奴に見えるのかもしれない。

 

 大通りを歩くと、活気はさらに強まった。辺りから自分の店の商品を叫ぶ声が飛び交っている。

 けれど、それに強い違和感を覚えた。まるでカラ元気を出しているような。

 

「無理、してる?」

「鋭いですね、お嬢様は」

 

 と、シャンテが口を挟む。

 怒号は自分を誤魔化すためで。

 笑顔を浮かべるのは負けたくないためで。

 だからこそ、この街はどこか歪だった。

 無理矢理に元気を出して、自分を鼓舞するように。

 

「ま、その辺のことは皆様には関係のないことなのです。さ、着きましたよ」

 

 大通りを曲がった先に、一軒の小さなお店があった。アンティークショップのような、古風な店構え。こじんまりとした店先のドアを、シャンテが叩く。

 

「お師匠さまー! あなたの弟子のシャンテが帰ってきたですよー!」

 

 叫ぶと同時、かちゃり、と鍵の開けられる音がして、扉が開く。向こうには、誰もいない。

 

「……まったく、ものぐさなんですから。さ、どうぞ、入ってくださいです」

 

 言って、シャンテは扉へと私たちを導いた。

 

「ようこそ、です!」

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