聖戦。
――それは、静かなたたかいでした。
――聖戦、それは、数にして千にも満たない言葉のやりとりでした。
……それでも「聖戦」とよぶのは、二人で憧れた空を目指して互いに築いてきたこの「塔」を、雨にもまけず、風にも負けず、お互いを支えあって何年も何年も大切に築いてきたこの塔を――わたし達にとって、おかしいくらいに意味もないものに変えない為に、ふりしぼって千にも満たない言葉を贈りあったから。
空までこの塔を一緒に築こうと沢山のレンガを積み重ねました、最初は二人楽しく積み重ね、目指す「空」に近づいてきました。
その途中で気付いたのです。
……辿りつきたいモノが違う、と。
目指すは同じ空なのに……
わたしは夜と呼ばれる群青の空に。
あたなたは昼とよばれる蒼い空に。
お互いが目指す「空」は、まったく違うものでした。
あなたは鯨雲が穏やかに泳ぐ蒼い空に辿りつきたいと言葉を紡ぐ。
わたしは銀色の光が踊る群青の空に辿りつきたいと言葉を紡ぐ。
辿りつきたいモノは同じなのに、どうしてこんなにも違うのか。
まだ言葉を上手く使えない二人は、千にも満たない言葉を痛みに代え、静かで短かい聖戦を終えました。
何年も築きあげた目指すモノを守る聖戦は、あっけなく終わりました。
――目指すものが違う限り、塔を築いても意味はないね。
お互いが紡がいだ言葉で、少し傷いた顔で、笑いあって、聖戦の終わり。
ふたりは、ゆっくりと違う場所を目指して歩きだしました。
残ったのは、互いに築きあげてきた作りかけの塔。
――もう、二人で一緒に塔を築くことは無くなりました。
それでも、二人はさみしくはありませんでした。
だって、そこには「群青」と「蒼」の境目の淡くて優しい「黄昏」の空が優しく塔を包みこんでいたから――
二人が築いた塔は、いつまでも「群青」にも「蒼」にも染まらず「黄昏」に染まって佇んでいる。
その美しさは、わたしたちが築いたものが意味のないものでは無かったと思えた。
自分の中では結構大きな節目の時に何となく書いたモノです、改稿するかも。
まぁ、なんにせよ出会いも別れも無駄にはならないと思いますよ、たとえそれがどんな形であろうとも、長い目で見れば……ね?