スターチャイルド
イベントで使用。朗読劇脚本 de す
N ある夏の日の夜、夜の空に星が輝いていたあの日。街では花火大会が開催されおり、夜の空を鮮やかに彩っていました。
SE(花火)
光博&アキラ「たーまやー」
アキラ「……ねぇ光博、ちょっと聞いていい?」
光博「え? 何よ? アキラ」
アキラ「暑くない?」
光博「暑いよそりゃ、夏なんだから」
アキラ「だったらさ」
光博「うん」
アキラ「別にこの秘密基地で花火見ることもなかったんじゃないかな?」
N 秘密基地とは裏山の中腹にある大きな木を中心に木材をロープで縛り付けた簡単なものでしたが、二階まで作られており、子供の作ったものにしてはなかなか手の込んだものでした。
光博「……せっかく作ったんだから活用しないともったいないだろ! ここなら街が見下ろせて花火もよく見える! 人も来ないし最高の環境だろ!」
アキラ「いや、でも虫に食われるし、汗かくし……」
光博「それぐらい我慢しろよ!」
アキラ「というより光博の家で見ても景色は大して変わらない気がするんだけど……」
光博「家だと妹がうるさいんだよ! お前は相変わらずネチネチ愚痴が多いな」
アキラ「そりゃこれだけ暑かったら愚痴もでるよ! しゃべってるだけで汗が吹き出してきた……」
光博「まったく女々しい奴だ。ほら、家から持ってきたジュースやるよ、水分補給しな」
アキラ「ありがと……ぬるいね……」
光博「えっ? ……あぁ、氷入れ忘れちゃった! 悪い悪い!」
アキラ「……」
SE
N そのとき、秘密基地を守るゲートを無理やり空けようとする乱暴な音。二階にいた少年達はゲートを見下ろしました。
光博「……妹だ……」
アキラ「えっ? アカリちゃん? きたの?」
光博「今ゲートを破ろうとしている」
アキラ「じゃあ壊される前にあけようよ」
光博「開けるわけないだろ? せっかくの平穏な時間を奪われてたまるかってんだよ! 追い返してやる。 ……おーい! アカリ! 何しにきたんだ! さっさと家に帰れよ!」
アカリ「あっ! 兄ちゃん! ここ空けてよ!」
光博「あけねぇよ! さっさと帰れ!」
アカリ「いやっ! アカリもここで花火見るの!」
光博「だめだって言ってんだろ!」
アキラ「もう入れてあげれば?」
光博「あいつには資格がないからダメだ」
アキラ「何、資格って……」
光博「とにかくダメなんだ! おいっ! アカリ! いい加減にしろ! ゲートが壊れるだろ!」
アカリ「入れてくれないならコレ壊すんだから!」
光博「そんなことしたら父さんに言いつけるぞ! いいからもう帰れよ!」
SE(花火)
アカリ「いやっ! 早く入れてよ!」
SE(花火)
アキラ「まぁまぁこの暑い中そんなに熱くならずに……、ほら見てごらん、さっきから花火だってあんなに綺麗……」
SE(爆発音)
光博 アキラ アカリ 「……えっ?」
N それは空から星が落ちてきたような綺麗な光の尾を描きながら、ここからそう遠くない地面に激突したようでした。落下地点であろう場所からはもくもくと煙が立ち上っています。一番最初に頭に浮かんだ言葉は──
光博 アカリ「……隕石?」
アキラ「……さぁ……なんだろう……」
光博「……行くぞ! アキラ!」
アキラ「えっ!?」
光博「隕石ゲットすれば有名人だぜ! 早く行くぞ! アカリっ! お前ははやく家に帰れよ!」
アキラ「あっ! ちょっと光博! ……足速いなぁあいつ……。 あっアカリちゃん、危ないから家に帰ったほうがいいよ。それじゃ」
アカリ「……」
N こうして三人は墜落現場へ向かいました
暗転
光博「……ごほっ。すごい煙だなこりゃ」
アキラ「どう、なにかみえる?」
光博「うんにゃ、よくみえない」
アカリ「ごほっ! ごほっ! ……兄ちゃん!」
光博「あっ! お前帰れって言ったろ!」
アカリ「アカリも隕石ほしい!」
アキラ「ここまできたら仕方ないんじゃない? でもアカリちゃん。もしかしたら危ないかもしれないから気をつけてね」
アカリ「はーい」
光博「……とにかく煙を何とかするか……、みんな上着脱いでうちわ代わりに煙を追い払おうか、はい脱いだ脱いだ」
アカリ「あい、バサバサー」
光博「バサバサーっと」
アキラ「バサバサっと……これシャツに煙染み付いたりしないかな……大丈夫かな……?」
光博「また、そんな細かいことを……。……よし、煙も消えたな」
アキラ「えーと……あっ、あそこにクレーターがあるよ、あそこに落ちたんだ」
光博「さて……なにが出るか……」
アカリ「兄ちゃん早く!」
光博「わかってるよ! それじゃあ……せーの」
N 三人は同時にクレーターの中心を覗き込みました。そこには七色に光る、何か生き物のようなものが蠢いているようでした。しばらく見入っていると飛び上がるような声が一つ。
アカリ「……赤ちゃん!」
光博 アキラ「えっ!?」
N 少女はそう言って駆け寄り、その物体を抱き上げてしまいました。
光博「おい! お前っ! 危ないっ! だろ……、大丈夫なのか? ……そして何なんだそれは」
アキラ「どうやら大丈夫らしいね、僕らも行こう」
光博「あっ、ああ」
アカリ「赤ちゃん、可愛い」
光博「赤ちゃんって……」
アキラ「なんというか、ヒトデとか、甲羅のない亀みたい。何だろうこれ」
光博「なんかピカピカ光ってるけど……なんだこれ。……それ噛み付いたりしないのか? 大丈夫か?」
アキラ「さぁ……色もコロコロと変わるね。アカリちゃん、これなんだろう」
アカリ「……わかんない!」
アキラ「はぁ」
アカリ「なんかヤワラカイよ」
アキラ「じゃあ生き物なのかな……」
光博「……で、どうすんだよこれ」
アキラ「どうするって……どうしよう」
光博「うーん……とりあえずアカリっ、ちょっとそれよこせ」
N 少女は差し出された手を振り払い、来た道を猛然と走り出しました。
光博「おいっ!?」アキラ「ちょっと!?」
アカリ「これウチで飼うからダメっ!」
光博 アキラ「……えっ?」
光博「……ちょっとまてアカリっ! 飼うって何だよぉ!」
アキラ「あっ、ちょっと待ってよ光博! ……まったく、考え無しに走り出すのはさすが兄妹、そっくりだな……」
N
暗転
N それから数日後
SE
アキラ「今日は家にお呼ばれか……」
アカリ「いらっしゃい!」
光博「よく来た、早く入れ!」
アキラ「お邪魔しまーす。アカリちゃん、その後アレの様子はどう?」
アカリ「星!」
アキラ「星?」
光博「名前付けたんだよ、見た目が星っぽいし空から降ってきたからって」
アキラ「ああ、なるほど。それで星の様子はどうかな?」
アカリ「うーん、よくわかんない」
アキラ「特に変化無しってことかな、お父さん、お母さんにはばれてない?」
アカリ「ばれてない!」
光博「アカリがうまく隠してるよ」
アキラ「そう、それで今日はどうしたの、めずらしく家に呼んで」
光博「それはな……、どうやら俺達は狙われているみたいなんだ……」
アキラ「……えっ?」
光博「外を見てみろ」
アキラ「えーっと、道路を女の人が歩いてるけど」
光博「どれ……やっぱり」
アキラ「何、やっぱりって」
光博「あいつな、あれを拾ってきて以来家の周りをずっとうろついてるんだよ」
アカリ「セーフのチョーホーキカンだって!」
アキラ「セーフ……、ああ政府の諜報機関ってそんな馬鹿なこと──」
光博「それ以外考えられないだろ? アレを奪いにやってきたんだよ!」
アキラ「いや、でも──」
光博「そこで、今日はあいつの後をつけて敵の正体を突き止めようと思う!」
アキラ「またそんなこと──」
光博「毎度この時間くらいになると帰るんだよ奴のアジト突き止めてやる!」
アキラ「ちょっと、人の話を聞いて……」
アカリ「兄ちゃん! あいつ帰るよ!」
光博「よし! 早速尾行開始だ! いくぞ!」
アカリ「あい!」
アキラ「……はーい」
暗転
光博「ここがあの女のアジトか……」
アキラ「これアジトっていうか……ただのアパートじゃない? それも……」
アカリ「ボロボロだね!」
N それは台風がきたら飛ばされてしまいそうな木造のアパートでした
光博「見た目にだまされるな! これはカモフラージュで地下に施設があるんだよ!」
アキラ「漫画の読みすぎだよ……」
アカリ「星ちゃん散歩だよー」
光博 アキラ「ちょっとちょっと!」
光博「お前連れてきたのかよ!」
アキラ「早く隠して……!」
アカリ「何で? 星も散歩したいって」
アキラ「こんなところ誰かに見られたらまずいから! 早くしまって!」
光博「しかも敵の本拠地ど真ん中だぞ! こんなところあの女に見つかったら──」
SE(扉)
全員「えっ?」
暗転
谷川「いやー、散らかってるけど上がって上がって」
光博 アキラ アカリ 「……お邪魔しマース」
N その部屋はとても散らかっていて、床には怪しげな雑誌、机にはよくわからない器具が並んであったりと、奇妙な部屋でした
谷川「まぁ誤解が解けてよかったよ。あっ座って座って」
アキラ「はぁ、それより大丈夫ですかおなか
谷川「大丈夫大丈夫。まぁ玄関開けてイキナリおなかに頭突きされるとは思わなかったけれどね!」
光博「ほら、お前も謝れ」
アカリ「ごめんなさいー」
谷川「いいっていいって。不振な行動してた私も悪かったんだから」
光博「そうそう、そもそもなんで俺達を付けねらってたんだよ? 敵じゃないってのはさっきわかったけどさ……」
谷川「ああ、あれ? もちろん例の現場に私もいたからだよ」
アキラ「あそこにいたんですか?」
谷川「うん。私は谷川研究所の所長でね。日夜宇宙人とのコンタクトに明け暮れているんだけど、あの山は昔から不思議な話が多くてね。過去にはUFOの目撃情報もあるんだよ。それであの花火大会の晩もあそこにいた所あの騒ぎが起きたってわけ」
光博「それで現場に駆けつけたと」
谷川「何十年ぶりに血が騒いだね! 落下地点もそう遠くないし他の人が来る前に何かあったら回収してやろうと思ってたんだけど……なんと私より先客がいたんだよね」
アキラ「それが僕達ですか」
谷川「そう、なんとなく顔も出しづらくなっちゃて覗いてたら女の子が何かを持って走りだすじゃない! あわてて後をつけて家がわかったはいいものの、それからどうしようかと悩んでてね。君達の家の周りを右往左往してたんだ! ごめんね、驚かせちゃって」
アキラ「(この人もあんまり後先考えないタイプなんだな?)」
谷川「それで、その。早速だけどさわってもいいかな、その星ちゃんに」
アカリ「……だめっ!」
光博「(小声で)なんか目が怖くないか?」
アキラ「(小声で)血走ってるね」
光博「(小声で)実際、任せて大丈夫なのか? へたに触らせて爆発でもしたら嫌だぜ」
アキラ「(小声で)昔の漫画じゃあるまいし爆発はない……と思うけど。でも今の段階で一番『星』について何かわかりそうな人ではあるね。本当はもっとちゃんとした施設に任せるべきなんだろうけど、どこにあるかもわからないし、なんか今更って感じだしね」
光博「うん。しかしアカリのあの警戒ぶりは相当だなぁ。ああなったらなかなか離さないぞ、あいつ」
谷川「ちょっとだけでいいから」
アカリ「だめ!」
アキラ「(小声で)結局僕達だけではどうにもならないからなぁ。預けてみるのも手じゃない?」
光博「(小声で)まぁ、そうするか。アカリはまかせとけ。なんとかする」
暗転
光博「と、何とかアカリ監視のもと星に触れることが許されたけど……なにかわかった?」
谷川「うーん……。この子、声とか音とかは出さなかったの? 鳴き声とか」
アキラ「どう? アカリちゃん」
アカリ「出してないよ! すごく静かだからお母さんにもばれないの」
谷川「となると光かなー」
光博「なに一人で納得してるんだよ」
谷川「えっ? いやこの子どういうわけかずっと光を放ってるじゃない? それも単色じゃなくて複数の色を織り交ぜながら」
アキラ「どういうことになるんですか?」
谷川「もしかしてだけど、この子達のコミュニケーションは光なのかもしれないってこと」
アカリ「兄ちゃん、コミュニケーションってなに?」
光博「えーっと……話し合うって事」
谷川「私達は主に言葉を使って会話をするけど、この子は光を使って会話をするのかもしれないってことね。モールス信号知ってる? あれと似たようなものなのかも」
アキラ「へぇ……」
谷川「まぁなんて言ってるのかはこれから研究しないとわからないけどね、あっ、そうだ。これから毎日家に来てくれないかな? 夕方でいいから。どうせ暇でしょ?」
アキラ「暇って……」
谷川「じゃ決まりね。 アカリちゃーん? また家に来てくれるならお菓子あげるからね」
アカリ「あい」
光博「餌付けか……」
暗転
N それからさらに数日間。子供達は谷川の家に通い、研究の成果が現れるのを待ちました。そしてある日……
暗転
ミツヒロ「ついに解読だってよ」
アキラ「うん、急に呼び出しなんて相当なんだろうね」
光博「ともかく前進だな」
SE(扉)
光博 アキラ 「お邪魔しマース」
谷川「あっ、いらっしゃい。入って入って」
光博「はーい……あれ? アカリはいないの?」
谷川「アカリちゃんには別の部屋で星と遊んでるよ」
アキラ「それで、解読できたんですか? 星はなんて言ってるんです?」
谷川「うん、そのことなんだけどね。一部分だけね。 それで話す前に約束してほしいんだけど、この話はアカリちゃんに内緒にしてほしいんだ」
光博「内緒? なんで?」
谷川「うん、最初から話そう。まず星は非常に頭がいいらしくどんどん地球のことを覚えて言ったよ。言葉や、習慣。本も読めるみたいだった。ただ音に対してはすごくに鈍感で言葉はよくわからないみたい」
光博「ふうん?」
谷川「宇宙じゃ空気なんてないところがほとんどだからね。音が伝わらないってことを考えると当然かも。その代わり目がすごい発達したのかもしれない」
アキラ「でも星って目あるんですか? ヒトデみたいで目らしきものなんてなかったと思いますけど」
谷川「うん。それは星の体全体が目の役割を果たしてるかもしれないね。そこらへんはよくわからないけどとにかく星は頭がよくってどんどん地球のことを覚えて言ったって事。それでね、特に反応を示したのがカレンダーと地図。一定の光を発信してきたわ。後は光のパターンを言葉や数字を見せたときの反応と照らし合わせると、ある日付のことを言っていることが分かったわ、それがここよ!」
光博「ちょうど──今日!?」
谷川「そう、そして夜中9時よ」
アキラ「今日、何があるんですか?」
谷川「それはもう一つの地図が関係しているわ。最初は地名かと思ったんだけどこちらも数字だったの。緯度と経度。インターネットで調べてみると……」
光博「……落下現場か」
アキラ「つまり今日9時に、ここにつれていけってことですか?」
谷川「多分ね」
光博「でも、そこでなにがあるってんだよ」
谷川「一番考えられることは、やっぱりUFOがきて連れて帰るんじゃないのかしら」
アキラ「UFO、かどうかはまぁ、おいといて。そう、ですよね」
光博「それにしてもアカリがなんていうか。ずっと星とくっついてるぜ?」
谷川「そこが問題なのよね。もし返せなかった場合どうなると思う」
アキラ「どうって、どうなるんですか」
谷川「最悪、怒った宇宙人が攻撃してくるかも」
光博「はぁ!? 攻撃って!」
谷川「とにかく、あの星はもともと地球に来る予定じゃなかったんだと思うわ。だから元ある場所へ返さないとどうなるかわからないってこと。交流目的というならいざしらず、相手がわからない以上、星は返したほうがいいと思うの。残念ながらね」
アキラ「なるほど、それでアカリちゃんがいないんですね」
谷川「そう、この話聞いたらアカリちゃん黙ってないでしょ? そうなる前にあの子から星を離さないといけないのよ」
光博「……これは面倒なことになったなぁ」
アキラ「でも仕方ないよ。元々地球の生き物じゃないんだから。谷川さんが言ったようにもとあった場所に戻さないと」
光博「うーん……なんかもったいないような気がするけど……そうだな……仕方ないな」
谷川「それにね、一言だけど言葉を発してるみたいなのよ。それが──」
SE(扉)
光博「!?」
アキラ「もしかして」
谷川「……一番聞かれたくない話を聞かれていたみたいね……」
暗転
アキラ「光博、そっちはどう?」
光博「あいつが行きそうな場所は大体回ったけど見つからないな。そっちは?」
アキラ「こっちもみつからないよ」
光博「9時まで時間があんまり無いな……」
谷川「まだ見つからないみたいだね」
アキラ「あ、谷川さん」
光博「もう探せるところは全部探したよ!」
谷川「うーんまずいな、地球が滅亡しちゃうかもしれないのに……。本当に他に思いつかないの? 人が来ない、そんな最高の環境」
光博「……あっ」
アキラ「そうか、あったね隠れられる場所が……」
光博「はやく行こうぜ! 時間がない!」
谷川「えっ? あっ、ちょっと待ってよ!」
暗転
光博「やっぱりここにいたか……。おい、アカリ! ここ開けろ!」
アカリ「あっ! 兄ちゃん!」
谷川「はぁ……はぁ……。何年ぶりに走ったわ……。何? ここは……?」
アキラ「秘密基地です。僕達の」
谷川「はぁ……なかなか立派ね……」
光博「いいかげんにしろ! 降りて来い!」
アカリ「いやっ! 星はわたさないから!」
アキラ「アカリちゃん! その星はもとあった場所に返さないといけないんだ! 谷川さんは星を帰さないせいで地球が襲われるかもしれないって!」
アカリ「いやなの!」
光博「……聞く耳持たずだな」
アキラ「なんとかならないの?」
光博「難しいだろうな。のまず食わずで2日くらい部屋に立てこもった事もあるからな」
アキラ「ああ……どうしよう」
アカリ「はやく帰ってよ!」
光博「うわ! 水かけてきやがった!」
アキラ「どうしよう?」
光博「もうこうなったら強行突破するしか──」
谷川「ちょっとまって」
アキラ「谷川さん?」
谷川「ちょっと話をさせてもらえる? アカリちゃん!? 聞こえる?」
アカリ「なにも聞かないよ!」
谷川「……まぁそのままでいいから聞いて! その星はね! ある言葉を繰り返し伝えようとしてたの!」
光博「言葉?」
谷川「ええ、星は光で言葉や数字を表すといったじゃない。日付と、地図の緯度経度。それとあとひとつ。数字でない言葉の意味をもった光を放っていたのよ。おそらくあなた達に保護されてからずっとね」
アカリ「……なんていってたの?」
谷川「アルファベットでねM・O・T・谷川・E・R。マザーだって。お母さんって意味よ」
アカリ「お母さん?」
谷川「そう、星はずっとお母さんに会いたがってたのよ」
アカリ「……」
光博「なあアカリ。もしお前が母さんと離れ離れになったら嫌だろ?」
アキラ「星もおんなじこと考えてるかもしれないんだ」
アカリ「……そうなの」
N 少女の手の中で星はさびしげに光りました。
光博「……出てこないな」
アキラ「もう本当に時間ないよ! もう門壊すしか──」
SE(扉)
光博「アカリ……」
アカリ「はやく行こ! 時間足りないよ!」
アキラ「……そうだね、走ろう!」
光博「おう!」
谷川「……また走るの……?」
暗転
光博「はぁ……はぁ……ついた……時間は!?」
アキラ「もう9時になるよ!」
光博「このあとどうするんだ!?」
N そのとき空から強烈なひかりが放たれ、4人を光の中に包み込みました。
アカリ「兄ちゃん! まぶしい!」
谷川「アカリちゃん! 光の中に星を置いて私達は出ましょう!」
アカリ「わかったぁ!」
N 上空を見るとくるくる回るお皿のようなものが浮かんでいました。星はそのままゆっくりと地面を離れ、光のエレベーターを昇るようにゆっくりと吸い込まれていきました。
アカリ「……さようなら!」
N 声にこたえるように七色に光る星。空に浮かんだお皿は星を吸い込み、そのままどこかへ消えていきました。
光博「あの星、最後になんか言ってたのかな?」
アキラ「多分ね。アカリちゃんの声に答えたんだと思うよ」
谷川「地球に来て進化したのかしらね……」
光博「ともかくアカリ! よくやったな。見直したぜ」
アカリ「私も……」
アキラ「アカリちゃん?」
アカリ「大きくなったら宇宙に行って星と会ってくる!」
光博 アキラ 谷川「えっ?」
暗転
N&アカリ それから十年
N お兄ちゃんとアキラさんは大学へ行き天文学の勉強をしている。谷川さんは所長の地位を私に譲り日本を出て海外でUFOを追いかけている日々らしい。そして私は高校生となり宇宙飛行士になるべく勉強をしつつ谷川研究所を引き継ぎ日々研究にいそしんでいる。無数にある星のどれかひとつが、あの七色の光を発しているかもしれない。そんな思いを抱きつつ私は今日も、空を眺めている。
了