手紙
「ったくよぉ、この歳で罰則が掃除とかありえねぇよなぁ.......ブツブツ」
帰った俺たちはみっちり怒られた。その上ばつ掃除までさせられている。
まぁ、回収するはずの魂を回収できなかった上に悪魔に横取りされたのだ。それは罰則を受けて当然だ、むしろ掃除だけなど軽いと思う。
今まで見てきた罰則は一番ひどいもので1ヶ月死なないように魔法をかけられたうえでの断食、20時間労働だった。そいつは一度とらえた魂を逃がし、悪夢の手に渡ってしまったことで罰則を受けていた。俺よりずっと先輩だがな。
隣でブツブツと小さく悪態をつくカルーアを無視して淡々と壁を掃除する。先程の悪魔のことを考えながら。カルーアは悪態を付きながらも周囲の人に声をかけられたら「はい?こんなことどってことないですよ^^僕が悪いんですし.....応援ありがとうございます^^」とサービスを怠らない。こいつの猫被りは筋金入りだ。
最後の壁を吹き終わったとき、一息ついた。
「あーもう痛い~~僕の腕が太くなったらどうするんだよ~」
「うるさいぞ。」
「痛くないわけ?」
「.......別に。俺に痛覚はない。」
いぃなぁとカルーアが羨ましそうに言う。
全死神の中には10人にも満たないLLというランクの人達がいる。
L(Lost)L(Level)。そのあとには1~5までの忘却度を表す数字が入り、その後ろにランクが入る。
俺はLL5S(Lost Level 5 rank S)。レベルは最高値の5。
俺が失ったのは痛覚、喜、哀、あと....なんだったか。
不便はしていないし、そのような形のないもの、特に思い出したいとも思ったことはない。ただ、医者からすると痛覚がないのは危険らしい。人は痛みから危険信号を読み取る。戦いの中では尚更だ。当然、痛みを感じないのなら、危険という意識がなくなり、無意識のうちに無理をし、手遅れとなる、と言っていた。
手遅れと言ってももう死んでいるんだがな。
休んでいると遠くからパタパタと軽い足音が聞こえる。
あれは......情報班のメルシアだ。手に何か白いものを持っている。
「蓮さーーーーーーん!!!!お手紙ですっ!!」
「............俺?」
メルシアは目の前で急ブレーキをかけ、手紙を渡してくる。
手紙をもらう宛もなければ送る宛もない。
いったい誰から何の用で....という意味を込めてメルシアに目配せするも、彼女は首を横に振った。
「個人宛の情報は許可を得てからでないと見れませんので!それでは!」
パタパタと今来た道を帰っていく。
そっと手紙を開けてみた。
「..................」
「なぁなぁなんて書いてあったんだ?誰からだ?女か?お前に限ってそれはn」
「だまれシメるぞ。」
「ごめんて。で?中身は?」
光が見たい あなたの知る人より
そう書いてあった。
見た感じ女の子らしい字で、多少字が乱れていることから緊迫した雰囲気を感じた。
あなたの知る人。俺の知る人。生前か?それとも今か?視界がぐらりと歪みそのまま倒れこむ。
「おぃ!大丈夫か?」
カルーアが支えたためなんとか立てるが、思い出そうとすると脳みそを直接揺らされているような感じがする。視界が左右に揺れる。気持ちが悪い。
「...........部屋に戻る。」
「あ、おぅ....」
歩いて近くのエレベーターに乗り込む。
今日はもう寝よう。
きっと疲れているのだろう。早く寝て、明日またゆっくり考えよう。
53階です。
無機質な音と共に扉が開く。
そのまま部屋へと直行し、ベッドへと倒れこんだ。
黒兎ですこんにちは。笑
まずは、読んでいただきありがとうございます!
えー、ランクについて少しわかりづらいと思うので、簡単に説明します。
まず、死神には、普通の死神と一部が欠落した死神がいます。
死神にはそれぞれランクがあり、後者にはランクにLLというものがつきます。
【普通の死神】
R(G~S)とランクがついています。
→低R RG、RF、RE、RD、RC、RB、RA、RS 高R
ランクが高くなればなるほど人数は少ないです。強くてもRAまでが多いです。
【欠落した死神】
こちらには上記のランクに加え、LLというものがつきます。
LLはLost Levelの略称で、度合いによって1~5までに分けられます。
基準としては、
LL1→ふとしたきっかけで思い出せる。
失ったものが少ない
LL2→思い出そうと必死になれば思い出せる
ここまでは思考にモヤがかかった感じ
LL3→大きなものを1つ~3つ失っている。
思い出せる可能性は低い。
感覚は人様々。
LL4→大きなものを4つ以上失っている。
感覚的には思い出す対象が遠くにある感じ
LL5→損傷が激しく、失ったものが多い。
大半が思い出せず、なにかきっかけがあっても気づけない。
それに関連することがすっぽり抜け落ちてしまっている。
こんな感じです。参考程度にしてくださればと思います。
それではまた。