遭遇
「うっわくっっっっさ。なにここ。」
カルーラが思わず呟く。扉を開けると自分達を包み込む生暖かい空気。長い間誰も立ち入らなかったのか、部屋は掃除されておらず、至るところに蜘蛛の巣がはっていた。
「本当にこんなとこにいるのかねぇ今回のターゲット。」
「.........知らん。行くぞ。」
辺りに気を張りながら前へと進んでいく。カルーラもまた、面白いことが起こるのではないかと期待を胸に歩を進める。
その小屋は2階建てで1階はロビーのような場所に扉が5~6こついており、それぞれの小部屋へと繋がっていた。
1階の探索を終え、まだ見つからないのかと溜め息をつきながらロビーの端にある階段を上り2階へと上がる。
そのときだった。
「.........は.....だけ...........のですか?」
誰かの話し声が2階中央の部屋から聞こえた。
「なぁ、誰かいるっぽくね?」
カルーラが小声で問う。人間に俺たちの姿は見えないから小声の必要はないんだが。確かに俺たちの声ではない。それに聞き間違いでなければ、言葉は疑問形、つまり話し相手がいるということになる。
「......入るぞ。」
「まじか。」
蓮はそっと扉に近づき、ゆっくりと扉を開けた。
「............誰。あんたたち。」
部屋にいたのは高校生位の小柄でショートカットな女性と20代後半位の華奢な男性だった。
どちらもスーツを身に付けている。
「あ、どぉもぉ。おじゃましてますぅ。私は神流ですぅ。それで、こっちが.....」
「余計なことはしゃべらないでください。」
どうやら小柄な女性は神流というようだ。男性はこちらを怪しんで鋭い目で見据える。
隣ではカルーラが唖然とした顔で相手を見ている。そして口を開く。
「あれ、俺らのこと見えんの?ま、まさか、あんたら、悪魔?」
「........ご名答。私達は悪魔。貴殿方の獲物はこれだったでしょうが、一足遅かったようで。魂はいただきましたよ。それでは。」
男は神流を連れてその場から文字通り、消えた。狙いの魂を持って。部屋のベッドには若い女の子が白い顔をして横たわっていた。そこからは生気が感じられない。
「........悪魔。」
俺たち死神と同じ魔界に住むもの達で生者の魂を喰って生きている。
死神は死期が来た人間の魂を肉体から切り離し冥界の王ハーデスへと送り届けるのが仕事だ。
だが、ここ最近、悪魔の活動が活発になった。今まで手を出さなかった"人間"にまで危害を及ぼすようになったことにより、特に問題もなかった悪魔と死神の関係が一気に悪化した。
「..........一回帰るぞ。マスターに報告だ。」
以前にもまして悪魔が活発だ。
銃を懐にしまい、踵を返す。
「魂逃がしたから絶対罰則あるって....。最っ悪。ちょー怖いんですけど。」
カルーラは嫌そうな顔をしながら文句を垂れている。
「(.........罰則...。)」
二人は罰則のことを考えながら足早に小屋を後にした。