社会人1年生編〔地元編〕
受け入れる高校が全く無い。
それはさすがに俺もショックを受ける事態だった。
こうして俺達は、中卒で社会に出たのだが最初は何てことは無いと高を括っていた。
俺が就いた仕事は『法面保護工』とい仕事で、がけ崩れが発生した部分なんかを金網で保護したりする仕事だった。
これがタバコと酒で弛んだ体にはきつかった・・・。
仕事に使う部材が20Kgとか平気であったりするのだ。
キツイに決まっている。
俺以外のメンツは、実家の家業を継いだり大工の弟子入りをしたりと、まぁ有りがちな展開を見せていたのだが、一人だけ凄いのが居た。
そいつは口の巧いお調子者なのだが、どうやったのか営業職に就いていた。
久しぶりに全員が集まって呑んでいた時に、初任給を暴露しあっていて皆が驚いていた。
俺で、25万位だったのがそいつは50万を超えていたのだ。
16の小僧が50万・・・今考えればあからさまにブラックな会社だったのは間違いが無い。
職種は床下リフォームの営業。
オチはもう分かったかと思うが、そいつは2年位で逮捕された。
詐欺会社に入ってしまっていたのである。
そいつのことはこれくらいにして、俺の話だ。
俺は、職種としては土木作業員ということになっていたのだが、如何せん個人事業主の所で働いていたので事務整理や折衝なんかもやらされた。
折衝といってもごく簡単な打ち合わせみたいなものだったが、中学出たての子供が相手では先方もらくだったであろう。
色々と失敗したり、事もあろうに取引先からフォローをしてもらったなんて経験までしてしまった。
それでも努力の甲斐あってか、給与はどんどん上がっていき最終的には3年経った頃には、日当1万3千円をマークした。
月に32万5千円・・・夢のような金額である。
最も、上がるのも早ければ落ちるのも早かった。
バイトで来ていたおっさんが仕事中に事故を起こしたのだ。
地上10Mからの法面滑落事故である。
何でもロープの太さに対応していないローリップ(滑り止めの付いた安全装置)を使って仕事をしていたようで、明確な規則違反。
入場教育もしてあったのに何故かそんな馬鹿な事をしてくれたのだが、これは会社の責任になってしまう。
このお陰で殆どの現場から締め出されてしまったのを切っ掛けにして、他の作業員が現場で乱闘騒ぎを起こしたり、ウチの会社が管理する資材が盗まれたりと・・・。
これが重なって、仕事が完全にゼロになってしまった。
当然ながら会社は倒産してしまい、俺は社会に出てわずか4年で無職になってしまったのだった。