幼少期〔小学校卒業まで〕1
俺は懲役刑を受けた経験がある。
罪名は窃盗だ。
人生で初めて盗んだ物は駄菓子であった。
当日の俺は貧しい一家に養われる身分であり、小遣いなんて求める事がまず間違いだったのである。
駄菓子を盗んだ俺は愚かにもこう思った、思ってしまった。
『なんだ。苦労して金を稼がなくとも盗めば簡単に手に入るじゃないか』
思い返すだに愚かとしか言い様がない。
そんな事が通じるならば誰一人汗水流して働きはしないと考えもしなかった。
それからも俺は盗みを働いた。
簡単に欲しい物が手に入った。
お菓子、玩具とエスカレートしていき、罪が露見しなかった俺はこう考えた。
『お菓子や玩具は手に入るけど、やっぱりお金が無いと不便だなぁ…タバコも必要だしお金を盗もう』
初めて親の財布に手をつけた。
当然の様に罪悪感も感じないで喜々として買い物に向かう俺
だが、悪が栄える事は有り得ず、悪銭も身に付かない。
親にバレたのだ。
当たり前である。自分の財布の中身を全く把握していない奴はそう居ないのだ。
親父は俺を泣きながら半殺しにした。
余りの苦痛に泣き叫びながらのたうち回る俺だったが、最後まで詫びた記憶がない。
多分だが、その場を凌げばなんとかなると思って居たのでは無かっただろうか?
そんな体罰を受けたにも係わらずに俺は再び盗みに走っていく事になる。
それが更なる深みに嵌る事とは露とも知らずに。