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Si je tombe dans l'amour avec vous  作者: 篠宮 梢
第六幕:決別する過去と、これからの未来
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♪、75 退院の決めて

 七海の機転のお陰で、久しぶりに大声を出せた日から3日。

 私は氷川先生が紹介する精神科に通院する事を条件に、退院が許可された。と言うのも、私に正常に月のモノが来たからだった。


 その日は夜明け前から下腹がしくしくと痛み、起きた時は酷い寝汗をかいていた。


「大丈夫か?酷い汗だぞ?」


「ん・・・、トイレ行ってくる・・・。」


 汗でペッたりと張り付いたワンピースタイプのパジャマのまま(パジャマは七海の差し入れ)、個室付きのトイレにふらふらと入り、いつもの様に用を足し、そこでハッと一気に目が覚め、安堵感からトイレで思いっきり泣いてしまった。


 当然いきなり泣き出した私に驚いた智は、洗面用に作っていたぬるま湯をそのままに、トイレに飛び込んできて、私の肩を掴んで顔を覗き込んできた。


「どうした、吉乃。どこか痛むのか?」


 違う。

 そうじゃない。そうじゃないの。


 もしかして、もしそうだったらと、心の奥底で不安に思っていた事が解消された瞬間だったから。


「ちがう・・・、ちがうの。せいり、生理が来たの。」


 真っ赤に染まってしまった下着だけれど、もしかしたらシーツさえ汚してしまったかもしれないけど、今はその紅い血が何よりもうれしかった。


 よくテレビドラマでは、犯された上に妊娠したと言うストーリーがあった。私もそうなるのではないかと不安に思っていただけに、嬉しくて嬉しくて、安心して、涙が出てきたのだ。


 私が嗚咽交じりにその事を告げると、智は未だ流してないモノを見て、汚れてしまった床を見て、大きく溜息を吐き、そこで漸く仄かな微笑みを浮かべてくれた。


「良かった・・・。良かったな、吉乃。」


「なんで、なんで智が泣くのよ・・・。」


 私以上にボロボロと涙を流す智に、私は流れていた涙がやみ、智がしてくれたように、少し背伸びをして涙を拭いてやった。それでも次から次へと智の瞳から溢れてくる熱い涙。


「変ね・・・、私が智を慰めてるなんて・・・。もう泣かないで、智。まだ怖いけど、私、智の事は愛してるし、ずっと好きだから。だから、泣かないで?」


 布越しでなければ、触れるのも、触れられるのも怖いけど、いつかは、きっといつかは。そう智を促し、私はトイレの水を流し、智とトイレを出て、ナースコールを鳴らし、先生を呼び、月経が来た事を告げた。



 こうして私の退院は決まったのだった。


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