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Si je tombe dans l'amour avec vous  作者: 篠宮 梢
第六幕:決別する過去と、これからの未来
73/97

♪、72 交換条件と堕ちる時

さっさかと終わらせようと思います

「ふっ、まだ、そんな目が出来るか。」


 息も絶え絶えに目の前の男を睨む。


 監獄の様なこの家に連れ戻され、一体どのくらいの時間が経っただろうか。

 実際はそんなに時間が経ってないのかもしれない。でも、私は何度か失神させられは目覚めている。今は丁度目覚めた所だった。


 私に出来る事はこの男に身体はともかく、心までは犯されない事。


 身体がどんなに快感を求めようが、どんなに絶頂を望もうが、決して自分からは求めたりなんかしない。それしか今の私には出来ない。


「まぁ良いが、それも何時まで続くか見ものだな。」


「・・・ッの、この、けだもの!!」


 手足を鉄の鎖で繋がれ、自由に動く事も這う事も出来ない、まるで中世の性奴隷のような扱いをされている今、私に残された武器ともなりえるものは、言葉を発せる声と表情しか残されていなかったが、その声も、無理やり何度も喘がされた結果、喉が痛み、もうあまり出ない。

 

 それでも歯向かわなければ、この目の前の醜い男に好きにされる。それでなくとも既に好き勝手されているのだから、これでもまだ足りない方だ。


「どうやら薬が足りなかったようだな・・・。」


 私の言葉と態度が気に食わなかったのか、外では善良面を被っている男の眼が、鋭く眇められ、おそらく隠し持っていたのであろうそれを、私の腕に注入した。


 それはネット環境さえ整っていれば、どこでもいつでも手に入れる事の出来る薬。しかも今回は即効性のタイプだったらしく、意思とは無関係に身体が火照ってくる。その火照りから来る疼きを何とか唇を噛むことで耐え、憎く、おぞましい敵を睨み続ける。


「お前がここに戻ってきて三日。」


 男は何を思ったのか、唐突に喋り出した。


「今の綾橋は倒産寸前だ。嘘だと思うのなら自分の目と耳で確かめてみろ。」


 テレビをつけ、一つの番組を私に見せる。

 すると、そこには、綾橋のお義父様と、副社長のやつれた、どうしようも出来ない姿が映し出されていた。


(うそ・・・、うそ・・・。)


 テレビのアナウンサー達は、私の思いとは裏腹に、綾橋の黒い噂を全国にバラまいていた。しかもその黒い噂は、おそらくはこの菜々宮が仕組んだ事なのに、黒い噂を告発した人を英雄視している。


「あっけないものだな。世間はすぐに騙される。真実など、勝者が作り上げる。」


「どうして・・・、どうしてそこまでっ・・・。」


「どうして?そんな事も忘れたのか?私の人形は」


 みしり、と、ベッドのスプリングが軋んだ音を立てる。それと同時に、私の身体がピクリと僅かに反応し、動く。


 気が付けば、私はまた組み敷かれていた。

 ガサついた手は胸と脚をまさぐり、ヌルついたものは首筋を這う。

 そして。


「・・・・っ」


 最も守るべき部分に触れられた瞬間、頭が真っ白になった。


 そのことでショックのあまり、涙があふれてくる。


 死んでしまいたい、申し訳ない、この身体が忌々しい。

 私が愛しているのは智だけなのに、愛してほしいのは智だけなのに。

 なのに、なのに、どうして。


 私のこの涙を見て満足したのか、男は私のそこから手をどかし、目の前で広げた。


「智とかいったか。アレは今頃仕事中か。強盗にでも襲われればどうなるだろうな・・・?」

 

 ――智。


 私はその単語にいとも容易く平常心を失い、厭らしく光る糸も気にせず、叫んでいた。


「やめてっ、お願い。何でもするから、何でもするから、言う事聞くから、お義父様の会社も、智の事ももう・・・」



 智が死んでしまったら、私は生きていけない。

 智さえ生きていてくれるのなら、私はどうなっても構わない。


 どうして智を許せるの、と、前に聞かれた事がある。


 その時は答えをはぐらかしたけど。今なら言える。


 智は私が持ってない物を持っていた。

 それは目に見えるものではないけれど、確かに智は持っていた。

 私はそれに強く憧れ、依存すらしている。


 きっと、それは私にしか分からない。 

 醜い私だからこそ気付けたそれ。

 

 例え、それを智に言ったとしても、智本人すら判らないだろう。

 その智とその家を守る為ならば。


「お願いだから、あの家にはもう手を出さないで・・・ッ」


 何でもするから、と再びその言の葉を私が紡いだ時、私に覆い被さっていた男が、にやりと、厭らしく笑い、一気に私を貫いた。


 それからはそれが何度か続き、いよいよか、と、悔し涙を流し、せめて声だけでも漏らすまいと、唇を思いっきり噛みみしめた時、その救いの手は私にのばされた。


 あと一歩でも遅ければ、私は完全に堕ちていたのかもしれない・・・。



   

ギリ、R―15ですよね?

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