♪、67 二人だけの誓い
更新・・・。
嵐が去ったあとは、何かと大変で。
「・・・、とりあえず、何か食べるか。」
「そう・・・、ね。流石にお腹すいたし。そう言えば、さっきは何作ってたの?」
短時間に色々とあり、鍋が火にかかっていた事も、今まで失念していた。
普通なら焦げるなり火事になるなりで、途中で気付くのだろが、運良く何事もなかった。
ペタペタと裸足でキッチンの方へと歩いて行き、鍋の蓋を開ければ、黄金色の液体が美味しそうに輝いていた。
「おいしそう・・・。」
「お湯にコンソメ入れただけだ。これから野菜とベーコンを入れて、ショートパスタを入れる。」
複雑そうな顔で、まだ何もしていないと言われ、私は恥ずかしく思い、それを隠す為に、あるお願いを智にした。
「ねぇ、?」
「なんだ」
「セロリだけは、絶対に入れないでね?」
言葉にしただけで、あの独特の青臭さが蘇る。
昔からあれだけは食べられなかったのだ。
幾ら生で食べられるからとて、あれだけはひもじくても食べなかった。
アレを食べるくらいなら、青汁を飲む方が幾分かましだと思っていた。
「そうか、セロリ嫌いなのか、吉乃は。なら、今日からは好きになって貰おう。」
ニタリ、と、私の願いを、非常に意地悪気な笑みで却下し、智は冷蔵庫からあの野菜を取り出した。
(智って、こんなに意地悪だったの?)
私が食べられないって言ってるのに、と、涙目で訴えれば、智はおかしそうに笑っていた。
しかも失礼な事に、泣き笑いである。
「そんな顔するな。」
「だって、」
「俺も最初はセロリは嫌いだったんだよ。でも、今は食える」
智はそうでも、私は違うかもしれないではないか。
まったく何を言っているんだか。
「これからはこうしてお互いを知り合って行けばいい。俺達はこれからなんだから。」
智の言葉に拗ねていた私は、静に耳元に囁かれた智の言葉に、智が私に本当は何を言いたいのかを悟った。
まったく、これだから智には叶わない。
コンロの火をカチリと止め、私は智の首に腕を回し、精一杯背伸びし、智の耳元で囁いた。
そして、私のその囁きに、智は驚きに目を見開いたけれど、それでも嬉しそうに私を抱きしめ、寝室へと連れて行ってくれた。
お腹は空いてはいるけれど、でも今は・・・。
その日、私と智は、一日中布団の中にいた。
身体を重ねる事だけが愛しあう方法ではない。
ただ触れあい、手を握り合うだけでも、心は満たされる。
そうして私達は誓いあった。
これからは、二人でお互いに支え合い、信じあい、愛しあい、助け合おうと。
短いですけど・・・。