♪、61 乱入者①
文章が下手でスミマセン。
(さむい・・・。)
朝に近付けば近付くほど、夜と同じくらいには部屋の気温は下がる。
それを本能で知っているが故に、人は自然と暖を求める訳で・・・。
「・・・い、おい、吉乃。」
「あと五分だけ、五分だけ寝かせてぇ~、尚ぁ。」
耳を塞ぎ、布団を引っ張れば、上からは特大の溜息が落ちてくる。
その落ちてきた溜息に、今日はいつにも増して尚の機嫌が悪いなと、仕方なく両手を布団につけば、何やら布団がいつもと違い、何やら弾力があるような気がした。
「あれ・・・?尚、なんか智に似てるねぇ~?ひょっとして、私まだ寝てる?」
「・・・、寝ては無いが、寝惚けてはいるな。」
「ん・・・?」
遠慮がちにうつ伏せの状態から、仰向けにの状態にさせられたかと思いきや、額にちゅっと、誰かの唇が軽く触れ、離れた。序にと言わんばかりに、髪を優しく撫でられ、指で髪を梳かれた所で、漸く私の意識は完璧に覚醒した。
布団だと思っていたモノは智の胸で、尚だと思い、抱きついていたのは尚ではなく智本人だった。
赤っ恥、とは、もしかしてこういう時に使うのだろうか。
(うぅ・・・、顔が上げられない・・・。)
羞恥に悶え、再び布団の中にガサゴソとこたつの中に潜り込む猫の様に逃げ込めば、その上から、トン、トン、と、優しく宥められた。
「まだ寝てても良いぞ。・・・、朝食は食べられるか?」
「朝食・・・?」
「食べられるんだったら、少しでも食べておいた方が身体にも良い。待ってろ。今作ってやるから」
頭を布団から少し出し、智をチラリと盗み見れば、髪を右手で掻き上げ、近くにおいてあったタオルで器用にそのまま頭に巻きつけ、腕まくりをしていた。
そのあまりの気の入れように、まさかね、と思ってしまう。
「食べ物、冷蔵庫にあるの?」
なければ作れないだろう。
と言うか、ここに住み始めたと言うか、足を踏み入れたのは、そもそも智も私も、昨日が初めての筈。
電化製品や家具などは備え付きと言うマンションは、結構ざらにあるとしても、流石に食材や食器の類は・・・。
「ここは俺が高校まで住んでた部屋でな。食器はその時のモノを使えばいいし、冷蔵庫やテレビは一昨日買い換えた。食材もその時に軽く買ってある。」
(な、なんて手際の良い人なの・・・。)
私の打ちひしがれた態度に智は軽くはははと、声を立て笑い、寝室から出て行った。
記憶が正しければ、智はあんなに軽く、しかも声を上げて笑う人ではなかった。
何があったんだろう。
何が彼をあんな風に変えたんだろう。
なんであんな風に笑えるんだろう。
「私も笑えるようになるかな・・・。」
影もない、あんな風に、晴れ渡った夏空のような澄んだ笑顔で。
笑えるようになりたい。
心の底から幸せだと、幸せで堪らないと言う気持ちで。
そう思い、布団から這い出し、部屋の片隅に置いてあった鞄の中から、母子手帳を取り出し、それを開こうとした時、その人物は突如としてこの家に押し入ってきた。
乱入者一人目、登場。