♪、29 目覚めと行動①
更新。
ぽかりと開かれた視界。
その開かれた視界に映ったのは、私が少し前まで毎日いた部屋の景色。
でも、全く同じと言う訳でもなかった。
窓は開けられない様に鉄格子が嵌められてあり、私の手には逃げられないようになのか、銀の鎖が着いた手錠がつけられていて、窓には、何故かあるはずのものがなかった。
(なるほどね・・・)
カーテンがないのも、窓に鉄格子が嵌め込まれていて、手首に手錠が嵌められているのも、全ては自殺を防止する為なのだろう。
それから推測出来うるのは、私が遂に智から見放され、厄介者として精神科病棟に放り込まれたという事。
でも、私は何故か絶望は感じていなかった。
むしろ、私が感じたのは、大きな安堵感と、自由と言う名の解放感の、狂喜にも似た感情。
これで悩む事、戦う事から逃れられる。
顔色を窺い、他人に気を遣い、苦手な人付き合いや、料理もしなくても良い。
(良かったのよ、これで良かったのよ・・・。)
独りに戻っただけで、長すぎる夢から醒めただけ。
だから、今私の頬に伝わっているのは、悲しい涙なんかじゃない。
拘束されていなかった、震えている左手を天井に翳し、シーツの上にパタリと落す。
時計もテレビも、何もない、世間から完全に隔離された空間。
(一人、本当に一人なのね・・・。)
そう改め思い、感じた時、私の中に生れたのは。
寂しい、寒い、怖い、という思いと。
――逢いたい
と言う、強い感情だった。
ならば、と、私はそれに突き動かされるかのように、今まで悩み、先送りにしていた事を実行すべく、ナースコールを押した。
短いですけど、更新しました