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Si je tombe dans l'amour avec vous  作者: 篠宮 梢
第三幕:吹き荒れる嵐、覗いた闇
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♪、23 襲来②

遅れてすみません。

 無知と無自覚は同罪だと言っていたのは、誰だっただろうか。



 滑らかで、透明感のある頬を愛らしく赤く染め、もじもじしながら私を見つめる後輩と、そんな後輩を、困惑した面持ちで見つめ返す私を、なんと言っていいか判らないと苦笑し、嘆息する同僚や上司達。


 私は更に、その雰囲気に一人でイライラした。


(一体、何なのよ。私が何かしたっていうの?)


 ただでさえ仕事に復帰したてで、その上、輪を掛けたように忙しい時だというのに、無駄な時間は取られたくなかった。


 そんな私の機嫌を読み取ったかのように、その基となった後輩が口を開いた。


「社長が先輩にベタ惚れなのも、七海、今なら、すっごく頷けますぅ~vv」


 七海ぃ~、偶然観ちゃったんですよォー。センパイ、昨日社長室で社長とスッゴいキスしてましたよね~?あれって、あのアトだったんですか?先輩の服、乱れてたしぃ~。


 その口をすぐに覆ってやりたかった。


 でも、その悪気なくきゃぴきゃぴはしゃいでいる彼女を、私が止めようとしたのなら、それはそうですと、自ら肯定するような事だから出来ない。


 事実、私は昨日の昼休み、智に社長室に呼ばれ、一応勤務中だというのに、決して口に出して話せない行為を断り、拒みきれずに流されてしまった記憶はある。


(死んだってそれは認められないわ!!第一、恥ずかしいじゃない!!)


 それに、社長である智と私は結婚している事実を隠している。

 なのに、どうして・・・。


「せんぱーい、社長さんはどんな風なんですかぁ~?参考に七海にだけ教えて下さ~い。」


「千代田さん!!」


 「仕事に戻りなさい!!」と、続くはずだった私の言葉尻を、彼女はさっと遮り、にこぉーっ、と微笑んで、爆弾を放り投げてきた。


「あ~、センパイ、もしかして照れてるんですかぁ~?赤くなっちゃって、可愛いですぅ~」


(くっ、なんなの!?なに言っても無駄じゃない。論破されちゃうわ。)


 彼女には、口で勝てない。


 私はその時既に、無意識に彼女に白旗を掲げていたのかもしれない。だから口がつい滑ってしまったに違いない。


「きっと社長さんなら、三回は平気でやっちゃいそうですよねぇ~。」


(三回?)


「三回で済めば良い方よ・・・。」


 そう。三回で終わればね・・・?


 と、つい小さな声で零してしまった本音。

 

 その本音は、本当に、小さくて小さくて、皆に聞こえるはず様な声量ではなかった。なのに、そんな私の声を、その場にいた人達は聞き耳を立てていて、結果、暫く部署内は会話に花が咲いた。


 その会話の内容は、勿論、カップルや夫婦間の夜の事情やら、出会いなど多岐に渡る。

 もはや、暴露大会に近いかもしれない。


 出会いはいつ、何処でだとか、週に何回会ってるか、だの。


 きっと、少し前の私だったのなら、そんな日常生活の、しかもそんな濃い恋愛トークには参加しなかっただろう。


 だから、なおさら盛り上がったのかもしれない。

 彼らにも、悪意はない。


「そう言えば社長と言えば、ついさっき、結構な(化粧の濃い)美女と腕を組んで歩いてたぜ?(嫌々に見えたけど)」


「俺はキスしてるところを見た。(その後、直ぐに忌々しそうに拭ってたけどな。)」


「あっ、俺は子供といる所を見た!!(複雑そうな顔で)」


 彼らは顔を見合わせ、コレって浮気になるのかな?と、ちょっと騒ぎ、私の様子を窺ってきた。

 私はそんな彼らに、内心とは程遠い笑みを浮かべて見せた。


 腹は立たないのかと問われれば、それはすぐに『ノー』と言える。


 けど。


 お腹を撫で、思って、考えてしまったのは。

 

 私には与えられてあげられない、『家族』という温もりや、穏やかさ、幸せを、あの人ならは、あの女なら、智に与えられてあげられる。


 ぐっ、と、突然競り上がってきた、苛立ちと吐き気を何とかして抑えようとした時、千代田さんがそんな私の体調の変化に気付いた。


「センパイ!?大丈夫ですか?顔色真っ青じゃないですか!!誰か、救急車!!」


 千代田さんの声は聞こえたけど、私は直ぐには返事が出来なかった。


短くて済みません。後日、更新します。

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