表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Si je tombe dans l'amour avec vous  作者: 篠宮 梢
第二幕:嵐の予兆
15/97

♪、14 真夏の日の悪夢①

さて、これからはしばらくシリアス路線がメインテーマです。

お許しください。

人生はそう甘くはありませんので。

 8月10日、水曜日。

 空に雲の一つも浮いていない、良く晴れた日。

 この日が、私が生涯忘れる事が出来ない、これからの騒動の幕開けになる日になるなんて、一体、誰が予想できただろう。


 私は類と付き合っていた頃から、あまりデートの行き先は気にしない方だった。

 

 ただ、一緒にいられれば幸せで、嬉しくて、行き先なんか関係なかった。だから、たまに何処に行きたいかと聞かれ、尋ねられた時は、困惑して何も答えられなくて、あやふやに笑って誤魔化していた。類もそんな私の性格を熟知していたから(類と私は幼馴染だった。)、雑誌のデートコースを忠実に守ったり、何もしない日もあった。


「吉乃、新しい靴はいらないのか?」


 智が選んだデート先は某有名デパートで、いわゆる買い物デートだった。


 今日の私は、髪を左サイドにまとめて流し、六分丈の白いチュニックワンピースに、ジーンズの生地で出来たレギンスに、五センチのヒールのサンダルという控えめな服装で、智はカジュアルなパンツとジャケットというスタイルで、デパートに来ているお客さんの視線を一人占めしている。


 私がボンヤリとそんな事を思いながら、靴売り場を見ていると、それに気付いた智が、靴売り場の前で足を止め、私の足下を見て、私の返事を聞かない内から靴売り場の椅子に座らせ、何足かの靴を店員に持って来させた。


 実を言えば、丁度新しい靴が欲しかった私は、智のその気遣いが嬉しくて、感激したのと同時に、愛しくも思った。


 私が座ったのとほぼ同時に置かれたのは、三足の靴。


 パンプスにハイヒール、そして何故かスニーカー。


 それらを手ずから試足させ、さっさと会計を済ませた智は、無表情ながらも満足気に見えた。


「何もこんなに買ってくれなくても・・・。私だってお金はあるんだし・・・。でも、ありがとう。嬉しい。」


 私が今履いている靴も、実は智が買ってくれたモノ。そればかりか、今、私が身につけているもの全てが、智が買ってくれたモノ。


「あとは鞄とスーツか?体調が良ければ、来週から会社に復帰したいんだろ?」


 紘人から聞いたぞ、と、少しだけ不愉快そうに顔を歪め、私をジロリと睨んだ智に、私は苦笑した。


(そんな顔しなくても良いのに・・・。)


 弁護士の紘人さんとは、あれから縁が切れることなく、継続的に色々仲良くさせてもらっている。

 今では雇用関係だけではなく、個人的に親しかったりもする。


(そう言えば紘人さんって、好きなヒトがいるのよね。利依さん、知ってるかしら?)


 くふふふ、と、妖しげに何かを企むように笑っている私の傍らで、智は怪訝そうに私を見ながらも、鞄売り場を探していた。


 そんな私達の間に、これから嵐を巻き起こすであろう波乱の使者が、静かに、しかし、確実に近付いている事に、私と智は気付いていなかった。

「夏の嵐」と題していた原作の話の2ページ目までですが、修正して更新しました。

この回の話から、地味に色々手直しが入ります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ