オープニング
オープニングとそのあとの本編は全く雰囲気が変わります(根底は同じですが)。
また、稚拙な文章をお許しください。
最初、坂本京子は殴りたいくら嫌なやつです。
こんなダメダメ主人公にイライラなさるかもしれません。
この文章を目にしてくださったことに感謝しています。
本編もご一読くだされば嬉しいです。
京子の朝は早い。
なんたって学校は港区だし、京子の家は横浜だ。
私立、東郷女子学院中等科に入学してから、はや2ヶ月。いじめもないけどクラスに馴染めたわけでもない。
移動教室の時もいつもひとり。ひとりなのは私だけじゃないけど、やっぱり寂しい。いつかこれがいじめにつながるんじゃないかとついつい心配してしまう。
こんなんだから友達できないのかな…。
そう思ったときだった。となりの席の北中まりが声をかけてきた。
「坂本さん、だよね。ごめん、バンドエイド持ってる?」
「えっ、いや、持ってるけど。」
愛想悪いって思われたかも……そんなことを思った。そんな私の思いにもかかわらず、北中まりはなおも続ける。
「いや、じつはさ、さっきちょっと転んじゃって。一枚くれる?」
彼女はいきなりスカートの裾をひらりとめくり、細い脚をあらわにした。だらだらと紅い血が流れていた。これは、ちょっと転んじゃってってレベルじゃない。
「えっ、これバンドエイドでいいの?保健室行ったほうがいいんじゃない?」
「いいの、いいの。なれてるから。」
勇気を出して言った言葉を即否定され、嫌われてるのかな、と思う。
「一枚でいいからさ。お願い。」
「う、うん。はい。こんなのでいいなら。」
「ありがと。ほんと助かったよ。明日返すね。」
「いいよ、別に。」
といいつつも、よかった、と思う。こういうせこいところがきらわれるんだろうな。それにしても、となりの席になってから、もう2ヶ月になるというのに、北中まりに話しかけられたのは初めてだ。やっぱり私はクラスの中で浮いてるんだろう。と、そのとき、またいきなり話しかけられた。
「でもさ、坂本さんがこんなに明るいって思ってなかったな。意外。」
北村まりは、ずいぶんずけずけとものを言う。そこが彼女の魅力のひとつなのだろう。でも、私にはとても無理。人を傷つけるのが怖いから。ううん。やっぱりちがう、ホントは傷つけられるのが怖いんだ。だめだな、私。
京子は泣きたくなった。
「ん、プリントまわってきてるよ、ほんと、役立たずなんだから。ハハ、なんてね。」
一瞬、本気で言われたとおもった。だって私はほんとに役立たずだから。だから、家にも、学校にも居場所なんてない。
北村まりが、急に憎らしく思えた。友達もたくさん、いいたいことも素直にいえる、脚も細い、成績もいい、家だってきっと大金持ちだろう。ここはそういう学校だ。
それにひきかえ、私は、いつもひとり、怖くて何も言えない、かわいくもないし、成績だって、偏差値だって五十七のくずだ。
親は裕福だけど、みんなみたいに、何代も続く資産家一家に生まれたわけでもない。
ああもう自分がいやだ。
そんな思いが顔に出ていたのか、北村まりが怪訝な顔をする。
「どしたの?なんか泣きそうな顔してるけど?」
「…。」
何も言えない。何も。
自分の口はぱくぱくと空気を吸い込むだけで、音を出してはくれない。
北村まりがニコッという音が聞こえそうな笑顔で微笑む。
「な訳ないよね!きょーちゃんはそんな弱虫じゃないからねー。あ、あたしこう見えて、きょーちゃんのこといろいろしってるんだー!あは」
なんだか氷塊が陽を一身に受けたかのように、心がほぐれた。
「きょーちゃんだなんて呼ばれたの、初めてだよ?」
そういってぎこちなく微笑み返す私に、
「当たり前じゃん。今初めて呼んだもん。今日からあなたのあだ名はきょーちゃんです!オーケー?名付け親はこの私、北村まりでございます!!」
ふざけた調子でそんなことをいうまりにつられて、くすくすと笑う。
――すると。
まりの前の席の
気が付けばまりの木田加奈子が
「じゃああんたはまーちゃんじゃん!似合わなっ!あんたそんな柄じゃないから。ね?」
とふざけた調子で言い、私を見て首をかしげる。
何が不思議なのだろうか…。
そしてはっとした。同意を求められているのだ。この、私に。
そんなこと久しぶりすぎて、最初は気づくことさえできなかった。
急いで応える。
「うん!まりちゃんって呼びたい。」
「え!?もっと似合わないよー!坂本さんってかぶせボケするんだ?うけるねー」
「チッチッチ!坂本さんじないでしょー?このまり大先生が付けたさいこーにナイスな名前があるでしょーが!!」
「言い回し古っ!!」
「あはは!かもねー」
この雰囲気…。
もしかして、友達になれた…?
「じゃあ、改めて。きょーちゃん、よろしく!あたしは木田。加奈子って呼んでね!」
「う、うん!こちらこそよろしくね!!加奈子…。やっぱり呼びづらいから加奈ちゃんでもいい?」
「いいにゃー」
「にゃーってなんだよ!にゃーって!!」
早速まりのツッコミが入る。
「ナイスツッコミだにゃー」
「ぷっ」
かけあいかのようにしゃべる二人が面白くて、思わず吹き出すと、二人がさらに吹きだした。
「??」
訳がわからず困惑する私を見て、なおも笑い続ける二人。
よくわからなかったけど…。
なんだか今日は、空が青かった。
読んでくださった方!!ほんっとうにほんっとうにありがとうございます!!
感涙です!!!
貴重なお時間を私の描いた駄文に割いてくださり、非常に嬉しいです。
最後にもう一度、ありがとうございました!!