『暗闇作戦』
1分小説です。
■村役場■
役場の片隅で密談する観光課々長と村長
「村長・・・。そろそろ、ではないでしょうか。」
「そうだな。明日は、天気もいいらしいしな。」
「では・・・・・」
「今夜、決行しよう。」
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■深夜0時過ぎ■
あたりは漆黒の闇、蛙の鳴く声と清流の流れる音に包まれていた。
懐中電灯も持たずに河原に近づく二人の黒い影。
「村長、足元に気をつけてください。」
「私は、大丈夫だ。きみ、人けは無いか?」
「暗視カメラで、確認します。」
「どうだ・・・」
「大丈夫です。だれも、いません。」
「おい、その辺に、ばら撒け。」
「はい、この辺でいいですか。」
「あと、そっちにもやっとけ。」
「明日が、楽しみですね。」
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■玉砂利の敷かれた広いバーベキュー場■
雲ひとつ無い快晴、三十組近い家族が休日のバーベキューを楽しんでいる。
石を投げて遊んでいた小学生ぐらいの男の子が父親に向かっていきなり叫んだ。
「お父さん!これ、ナーに?」
近寄る父親。
「どれ、えっつ、光ってるじゃんか。」
「きれいだよ。」
「うわっ、・・・砂金だ!砂金かもしれない!」
奥さんに聞こえるように大きな声を上げた。
「おーい、砂金だ!砂金だ~。」
群集は、聞き逃すはずがなかった。
肉皿を持ったまま遠巻きに様子を伺い、また、火を起す手を休めじっと観察しているものもいる。
その一方で、川底を探るような動きを見せる人々も。
母親も近寄ってきた。
「ねえ、あなた、テレビ局呼んだら!」
「そんなことしたら、大騒ぎになるぞ・・・」
あちらこちらから叫ぶ声がし始めた。
「見つけたぞ!」
「あった!あった!」
「おい、すごいぞ!」
「砂金だ!」
■村役場■
一夜明け、村長と観光課々長は、地元紙を見ながら、ほくそ笑んでいた。
「うまく行きましたね。村長。」
「あぁ、こりゃあ忙しくなりそうだな・・・。」
感想自由