7、超能力戦争、開戦
超能力者が姿を隠して生きる世界。その中で生きるサイコストのうちの一人、魂波闘也は、無口でありながらも、新たなサイコストと出会っていく。その不可思議なめぐり合いの中で、起きた、炎天中生徒行方不明の事件。追った先で遭遇したのは、自らをエスパーと名乗る超能力者であった。
エスパーとの会話の中で出てきた、ソウリール・エスパーなるものの名は、闘也にとって、もう出会うことがないと思っていた、父の名であった。
非現実的な理想の元に家を出て行ったソウリールが、サイコストに対して行った宣戦布告。それを受けて、それぞれが覚悟を決め、開戦に備えていた。そして・・・・・・。
次の日の朝、闘也はかばんを手に持って、普段通り登校。中身も普段通り。だが、それぞれ、非常食と水くらいは、隠し持っておくように言った。そのため、いつもより、かばんは重かった。
学校に行くまでは変わらない。朝のホームルームの時間も変わらない。変わったのは、二時間目くらい。ちょうど担任の授業だった。
闘也は左側、窓の外が赤くなったと感じた。とうとうきたか・・・・・・。窓の外を振り向く。はるか遠くにある山が燃えている。山だけでなく、その周辺も燃えている。担任も他の生徒も、それを見ていた。そこまでなら、山火事だと、通報するぐらいで済むだろう。問題はそこからだった。山の炎が大きくなり、そして、爆発。これにはほとんどがショックを受けていたし、パニック状態に陥った。そこで、闘也、乱州、的射、秋人の四人は立ち上がった。
「先生。重要な話があります」
闘也が喋った。ほぼ全てが、重要な話の内容より、闘也が喋ったことに驚いていた。
「これから、戦争が始まります」
最重要なことを闘也が喋ると、続いて乱州が、
「そして、相手は超能力者です」
とうてい信じられない話だろう。そこに的射が追い討ちをかける。
「私たちも、超能力者です」
そして、秋人が、
「といっても、敵は俺たちとは違う種族の超能力者っすけどね」
「先生」
「は、はい?」
「俺たちは戦います。この地球を守るために」
間抜けな担任の返事もおかしかったが、みんなを安心させるため、すこし笑って見せた。後方の炎はさらに大きくなっていく。食料等は、すでに腰のポーチに入っていた。闘也は指示を出す。
「秋人。翼を出せ、全員、それに乗っていく」
「了解」
秋人が窓から飛び出した直後、背中から見事な翼が生える。結構な大きさだ。三人はそれに飛び乗る。
「先生」
「へ、へぃぃ」
やっぱりおかしな返事だ。いい思い出になりそうだ。
「生徒達を非難させなくていいんですか?」
それで、はっとした担任は、生徒達を集め、廊下に並ばせた。全員がグラウンドに非難したのを見届けてから、秋人は羽ばたいた。これでも、俺たちは軽い方らしいな。安定した飛び方をしていた。
山火事のあった方へと急ぐ。かなりのスピードだ。秋人曰く、これでも、三割のスピードだという。山のふもとに四人は降り立った。すごい山火事だ。だが、これに気にしている暇はない。急いでエスパーを探し出し、殲滅させないといけない。
「よし、別れて行動しよう。けど、的射は後方で支援する感じだから、乱州と一緒に、行動してくれ」
「リョーカイ」
「わかったわ」
「了解だ。相棒」
四人はうなずき、それぞれ散った。
秋人は学校と山の間を探索。結構な距離だが、秋人ならば、この程度は簡単に探せる。この間には、公園、小さな林、住宅地があった。住宅地は、さすがにいなかった。公園にでたところで、ちょっとした集団を発見。人型だが、サイコストとは思えない。
「お!サイコストだヨ!皆の衆!かかるんだヨ!」
隊長っぽいやつが指示を出すと、その部下であろう者たちが、三十人ほど、攻めてきた。
「このくらいなら、三十秒もあれば倒せるぜ!」
秋人は正面から突っ込んだ。
乱州と的射は、山の反対側を捜索していた。的射は、スナイパーライフルを肩にかけていた。山の向こう側は、ほとんど森だ。そのなかの少し開けたところに、エスパーたちが集まっている。
「的射。誰でもいい。狙撃しろ」
「うん」
的射が発砲すると同時に、乱州が飛び出す。
「てええりゃぁぁっ!!」
巨大化させた腕を振り回す。エスパーがどんどん倒れていく。まだ、息があるものに、的射が止めをさす。このあたりの敵は、殲滅できたようだ。
闘也は住宅地と、その後ろの山を捜索した。住宅地にエスパーはいなかったが、山にはあちこちにいた。魂と協力しながら、敵を殲滅していった。頂上付近には、そりゃあもうすごい数だ。軽く百はいるな。闘也は拳を構えた。このくらいの敵を倒せないようでは、他のみんなに示しがつかないし、なにより、父に、ソウリールに勝てない。
「巨大火球!」
巨大な球状の火を投げ込む。ほとんどが焼けた。魂と分離する。残りの敵を、なんとか殲滅できた。そのとき、闘也の前に、一人の男が現れた。敵を二十三秒で殲滅させた秋人のまえにも、乱州と的射のまえにも、それぞれ違う者が降り立った。