4、非現実的
的射を超能力者として目覚めさせたころ、
炎天中の生徒が行方不明になるという事件が多発していた。
闘也たちはそれを調べるため、行動を開始した・・・・・・。
炎天町は事件がおきたことは一、二回。それでも、水と間違えて油を飲んだおじいちゃんの事件とか、飼い犬の首輪がなくなったなどの小さな事件(油を飲んだのは深刻な問題かもしれないが)しか起こらなかった。
そんな平和な町の、平和、(かどうかは微妙だが)な中学校の生徒が行方不明。まさに一大事だった。久々の事件にわくわくしているものもいたが、ほとんどは事件に怯えていた。警察も捜索人数が足りないとかで動かせないらしい。
闘也たちは犯人の進路が予測できていた。つまりはサイコストの可能性が極めて高かった。犯人は山奥に逃げ込んでいた。三人は犯人を見つけた。山中に溶け込みやすい服装をしている。
「行くぞ!乱州」
「了解だぜ、闘也!」
敵は五人。いずれも人と言っても間違いなく、超能力者であることも決定していた。言葉を話すことぐらいはできそうだ。乱州が天高く飛び上がる。乱州が右腕を引き、それを犯人に向かって突き伸ばす。
「長距離腕打!!」
乱州の拳が二人つぶした。
「ソウルファイヤァッ!」
闘也も一人つぶす。残りの二人はひっとらえて、事情聴取だった。二人には手を上げさせた。
「変な動きしたら、四肢がなくなると思えよ」
「コエーな」
「このくらいの警告はしたほうがいい」
「まあ、納得」
さっそく闘也は事情聴取を始めた。
「最初の質問。おまえたちはサイコストか?」
「お、おお、俺たちは誇り高きエスパーだヨ」
乱州は吹き出した。このエスパーとかいう敵の反応が面白いらしい。
「こいつら、めちゃビビッてるな」
そんな乱州に構わず、闘也は質問を続ける。
「監視役的なエスパーもいるのか?」
「こ、この目の中の内臓カメラが本部に映像を送ってるんだヨ」
「なるほど」
乱州が二人に目潰しを喰らわせた。
「ギャァァ」
「ウギュッ」
「最後の質問。エスパーの中心人物と、エスパーの弱点を言え。それをいったら逃がす」
「我々のボスは、ソウリール・エスパー様だヨ!!」
「弱点は?」
「エスパーに弱点はないヨ」
その一言を聞いた闘也は二人を炎で焼き尽くした。
闘也が焼き払ったのは、もちろん、弱点がないなどとかっこつけられたからだ。しかし、闘也はそれ以外にも、気にかかったことがあった。
ソウリール・エスパー。
その名前を聞いたとき、背中に悪寒が走った。乱州や的射にはたいした名前ではない。だが、闘也にとっては、かなりの重要人物だった。
彼は、闘也の父親だった。三つだか四つだかに、闘也に魂の能力を教え、闘也がそれを覚えたころに、家族にこういった。
「私は、このようなすばらしい能力の数々をもっとすばらしいことに使いたい。世界中にこのすばらしい能力を広め、世界をすばらしいサイコストの惑星と呼ばれるようなものにしたい」
今思えば、火星人とかが存在しない限り、誰もそんなこと言わないと思う。
「すばらしい能力はすばらしい人を作り、すばらしい人はすばらしい地球を作る。すばらしい地球は、全宇宙をすばらしいものとしてくれるはずだ。おまえたち、このすばらしい計画に協力してくれないか」
そのとき、母はとうとうキレた。キレてはいたが、半分呆れていた。父の発言は別の言い方をすれば、世界を私のものにしたい。と言っているようなものだ。無謀なことだ。世界を自分一人のものにしたいと思えば、少なくともだれかが止めるだろう。だが、父は承知で発言したらしい。
「あなたがそんな人だとは思いませんでしたよ。もういいです。あなたとは離婚します」
父は、反論もできずに、離婚の二文字を突きつけられた。しかし、
「分かった。私は必ずすばらしい世界を作り上げてみせる。私は、ソウリール・エスパーとなり、サイコストではなく、エスパーという種族を作り上げる!必ず、サイコストを滅ぼし、エスパーをこの地球上に立たせてやる!」
結局、十二回も「すばらしい」をいって父は去っていってしまった。
そして、とうとうこんな手段にでたのか。日本各地では誘拐事件や、行方不明者が多い。海外のほうでも、今でさえ紛争しているところなどでの拉致などのうち、少なくとも、未解決事件はソウリール、もしくはその部下によるものだろう。そして部下を増やしていき、最後には軍を結成し、日本を制圧し、最後には世界中を支配するつもりなのだろう。
闘也は、誘拐されかけた少年に向かって、
「記憶消去」
そういった。そして、記憶があいまいなうちにふもとに下ろして逃げた。




