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未来少年  作者: 織間リオ
第一章【目覚めるサイコスト】
3/30

3、自覚

 闘也たちの喧嘩を見ていたやつを倉庫から出た二人は発見した。こいつは確か・・・同じクラスの遠藤的射えんどう まとい。小学から同じだったが、例によって話したことはない。クラスでも、人気がある。

(見ていたのは女子か。俺、話しにくいんだけど)

(お前の達者口なら、いけるだろう)

乱州は的射に話しかけた。

「こんなとこでなにやってんだ?遠藤」

乱州は、闘也以外には苗字で名前を呼ぶ癖があった。

「お姉ちゃんの弓を探してたの」

「弓?ああ。お前アーチェリー部だったな」

彼女は、小一のころから射的屋にいけば必ず景品を取ってくるほどの射的センスがあり、炎天中でスカウトされ、すでに引退した三年のレベルまで来たらしい。

「お姉ちゃんが引退するときにここに弓を残していったの。それを取りにいったら、二人とあともう一人がいなかった?ちょっと白くて闘也に似てる人。途中で居なくなったけど」

もう1人は間違いなく闘也の魂だ。二人はテレパシーで話し合った。

(サイコスト以外の記憶を動かしたんだろ?)

(ああ。それなのに的射の記憶はそのままだ)

(だが、的射には、サイコストの自覚もないし、第一、サイコストにあるはずのオーラがない)

(主体能力もないし、サイコストとは言い切れないな)

(もしあるならあの射撃センスだな)

とにもかくにも、的射のことは後で調べることにした。

「まぁ、いいや。とりあえず弓探し、遅くならないうちに見つけろよ」

「もう十分遅い時間だけどね」

「だな。じゃあな、また明日」

「うん。闘也もまた明日」

闘也は軽く手を上げ応答した。しかし、やはり的射には何かあることは確信していた。最悪でも、あいつは普通の人間とは違う。それだけは確かだ。間違いない。明日からは、その確信を裏付ける証拠を探すことになる。それだけでも、結構な推理力が必要になる。さらに、その本人を説得する話術も必要だ。二人は、その方法について語りながら帰っていた。


 一方の的射は不思議な感覚を覚えていた。あの白い人は、自分にしか見えないような気さえした。それ以外にも、二人の思っていることが、なぜか、本当に僅かだが、聞こえてきたのだ。


サイコスト以外・・・・・・。記憶・・・・・・のまま。自覚が・・・・・・ストのオーラが・・・・・・。イコストとは言い切れない。射撃・・・・・・。

 聞き取れた内容を整理する。私は、二人の言うサイコストなのだろうか。サイコストとはなんなのか。そして、二人はサイコストなのだろうか。広がる疑問の中、弓を見つけ、すぐに帰宅した。

 次の日の放課後、炎中から十分程度の小さな森の中の穴にて、闘也と乱州は集まった。この穴はいつか必要になると思い、数年前に掘ったものだ。まさか、本当に使うことになるとは予想していなかった。この穴は、サイコスト関連で、協会に報告する必要のない、もしくは報告しないほうがいいことを話し合うために作ったのだ。闘也は脇にあるランプに火をつけながら進んだ。会議場は結構な広さがある。脇に大量に積んであった木切れをかき集め、2人の間において火をつけた。

「寒くね?この穴」

「当たり前だ。地下なんだから」

「遠藤の自覚について考えるんだな」

「ああ。あいつのサイコストの能力が目覚めれば、逆にあいつのためになる。なにより仲間は多いほうがいい」

「まぁ、そりゃそうだな」

乱州は近くにおいてあった木の椅子に座った。

「的射がサイコストだと説得するのは乱州に全部任せる」

「責任重大だな」

「あとは、どうやってその証拠をつかむかだな」

「闇雲なものじゃ何それ、って否定されるだけだしな」

「あいつの射撃センスなんかを活かさせるようにすれば・・・・・・」

「サイコストじゃないやつをサイコストにするためには」

超能力影響環境サイコゾーンで、射的をさせればいいんだ!!」

闘也が珍しくでかい声を出した。乱州を少しながら驚いた。

 サイコゾーンとは、強力なサイコキネシスの磁場が働いている場所のことで、サイコストはそこでなら、通常よりも高めの能力サイコが出せるのだ。

「けど、サイコゾーンはサイコスト協会の支部や本部にしかないんじゃないか」

その質問に、闘也は指を横にふって、答えた。

「乱州君。君が今いるのは、どんな場所だと思う?」

「まさか!ここって!」

「そう。ここもサイコゾーンの一つなんだ。ガキのころからこの森の中にサイコゾーンがあると確信して、とうとう見つけて、地下を掘ったんだよ」

「まったくお前はすごいやつだぜ!」

「じゃ、ここにつれてくるまでの説得、よろしく」

「俺やるんかい!」

「勘弁してくれ。これで会議を終わる」

乱州は頭を下げた。おじぎのつもりであろう。二人は帰りながらも、サイコゾーンに連れてくる日時と時間を話し合っていた。

 会議から数日、乱州は、アーチェリー個人参加型大会というもので的射を呼び出すことに成功した。他のアーチェリー部員は参加しないようで助かった。

 闘也は一足先に地下に移動した。いつもよりも脳内が激しく刺激される。今日は、特に磁場の影響が強いことの証拠だった。思えば、かなり幼いころからこの感じが好きだった。闘也は幼いころからすでにソウルの能力が強かったせいで、響くような刺激はいつも新鮮なものだった。しばらく時間が経ち、一人の男が降りてきた。乱州ではない。だが、顔つきは似ていた。なるほど、こいつが乱州の兄貴か。

「闘也か・・・・・・?」

「はい。魂波闘也です」

「俺の名前知ってるか?」

「いえ」

「そうか、俺は波気明文はき あきふみ。明るいに文で明文。よろしく」

「よろしくお願いします」

「おれはここで何をすればいいんだ?」

闘也は、ここでアーチェリーの大会として作り出すため、観客と、選手の偽者を作ってほしいと頼んだ。明文は快く承諾し、ものの五分で会場を作り出した。


 懐かしいな。明文はそう思った。小さく、幼いころに見たマジックで、物を一気に作り出すのに憧れ、小学校時代をその修行に費やした。

その力が今、人を楽しませることではなく、人のためのことに使っている。作り出される光景があの時と同じで、懐かしかった。


 乱州は弓を持った的射を連れてきた。大会らしい手続きを済ませて、順番を待っているようだ。そして、的射の順番となり、一本目の矢を放った。矢は一直線に的に飛んでいき、中心に突き刺さった。

 ああ。そういえば、的射が矢を撃つところは、初めて見たな。射的でコルク栓を撃っているのは見たことがあったが、矢を撃っているのは初めてだ。的射は、二本目の矢を構えた。


 的射はなぜかいつも以上に感覚が鋭くなっているような気がしていた。調子がいいのとは違う。どこかが刺激されて、それにあわせるかのように矢が、弓が、腕が、体が反応し、矢が飛んでいく。なんなのだろう、この感覚は。


 偽の観客の後ろで闘也は特殊カメラを持っていた。このカメラは、サイコストのオーラが見えにくい者に向かって、タイミングを合わせてシャッターを押す必要があった。1本目も2本目も撮れた。3本目もオーラがバッチリ写っていた。見れば、撃つたびにオーラが拡大し、力が大きくなっている。この写真を見せれば、納得がいかないことはまずないだろう。全て撃ち終わったところでいきなり沈みかえった。闘也と乱州は的射の前に出た。いよいよ、的射がサイコストになる瞬間だった。

 乱州が闘也の一歩前にでて話し始めた。

「遠藤。お前、今回の大会で、いつもよりかなり調子がよかった・・・・・・いや、どこか感覚が違っていただろう」


 的射はドキッとした。もしかしたら、そのことを告げるために、この大会に呼び出したのだろうか。感覚は違った。それだけは確信が持てた。だが、ここがどうして大会の会場なのかは、いまだに疑問があった。確かに風がないところは、選手には有利な状況だ。だが、なぜこのくらい暗いところでやるのかが不思議だった。

「まぁ・・・・・・。確かに、どこか刺激されて、それに合わせて調子も上がっていくような感じだった」

「そうか・・・・・・。じゃあ単刀直入に言わせてもらう」

なにを?と言いかけた口を閉じた。なんのことなのかは想像もできない。だが、黙って聞いたほうがいいと思った。

「お前は超能力者だ」

えっ。と声がもれた。自分ではえっ、と言ったつもりだったが、はっ?と言った気もした。

「超能・・・力者?私、そういうの信じない系だけど・・」

「この写真を見ろ」

闘也が口を開いた。乱州より前に出て、写真を見せた。そこに写っていたのは、まぎれもなく、自分の姿だった。感覚が刺激され、体全部が反応した、あの瞬間とき

「この写真が、お前の力を写した。これが、お前が・・・・・・的射が超能力者・・・・・・またの名をサイコキネシストである、確たる証拠だ」

自分から、力が満ち溢れている写真。それを見せ付けられては、なにも言い返せはしない。言い返す気さえなかった。

「自分がサイコストだということ。それを分かれ、自覚しろ、的射!」

急に頭にさまざまなサイコストとしてのことが入ってくる。すさまじいものだったが、すぐに消えて、一気に疲れた気がした。

「どうやら、すべてを悟れたようだな。遠藤」

「うん・・・・・・。私はただの人間じゃあないんだ・・・・・・」

やっと終わった感じだった。しかし、これが始まりだということは、だれにもわからなかった。


 闘也は的射の様子を見て、若干の驚きを隠せずにはいられなかった。乱州はあまり知らないかもしれないが、一般人ノーマルがいきなり超能力者サイコストとして自覚するときに、その脳の圧迫に、ほとんどダメージを受けずに立っていられるものは殆どいない。大抵の者は、もだえ苦しむか、意識を失うかのどちらかである。

 的射は、その瞬間、言葉数こそ少なくなったものの、その忍耐力の強さには、恐れ入った。もしかしたら、脳への圧迫が少なかったかもしれない。それも、この磁場の影響かもしれない。的射が競技を行っている際の感覚に、体や脳が慣らされて、自覚した際の脳への負担を軽くしたと考えるのが一番いいだろう。

 どうであれ、的射はサイコストとしての自覚を持った。超能力者として、これからは生きることになるだろう。と、闘也は一人、納得した。

 彼らが終わりと感じたころ、炎中の生徒が行方不明という事件がおきた。それは、これから起きる戦乱の始まりにしかすぎないことなのだった。



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