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未来少年  作者: 織間リオ
第四章【戦いの先に】
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22、力

 パイロットの一言から一分もしないうちに、日本の領空に入り、その十分後には、炎天が見えそうなところまで来ていた。さらに先へと進んでいくヘリは、炎天の真上まで来た。そこに来て、闘也達は、炎天の様子を目の当たりにした。出発したときよりもひどい。あちこちの建物が壊され、こんな上空でも見えるほどのエスパーがいた。溢れかえっていた。炎天で一番高い山、炎高山の頂上には、大きく「ESP」と書かれた旗が風になびいていた。とうとうエスパーは、この炎天を手に入れたといっても過言ではないだろう。すぐに協会まで戻り、協会の中へと入った。

 遅かった。すでに中にはエスパーしかいない。他に誰もいない。闘也達に気づいたエスパーは、闘也達に襲い掛かってきた。

「よし!戦力を分散して戦うぞ!」

「了解!」

全員が承諾し、五方向に飛び出す。各所で奮闘しているようだ。

 その瞬間、地面が揺れた。いや、協会は地下にあるのに、上からもゆれを感じる。奥の方で戦っていた五人は、その音とゆれの方向を感知した。

「入り口側か?」

闘也はエスパーに数発の弾丸を撃ち込むと、今来た道を逆戻りした。

 五人全員が入り口付近まで集まった。天井に穴が開いている。一人のエスパーが、五人全員を見渡した。

「我は「ESP」生態研究専門、ゲルガー。貴様らをここでひねり潰す」

さらに天井から、もう一人のエスパーが現れる。ソウリールではない。

「私は「ESP」偵察指揮専門、ガルラ。エスパーのため、この命を懸ける」

二人の男のエスパー。さらにESPのメンバーということは、かなり強いはずだ。だが、闘也からすれば、研究専門と偵察専門なら、戦闘能力はそこまで高くはないのでは、と。だが、油断はできない。研究員とか偵察隊の隊長なら、そこらへんのエスパーでも、やれといわれればやれるはずだ。つまりは、戦闘能力もかなりのものだということになる。それに、偵察の隊長エスパーの方は、姿を確認するまで、エスパー反応がしなかった。つまりは、それほどまでにエスパー反応を薄める力を持っているということになる。

 こいつら、そう簡単には倒せそうにないな。

 戦う前からでも分かる。闘也は一本の剣を作り出し、二人のエスパーにその刃先を向けた。

「望むところだ。だが、たたき潰されるのはそっちの方だ!」

「闘也。たたき潰すじゃなくて、ひねり潰すだぞ」

乱州が口を挟んできた。言ってから気づいたのでどうしようもなく、一言返すだけにした。

「分かったよ」

闘也はその過ちを認め、そして、自分の後ろにいる仲間たちに向かって言った。

「よし、やるぞ! 皆!!」

五人は各方向に散り、エスパー二人を攻めた。闘也は正面から攻めた。ゲルガーの目の前まで接近すると、握っていた剣を真横に振った。見事に命中。

「この程度か。これはガード態勢をとるまでではない」

乱州は、腕を伸ばして、ゲルガーを攻撃する。しかし、先ほどと態勢は変わらない。腹部にもろに命中したが、その腕を苦もなく捕まえる。そちらに気を取られている間に、闘也は連続で斬りつけた。だが、効果は薄いようだ。

耐撃メンタルか・・・・・・」

耐撃メンタルは、そのダメージを軽減したり、応急処置のようにある程度の怪我を数秒で回復される、防御に適した能力である。

「こんにゃろおぉぉっ!」

乱州は掴まれている腕を取り戻すため、腕を縮め、それによって自分が近づき、その反動でもう一つの腕を伸ばした。

 見事、ゲルガーの腕に命中した。腕が縛られていた感覚がなくなり、自由になる。すぐにその腕を巨大化させて、ゲルガーの顔面を強打した。ゲルガーがよろめく。よほど効いたらしい。

 しばらく腹部を斬りつけていた闘也は考えた。頭部であんなによろめくということは、あそこが弱点か。だが、腹部もかなりダメージを与えてあり、傷も多い。それなら。

「乱州!腹部の傷を狙って攻撃してくれ!俺は頭を狙う!」

「分かった!」

言われるがままに乱州はその巨大な拳の中心を、一番深そうな傷のところへ当てた。ゲルガーは、その腹を押さえ、体が丸くなり、頭を下げた。

「頭下げて痛がってる暇なんて与えねーよ!」

闘也は、ソウルスティックで顔面をはじくようにして頭を起こした。ゲルガーは、上を向いた状態になっている。

「ソウルハンマー!」

闘也はそこに、巨大なハンマーを作り出し、頭上で振りかぶった。

「ブレイク・ハンマァァァァ!!!!」

勢いよくそのハンマーは振り下ろされ、顔面を強打した。

「ぐふ・・・・・・ウああああああああ!!!!!!」

ゲルガーはその悲鳴にも雄叫びにも聞こえるような声を張り上げて、消えていった。そこから、大量のエスパーのエネルギーみたいなものが現れた。そのエネルギーは、どこかへと飛んでいってしまった。そちらに気をとられた一瞬、闘也と乱州は吹っ飛ばされた。向こうで、ガルラを相手にして秋人、的射、由利が戦っていた。かなり苦戦している。どうやら、ゲルガーがいなくなったことで、いっきに力を解放したという感じだ。

「君達の動きはすでにインプット済みだ。だからこそ、君達は勝てるわけはない」

あの秋人のスピードさえもかわされている。完全に秋人の動きを見切っていた。

 読込インプット。目の前にある人、物、動物等の状態や行動パターンを読むことで次の行動に繋げる能力である。

「余所見をしている暇はありませんよ?」

いつのまにか後ろにはガルラがいた。だめだ。逃げ切れない! そう思ったとき、背中に衝撃がくる。痛みがガルラの拳を通して伝わってくる。一瞬、骨が折れるんじゃないかと錯覚した。それほどのものだったのだ。

「ぐはっ!!」

闘也がうめき声を上げる。かなりの距離を飛んで闘也は倒れる。背中が痛む。足と手を壁や床につかせながらゆっくりと立ち上がる。両足がしっかりと地面についた瞬間、また背中が痛む。このようだと、この猫背の状態のまま戦わなければならない。ガルラが突っ込んでくる。目の前で乱州がガードする。闘也は、痛みのあまり、声もでなかった。乱州にテレパシーを送る。

(乱州、融合して俺を取り込んでくれ)

(確かに、その体じゃまともに戦えそうにないな)

乱州はそういうと、融合し、闘也を取り込んだ。目の前で力を発揮しつつあるガルラに向かって言い放った。

「ここからが本番だ。俺達の本気を見せてやるぜ」

絆で結ばれた相棒の二人は、乱州を前にして戦闘を開始した。

 ガルラは、正面から攻撃してきた。ガルラの右手が光る。

「光拳、ライトパンチ!」

しかし、どうやら転んだらしい。滑って転んだのだろう。足元を見ると、そこには氷が張られていた。

「私の水を、限界まで冷やしたわ! 今のうちに攻撃を!」

的射のその言葉に惹かれるように、乱州は腕を巨大化させ、その腕をガルラに向かって伸ばす。ガルラは立ち上がろうとするが、氷に足を取られ、立てないようだ。成す術もないまま、命中。今度はガルラが吹っ飛んだ。

(乱州、いい作戦を思いついた)

「まじか!? よし、じゃあ言え! 実行に移す!」

闘也がテレパシーで説明する。そのうちにガルラは再び突っ込んでくる。乱州は、闘也の炎を使って、氷を溶かし、水にした。ガルラはそのまま突っ込んでくる。闘也が指示を出した。その指示を聞き、乱州は拳を構える。しかし、殴りつけはしない。その拳の中には、電気が纏われている。ガルラが大きな音を立てて水に足をつける。今だ!

光線雷ビームサンダー!!」

乱州は両手を開き、その先から、雷を作り出し、それを水に向かって打ち出した。水は雷に触れた瞬間、黄色と白が混ざったような色を作り出し、発電した。もちろん、水に浸かっていたガルラも共に雷を受け、痺れ、その場に倒れこむようにして座ってしまった。体が痺れ、思うように体が動かない。それが今のガルラの状況だった。

(もう俺は大丈夫だ。分離してくれ。いやと言われても分離してもらう)

闘也の意図は分かっている。この状態の時に、全員で、攻撃するというのだろう。確かに今以上に、こいつに大きなダメージを与えられるチャンスはない。乱州は闘也と分離した。

「よし、全員、こいつに最強の技をぶち込め!!」

闘也自身、この言葉を懐かしく感じていた。八幹部のビーグルと戦った際、一気に勝負を決めるためにこの言葉を言い放ったのだ。もっとも、その当時、由利はいなかったのだが。

五人がそれぞれの態勢を取る。最初に攻撃を開始したのは、的射だった。

「ダブルバズーカ!!・・・・ファイヤッ!」

肩にずっしりと構えられた二つのバズーカが火をふいた。二つの銃口から撃ちだされた弾は、一直線にガルラに向かっていく。

全属性オールタイプ―――発射!!」

由利は持っていた杖から、火、水、雷、土、風の全属性を作り出し、それをガルラへ向かって攻撃に移した。

「マッハGパンチ!!」

秋人は、的射、由利の攻撃が当たったのを確認して、全速力でガルラに突っ込んだ。建物の中でさえ、助走なしでここまでスピードが出るのはすごい。

超巨大腕打ハイギガントアーム!!!!」

乱州は右腕を巨大化させた。かなりの大きさだった。いつも繰り出している「巨大腕打」よりも格段に大きいものだった。この拳をくらったら、ひとたまりもないはずだ。

全武器連携攻撃フルウエポン・コンビネーション!!!」

技の名前からして、全ての武器を使うようだ。他の四人の攻撃はすでに終わっている。つまり、もう自由に攻撃可能ということだ。

 闘也は最初にふたつの銃を作り出した。二つの銃から弾丸が発射される。その弾が当たったかどうかを確認するまえに闘也は飛び出している。

二つの銃を一つの長い棒に変える。棒の先で顔を強引に上げる。そして、その先を放し、再び顔が下がらぬうちに、もう一方の棒の先で顔を殴りつけた。真上に飛び上がった闘也は、スティックをハンマーに変えた。そして、そのまま腰を強打した。ガルラは仰向けの状態になる。闘也は一本の剣を作り出し、飛び上がった。その瞳が狙うのは、紛れもなく、ガルラの心臓だった。

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

闘也はその剣を心臓に突き刺した。剣の先から血がにじみでている。闘也はまだ剣を握っていた。そのうちに、ガリガリと鉄のような音がする。どうやら、床に剣の先が届いたようだ。つまり、貫通したのだ。

 闘也は剣を抜き取り、覚醒したまま飛び上がり、地上に出た。他の四人もあとに続いて地上に出た。

 力は、ただの力。他の何でもない。それを世のため人のために使うのはいいことだ。だが、彼らエスパーは、自分達がその能力を使うことによって全ての人類を支配下におき、それが世のため人のためになると思っている。世界に必要なのは、支配する人間でも、人に恐怖を与える力を持った人間でもない。人の意見を聞き、なおかつ自分も意見する。そんな「力」を持った人間が必要なはずだ。だが、現実に、その力を使いこなせる人間がいないのが現状だった。戦争前の政治家ですらもそうだった。

 闘也達は、目の前に人の気配を感じた。闘也はその顔に怒りを覚える。

「ソウリール・・・・・・!!」


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