18、大脱走
闘也達は、エスパー反応が、他よりもかなり高いこの廃墟にたどり着いた。四天王を倒した後、エスパーの粒みたいなのが出現した。緑の光を放つ粒は、全てが、ある方向へと飛んでいった。しかも、その方向からは、四天王よりも強いエスパー反応が感じられた。で、来てみると、この廃墟からエスパー反応が出ていると判明した。
「すごいエスパー反応だな。闘也」
「ああ。これほどまでのエスパー反応は、もうソウリールしかいないはずだ・・・・・・」
実際、この感覚は父のものであり、「はずだ」という予感よりは、もう確信しても何も問題がないくらいだ。
「急げ! 一階にいるやつは大至急二階に来い! 脱出するぞ!」
ソウリールは全員を二階に集合させて、一人のエスパー兵に命令を出した。
「よし!全員そろったな! よし、エンジン点火! 発進するぞ! 全員、武器を構えて戦闘にそなえろ!」
いい終わった瞬間、大きな揺れと共にエンジンが点火した。
突入しようとした闘也達の前で、熱気が立ち込めた。一階部分が燃えている。そして、二階部分が宙に浮いた。下からはエンジンとして、炎が吹き出ている。これによって、宙に浮いているようだ。
一階部分が激しく燃えて火事になっている。五人がそちらに気を引いている間に、二階部分は全速力で発進した。
「しまった。皆!あれを追うぞ!」
全員がそれに向かって走り出した。とても走るだけでは追いつかない。闘也は覚醒し、黄色い魂の光をその身に纏う。他の四人も覚醒し、空を舞った。二階部分が飛びながら、ソウリールの声を出した。
「どうだ闘也!これが、エスパー01だ!」
「02とか03とかもあるような言い方はやめろ」
闘也は苛立ちの篭った声で言うが、ソウリールはそれを聞くと苦笑を漏らした後に続ける。
「実際にある! それよりも今は、お前らを落とす!」
01が背を向けたまま、エスパー兵達が攻撃してきた。今までのエスパー兵が使っていない武器だ。どうやら、高出力の光線銃のようだ。それをかわす。こちらにだって、遠距離武器はある!
「ツインソウルガン」
二つの銃を作り出し、構える。相手の攻撃を避けたところに、銃を撃ちこんだ。しかし、どうやら塀があるようで、それに隠れられた。上に回りこんで撃てばいいのだが、これ以上スピードがでない。向こうもかなりのスピードだ。少しずつだが離されていくのが分かった。一応こちらは全速力だ。だが、厄介なことに、相手の方からは風を吹かせている。扇風機みたいなもので。
「雷電防御壁!」
そう言ったのはいつも雷の攻撃をよく使う乱州ではなく、ソウリールだった。闘也達の周りに、雷の壁ができた。かなりのスピードのため、当たらない方が難しかった。体中に高電圧が走る。普通の人間なら、有無を言わさず塵になっているだろうが、闘也がサイコストであり、覚醒もしていたため、そんなことにはならなかった。
「さらばだ! 闘也! またいつか会える日を待っているぞ! はっはっは!」
ソウリールが高笑いしながら遥か彼方へと飛び去っていた。闘也以外の四人も次々とその壁に当たる。それぞれがうめき声や悲鳴を上げていた。乱州だけが、自らの属性と両腕の盾により、感電を防いだ。雷の壁が消えた。どうやら、一定時間経てば、消えるような仕組みになっているようだ。雷の壁が消えるとほぼ時を同じくして乱州以外の四人がその意識を失い、その覚醒の光を消して落ちていく。
「くそっ。あの野郎」
乱州は腕を巨大化させ、地面の方へと伸ばした。闘也達よりも下に伸ばすと、腕を柔らかいものにした。四人はそれに着地した。不時着のようなものだが、地面に直接叩きつけられるよりは、いくらか衝撃を抑えられたはずだ。乱州は受け止めると、すぐに腕を短くしながら地上へと降りていった。四人を安全なところに非難させた。攻撃はしてこないだろうが、一応隠れた。
「大丈夫か?」
乱州は最初に目が覚めた闘也に話しかけた。まだ痺れがとれていないかもしれない。「ゆっくりしてろ」と闘也に言う。引き続いて他の三人も目が覚めた。闘也に言ったことと同じようなことを言った。むしろ、それ以外に今かける言葉が見つからなかった。
しばらくの時間が流れた。遥か彼方に消えたソウリールが戻ってくるはずもなく、空は紅くなっていた。痺れも消え、ようやく自由に動けるようになった闘也達は、今日もあの穴に帰った。
次の日、痺れも完全に治った闘也達は、サイコスト協会へと足を運んだ。一大決心が、闘也の中で固まった。
地下のサイコスト協会へと続く階段を下り、扉を開けて、支部長との面会を求めた。受付は支部長に許可を確認し、通してもらった。相変わらず長い道・・・・・・いや廊下だ。歩いている途中の部屋が連なる景色にももう飽きた。そのうち、支部長室に到着する。そこまで時間はかかってないが、疲れた。まだなにも喋ってないのに。
「失礼します」
五人がぞろぞろと入る。支部長の斉藤正義爺さんが迎えてくれた。
「今日はなんのようだね?もしや、とうとう我々の軍に入ってくれると一大決心してくれたのかね?」
別に軍に入ろうと思った、などという一大決心をしたわけではない。
「俺・・・・・・自分達がこの所属のサイコストであることを、一時的に取り消してもらえませんか」
その言葉を聞いた正義は当然の反応を示し、わけの分からないという表情のままこちらに聞いてきた。
「は? 取り消してどうするんだね?」
「ソウリールを追います」
「は? ソウリールとは一体誰だね?」
駄目だ、この爺さん。頭がいかれている。名前を特定するまでに時間がかかる、もしくは、どこかで聞いたような名前であるような仕草を取れば、こうは思わなかっただろう。だが、それを超越してまるで初耳のような挙動を目の前の老人は取った。闘也は呆れながら、ため息混じりに正義に問うた。
「お言葉ですが、協会は、その程度の情報も掴めていないんですか」
「いやいや、そんなことはない」
ということは、この爺さんの頭がいかれているのだろう。と勝手に解釈したが、正義が続けた。
「リーダーであるエスパーがいるのは確認されているが、実は、リーダーのエスパーは一人ではないとの予測がされている」
「なっ・・・・・・!」
闘也の驚愕が、正面の正義だけでなく、横にいた乱州、的射、秋人、由利にも分かるほどであり、闘也同様に驚愕していた。
「どういうことですか!!」
闘也は聞き返す。リーダーが複数人。そんなことは、いままで片隅にも考えたことがなかった。
「うむ。君達が知っているソウリールを除いても、最低でも二、三人はいる。まあもちろん、それ以上の可能性も高いのだが」
「その・・・複数人いるという、決定的な証拠はあるんですか」
「うむ。この炎天のあたりにもそれらしきエスパー反応があった。それはたぶん君達の言うソウリールだと思われる」
このうむうむ爺さん、なかなか、核心的なこと話さないなあ。
「他にも、北朝鮮の兵士が、このところ次々と行方不明になっているのだ」
「北朝鮮で軍がどーのこーの言い出したんじゃないんですか」
「それ以外にもある。エスパーはある者によって生成されているものだということは知っているかね?」
「はい。その、ある者の命を削ることによって、エスパーが生み出されているんですよね」
「そうだ。各所で大量のエスパー兵や、炎天内、もしくはその付近で出現する強力なエスパーを、一人で全て生み出すのは、かなり無理がある」
「その者の命が、かなり強大なものなんじゃないんですか」
「なかなかいいところを突いてくるな。だが、先ほどの北朝鮮の軍兵誘拐事件と照らし合わせた結果、確かにかなりの大きさのエスパー反応だが、かなり性質が違うことが分かった」
つまりは、一人で大量のエスパーを生み出しながら、北朝鮮で自ら誘拐することは確かに不可能に近い。それに、確かに今まで炎天に、この町にいたのだ。これで、この爺さんの話が繋がった。・・・・・・こんな話をしている場合ではない。早く取り消してもらって、ソウリールを追わねば。という闘也の考えは、誰よりも早くその口から吐き出された。
「すいません。時間がないので、取り消しの許可をもらいますよ」
「仕方ない。君達子供に戦いをさせたくはないが、君達が、この流れを作ったのだからな。君達でないと、この戦争は終わらせることはできないかもしれないからな」
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
闘也につられて、立ち上がった。支部長に背を向けたとき、彼は、闘也に言った。闘也は立ち止まり、背中で言葉を聞いた。
「ソウリールとは闘也君、君の父だと知っている。だが、この戦争は彼から始まったのではない。彼が計画を企てる前から、他のやつらが準備を進めていた予測がかなり高い。お父さんを責めてはいかんよ」
あんな言動をしておきながら、ソウリールのことは知っている。なんだか負けたような気がした。
「物事を決めるのは、予測じゃなく、事実ですよ。支部長」
闘也は正義にそう返すと、ドアを勢いよく閉めた。
あのようなことは言ったが、確かに、複数人いるやつらの中なら、あらかじめ計画しておくこともできたのかもしれない。だが、ソウリールが加わって、初めて計画が実行されたはずだ。
協会から外に出たあと、闘也は小さく一言、ぼそりと言った。
「皆。北朝鮮に渡ろう」
一同が驚いた。だが、闘也が自ら決断したことだった。




