14、魂剣、腕剣
ライラーダと、結構な時間を戦い続けている。気のせいなのか、ほんとにそうなのか分からないが・・・・・・。
ぜんぜん怯まない。
全くと言っていいほど、命知らずだ。こいつはもしかしたら死を恐れていないのだろうか。もし、それを差し引いても、強いことは強いのだろうが、この行動あってこそ、なのだろう。しかし強い。途中で、サイコストの軍が加勢したが、ほとんど壊滅した。雑魚では相手にならないのか、ただ殺戮しているだけなのか。どっちにしても、俺は戦う。闘也は突っ込んだ。落雷をなんとかかわし、接近する。拳を構え、殴りかかる。
「そこだぁぁぁ!」
しかし、その拳は当たらなかった。かわされたのではなく、隠し持っていた雷を帯びた剣によって返り討ちにあったのだ。
「うぐぅぅっ!」
わき腹から、僅かながらに血が出ていた。そこを押さえて、出血を止めようとする。命中率はさほど高くはなさそうだが、威力はかなりのもののようだ。しかし、前を向いた瞬間。雷の玉が飛んできた。かわしたいのはやまやまだが、わき腹全開にしないと、かわせるもんじゃない。万事休すか。
しかし、雷の玉は当たらなかった。かわしたわけではない。(できたらすごいが)雷の玉を返り討ちにしたわけでもない。なにかに守られた。目の前には・・・・・・何色というんだろう。ねずみ色というほど汚い色ではない。むしろシルバーという方が近いだろう。腕には、なにかが着いている。なんだ。守ったということなら、あれは盾というのがふさわしいだろう。闘也は、守ってくれた者の後姿を知っている。
「乱州・・・・・・信じてたよ」
闘也の言葉を背中で聞いたとき、乱州は悟った。俺は、ちゃんと信頼されているんだと。俺を信頼し、尊重し、信じてくれている。俺は、やっぱりあいつの相棒だな。他の誰の相棒にもならないし、なれない。絶対に、こいつについていこう。戻ってきてよかった。
「俺、闘也のこと、信じてやれなかった。けど」
「俺もおまえも、信じあえるし、それを糧にして戦える」
そうだ。俺は、乱州となら
いつでも俺は、闘也となら
戦っていける!
「俺は信じる力を、戦う力に変えて」
「俺は相棒と共に、戦う力を得て」
その瞬間、闘也は、右腕に、右手に、なにかを持った。自分でも分かっていなかった。右手には、一つの剣が握られていた。
「武器」
闘也はその能力をぼそりと呟いた。
武器の能力は、結構な実力者のサイコストでないと習得できない能力だ。自分の想像によって、自らの武器が生み出される。習得までに時間がかかるし、自由に扱うのも至難の業だが、使いこなせればこれほど強い能力はない。
「魂剣、ソウルソード」
闘也は、その能力によって、一本の剣を作り出した。実際、剣とか弓とか、そういう武器に名前はついていないし、つける必要もないが、闘也はソウルソードと名づけた。
闘也は、ソウルソードを片手に、ライラーダに突っ込んだ。今度は、返り討ちにあうこともない。ライラーダが剣を振りかざす。闘也も剣を振り、ガキィンと、鉄と鉄がぶつかり合う音がする。つばぜり合いになったようだ。お互い一歩もひかない。しかし、二人とも相手の剣から自分の剣を放した。しかし、ライラーダはそこで再び雷の玉を飛ばしてきた。ワンパターンだ。乱州が闘也の前に出て、それを防御した。闘也は、ソウルソードを二つの小さな剣に分裂させた。
「ツインソウルソード」
闘也はそれを持って再び突っ込む。ライラーダが剣を振り下ろしてくる。闘也は後ろにかわし、剣を連続で振った。
「魂乱舞」
何十回と背中を切り刻んだ。乱州が頭を殴り、ライラーダはパニックになっている。
「ソウルソード」
再び一本の剣に戻し、乱州に呼びかけた。
「乱州。腕を剣に変えろ。止めをさすぞ!」
「了解。やってやるぜ」
乱州は左手を剣に変えた。見事な鋼の剣だ。雷を帯びている。それなら、俺もこの剣に属性をつけてみるか。
「炎魂剣」
闘也の剣に炎が纏われる。二人は正面から突っ込んだ。
「俺は!!」
「俺達は!」
「負けないっ!!」
二つの剣がライダークに突き刺さる。ライダークが、そこから、ゆっくりと消えていった。どうやら終わったようだ。乱州も戻ってきて、戦力も回復した。これで、またエスパーと互角に戦うことができる。全員が覚醒したことで、さらに戦力も増えた。
どうやら敵は今日はこれ以上攻撃はしてこないようだが、各地で、被害は拡大していた。ここだけではなく、全国各地だ。その地域のサイコストでなんとか、被害を抑えているが、それでも、エスパーの猛攻は止まらないらしい。だが、ここ以外には、強いエスパー、つまり、幹部が出現していないことから、本部や、もしくは大きな支部が近くにあるのではないかと協会から報告を受けた。闘也たちは今日も、あの穴の中で、一晩過ごすこととした。