13、大疾風翼
乱州が逃げて少ししたころのこと。四人は、風の使、フーリュウとの死闘を続けていた。
このエスパーは手ごわい。どんな攻撃も風で跳ね返すのだ。
「くそっ。こいつに負けないくらいの風が起こせたら・・・・」
秋人がいつもながらの走りを見せながら呟いた。確かにこのエスパーは強い。いままでのエスパーとは比べ物にならないほどに強い。風を器用に操ることで、こちらの攻撃をかわし、こちらの自由を奪う。もし、あいつの風に捕まったら、強力な攻撃を叩き込まれることは必然だ。そうなる前に叩かなければならない。もちろん、それを実行しているのだが、やはり、風でやられる。攻撃が当たらない。こちらがやられるのも時間の問題だ。
闘也の周りが風に覆われる。天井も塞がれている。他のやつもだ。的射の弾もはねかえされ、由利の属性も効いていない。ただ一人秋人は、風の合間を見極めて、脱出していた。少しずつ風の範囲が小さくなっていく。逃げ切るのは不可能か。そのうちに、地面の感覚がなくなっていく。浮いてる!?しまった、掴まったか。風が手足の自由を奪い攻撃できない。
「ちきしょう!」
覚醒。闘也の体が黄色を帯びる。しかし、それも一瞬だった。覚醒さえも、自由を奪ってきたのだ。成す術がない。くそっ。
「勝てると思ってんのか」
ぼそりと誰かが呟いた。秋人だ。
「俺の風に、おまえ程度のやつが勝てると思ってんのかよ!!!!」
そのとき、秋人が薄緑に包まれ、背中から、巨大な翼が生えた。秋人が、覚醒した。あの巨大な翼からして飛躍の能力から覚醒したんだろうな。高速の能力はそのままに、飛躍と風の力を高めることができるのか。と、闘也は考えた。
「だぁぁぁいしぃぃっぷぅうぅぅ!!!」
そう叫び、翼を羽ばたかせたとき、闘也たちの周りの風は消えた。闘也は再び覚醒し、秋人の隣に着いた。
「よし、決めるぞ!秋人」
「ああ!分かったぜ」
しかし、そのとき、二人は技を決められなかった。かなり強い力で吹き飛ばされる。なんなんだ一体。さすがに風のあいつの仕業ではないだろう。攻撃はしてないが、向こうは覚醒に怖気づいていたからだ。さすがに強すぎると悟ったのだ。だとしたら考えられるのは、別のエスパーということになる。これだけの力なら幹部か!?
「我の名は八幹部の二部、雷の使、ライラーダ」
このレベルのエスパー二人を同時に相手になんかしていたら、こちらがやられるのは必然的だ。四人じゃとても勝てない。けど、それでも戦うことは、できる。勝てないと分かっていても、戦えないわけではない。むしろ、闘志を燃やす。その答えを覆すのも面白いからだ。
「よし!皆でまずは、風野郎の方をやるぞ!」
全員がフーリュウに向かっていく。四対一なら、勝ち目はあるはずだ。闘也と秋人は、空から攻めた。
「そうはさせん!」
突然、それが雲に覆われる。すぐに、雷鳴が響き、闘也と秋人に落雷した。覚醒状態が解け、ほとんど意識を失いかけた。閉じそうな目には、二つの色の人が映った。もしかして、的射と由利だろうか。
的射と由利は覚醒していた。的射は薄桃色を纏い、由利は白に包まれていた。
「私の仲間を、傷つけさせはしない!」
「本番は、ここからよ!」
「このままでくたばるかってんだ!」
秋人が復活する。俺も力にならなければ、と闘也は思った。初めて覚醒したとき、皆にだけ戦わせて、自分だけが休んだ。悔しかった。ただその思いだけが、眠りにつくまでにずっとあった。今は、俺が休んだら、絶対に負ける。少しでも俺が皆を支える力とならなければならない。
「やるぞぉぉぉぉ!!!」
「おおおーーーー!!!」
全員のやる気が格段に上がった気がした。いつだって、俺は仲間と共に戦ってきた。たぶん、これからもそうだ。失うのはごめんだ。例え失うことになっても、それは受け止めなければならない。
「炎神ファライランの名の下、悪しき者には恐怖の烈火となり、善しき者には夜道を照らす灯火となる炎を、今ここに呼び覚ます!」
闘也は、ファーガと戦った時のようなすさまじい炎を呼び覚ました。
「風神フローラの住みしこの空より、全てを巻き込み、全てを吹き飛ばす暴風を、今ここに呼び覚ます!」
秋人は、いつも以上の巨大な竜巻を巻き起こし、フーリュウを囲んだ。
「水神ティウォーリの作り出される、清き者には命の水を、汚れし者には、全てを飲み込む濁流を、今ここに呼び覚ます!」
フーリュウの周りに、細い水の線が現れたかと思ったとき、その細い線は太くなって、濁流に変わった。由利が、「それなら私は」と言って、さらに続けた。
「土神ドーリアが固めし大地より、土を、岩を、草を、木を、一つの巨大な塊とし、今ここに呼び覚ます!」
一つの球体が現れた。その中には、草やら岩やらがかなりの量が入っている。闘也は、今だ!と叫んだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
全員が、その力を最大まで高めた。四つの力が一つとなる。
「ぬわぁぁぁぁぁ・・・・・・」
フーリュウはそれによって消え去った。これなら、覆せる。勝てないと思われたこの戦況を一気にこちらの流れとしてひっくり返した。あとは、ライラーダを片付けるだけだ。
「よし、皆!このまま、やつも倒すぞ!続け!」
「おおぉぉっ!」