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未来少年  作者: 織間リオ
第二章【サイコストの覚醒】
10/30

10、警告

 サイコスト協会からの強制招集がかかった。内容は見当がつかない。闘也達だけが呼ばれたのか、他のサイコストも呼ばれているのか。たぶんそれだけで、聞かれることや、対処の仕方はだいぶ違うはずだ。もし闘也達だけなら、戦闘のことや、戦争が始まってから何をしているか、などだ。なにしろ闘也達は協会が開いた戦闘強化訓練を受けていないし、女子供だからと、かくまわれたわけでもないのだ。ただ独断で行動し、戦いを繰り広げているのだ。

 サイコスト協会炎天支部に到着。毎月来ていたから、なんの躊躇もなく入る。受付に、強制招集があったからと聞くと、

「それでは、支部長室にお入りください。支部長がお待ちです」

分かりました、と返事をして、五人は協会の奥の方にある支部長室に向かった。地下とはいえ、それなりの広さだ。分かりましたと返事はしたが、場所は全く知らなかったから、少しスピードを落として、乱州や秋人に先を歩かせた。

 しばらく(といっても一分たらずだが)進むと支部長室が見えた。スピードを戻して先頭になる。ドアをノックし、入る。

「失礼します」

五人はぞろぞろと支部長室に入った。

報告室よりずっと広い部屋だ。入って左側に支部長の席、入って正面にお客と話をするためであろう長いソファが四つ置かれていた。

「おお、待っていたよ。私が支部長の斉藤正義さいとう まさよしだ。知っているとは思うが、これからよろしく」

知らなかった。少なくとも闘也は知らなかった。

「今回お呼びしたのは・・・・・・あ、どうぞ、座りたまえ」

ちょっと癇に障った。支部長だからといって、闘也達が子供だからといって、上から目線はやめてほしい。気に障る。もう十分障ってるが。

「今回お呼びしたのは、君達の行動についてだが」

「すいません、一ついいですか」

話始めようとした正義に闘也は口を挟む。正義はそれに応対した。

「構わない。言ってごらんなさい」

また上から目線。ごらんなさいなんて上から目線の王道だ。

「呼ばれたのは俺達だけなんですか?」

「ああ。君達に用があって呼んだんだ」

「そうですか。話を続けてください」

「君達の行動について、聞きたいと思っているのだ。では、最初の質問だ。君達は、戦争が始まってから何をしている?といっても、まだ二日目なのだが」

ほら来た。戦争が始まってから何をしているか。もちろん、戦っている。だれに指示されたわけでなく、誰かの指導を受けたわけでもない。

「俺達は、この戦争が始まってからは、ずっと戦っています」

単刀直入に言う。正義は驚きはしていなかった。

「なるほど。数時間前に、偵察に出していたサイコスト兵から、サイコストの子供がエスパーと戦っているという報せがあってな。詳しい情報を聞くと、君達だったわけだ」

なるほど。偵察が気づかれにくく、数時間前ということは、山の頂上で戦っているとこだろうな。

「君達は子供なんだから、戦いはこちらの兵に任せて、君達は、戦わなくていいんだ。家族も心配してるだろうし、あとは、サイコストの兵に・・・・・・」

「家族がいないなら戦ってもいいんですね」

闘也はそう聞いた。心配される家族がいなければ、戦ってもいいということになる。矛盾はしていない。逆に、それでも戦うなと言われれば、そっちの方が矛盾している。

「そんなことを口にするということは、君は家族がいないのかね?」

「母は、エスパーの幹部に殺されました」

「そうだ。戦えばそのように大切な人を失うことになる。今は生きてても、いずれは失いかねないのだ」

「その覚悟の上で、俺は戦っているんです」

「俺もできてます」

「私もできています」

「俺もです」

「私も覚悟はあります」

一人一人が、それぞれの覚悟を述べる。そうだ。戦いとは、中途半端な覚悟でやってはいけない。自分の大切な物、人、そして、自分の命を懸けて戦わなければならない。中途半端な覚悟で戦った者は、その者の大切なものを失う。断言できる。そして、そうなってしまったときの悲しみから立ち直れない。覚悟があれば、例え崩れてしまっても、また立ち上がることができる。

「そうか。では、次の、質問というよりは、私の意見かな。君達は、戦闘できるほどの能力を持っているのかね?」

それって質問じゃないか。それとも、その答えに意見するのか。

「はい。俺達は全員、戦闘に役立つ能力はあります。俺はソウルがあります」

「俺は、身体ボディーの能力があります」

「私も射撃ショットがあります」

高速スピードの能力です」

「私は属性タイプの能力を持っています」

「なるほど。確かに、その能力があれば、エスパーと対等に戦えるだろう。だが、一つ言わせてほしい。えー・・・・・・と、闘也君だな」

「はい」

「君は、たぶん、そう長くは戦えない、いや、戦っても負けるかもしれない」

衝撃の一言だった。四人をまとめている闘也が負けるのは考えられないと誰もが思っていたからだ。

「君のソウルの能力は、君の感情によって、その能力が左右される。つまり君は、全力で戦うためには、いつも、感情をむきだしにした状態で戦うことになる。怒りの感情で戦うことは、敗戦につながる可能性が極めて高いのだよ」

そこで、でも、と由利が反論した。

「闘也は先ほど、覚醒したんですよ。覚醒すれば、いつでも全力を出して戦えるんじゃないですか」

「なに!?覚醒しただと!君はそれほどの実力を持っていたのかね!」

なぜか、さっきまでと態度がまるで違う。闘也達は心中、呆れ気味になるほどの驚きようだ。

「すばらしいじゃないか。どうだ、うちの特殊部隊に入らないかね。君のような人材は、部隊の励みにもなるし、戦力も増大する」

「いいえ、結構です。丁重にお断りさせていただきます」

そうか、と正義は息をついた。

「基本的には、俺達は独断で戦闘をさせてもらいます。ですが、俺達もサイコストですから、もしものときは、協力体制をとらせてもらいます」

「ありがとう。恩に着る。では、もう疲れただろう。帰っても結構だよ」

失礼しましたといって、五人は支部長室から出て行った。

「覚醒か・・・・・・」

正義は、静かに息をはいた。


 協会をあとにした五人はちょっと話をするため、あの会議場に向かった。闘也が作った地下室。そこに五人は集まった。

「あの爺さんさぁ、(七十くらいだった)ものすごい覚醒に興味津々だったよな」

乱州がちょっと明るめに言った。確かに、覚醒の話になった途端、雰囲気といい態度といい、ガラリとかえて、部隊に入ってくれだの、励みになるだの言い出してきた。

「確かに変だったよな」

秋人が相槌を打つ。そろそろ、本題に入るか。

「八幹部のやつらのうち、四人を倒した。残りの四人は強力なエスパーだから注意しておこう」

「そいつらを倒すとなると、五人で協力して、倒さないといけないと思うんだけど」

「ああ、そうだな。じゃ、これから気をつけるように」

りょうかーいという声が響いた。今夜はここで寝ることにした。


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