どんな人が好き
その夜、仁さんが日本酒のお店に連れて行ってくれた。
「仁さんは日本酒がお好きなんですね。」
俺がテーブル席に腰かけながら言うと、
「まあ、日本酒が好きというより、日本酒に合うつまみが好きなんだよ。」
と、仁さんがやはり座りながら言った。
「そうなんですか?焼き魚とか、おでんとか?」
「そうそう。お刺身とか、和食全般だな。」
仁さんがメニューを見ながら言った。そして、刺身の盛り合わせやら煮込み料理やら焼き鳥やらを注文した。
お猪口に酒を互いに注ぎ合い、乾杯をした。“最初から日本酒”というのはほとんど経験がなかったが、空きっ腹で飲む日本酒は、甘くて辛くてカーッと体に熱を伝えた。今日は対面で座っているので、仁さんの顔が見えて幸せだ。ずっと見ていられる顔というのはこれだ。まさにこれだ。
「仁さんって、どんな人が好みなんですか?……あ、これはセクハラじゃないですよね?」
この会が何だったのかを俄かに思い出した。セクハラごめんねの会だった。
「あはは、今は仕事じゃないからいいんじゃないか?えーと、好みのタイプ?そうだな。仕事が出来て、図体でかいけど、からかうと真っ赤になる人、かな。」
仁さんは横を向いてそんな風に言った。ん?仕事はともかく、でかくて、からかうと真っ赤になる……って、俺じゃないか?
「あ、仁さん、からかわないでくださいよー。」
俺が苦情を申し立てると、仁さんは声を立てて笑った。
「じゃあ、成海の好みのタイプは?」
逆に聞かれた。
「えーと、かっこよくて、明るくて……」
俺が考えながら言うと、まだ言い終わらない内に仁さんが、
「俺たち、付き合う?」
と言った。ハッとして仁さんの顔を見る。仁さんはじっとこちらを見っている。
「またですか?」
思わず言うと、
「え?前にも言った?」
仁さんは驚いた顔をした。そうだった、言った事を仁さんは忘れていたのだった。
「あ、はい。言いました。前に飲みに行ってカラオケに行った帰りに。」
「あちゃー、ごめん。覚えてないや。」
「また忘れちゃうんですよね?」
これも思わず言ってしまった。
「まだ酔ってないから忘れないよ。そうだ、証拠を残しておこう。」
仁さんはそう言うと、スマホを取り出した。何やら打ち込んでいる。すると、俺のスマホがブブっと震えた。仁さんが俺の顔を見る。俺に送ったのか?
スマホを見ると、仁さんからLINEが来ていた。中身は、
『俺たち、恋人同士になろう』
と、書いてあった。俺も、
『はい』
と打ち込んで送った。
お店を出る時に、
「今度、一緒に三崎口に行きませんか?マグロの刺身を食べに。」
と、思い切って誘ってみた。
「よし、それじゃあ次の週末は?」
「はい!」
デートの約束を取り付けた。




