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イケメン上司とボク  作者: 夏目 碧央


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2/15

居酒屋でフラフラ~からの「俺たち付き合わない?」

 会社近くの居酒屋に入った。

「お疲れ~。」

「お疲れさまっす。」

カチンと杯を合わせた俺と仁さん。仁さんはお猪口で、俺はジョッキだが。俺たちはカウンター席の端に並んで座った。仁さんはひたすら日本酒を飲んだ。俺は最初生ビールを飲んだのだが、その後はお猪口をもう1つもらって仁さんと同じ日本酒を飲んだ。

「いやー、飲み屋に来るのも久しぶりだな。」

仁さんが言う。

「そうなんすか?」

「昔は金曜日と言ったら必ず飲み会だったけどな。あの感染爆発の後はパッタリで。」

仁さんは手酌で日本酒を自分のお猪口に注ぎ、まだ少し酒が入っている俺のお猪口にも注いだ。

「あ、すんません。」

「感染が落ち着いてきたらさ、今度は“若者は会社の飲み会なんて出たくない、上司と飲みに行きたくない”なんていう報道が増えちゃって。気軽に誘えなくなっちゃったんだよ。」

仁さんはそう言って、酒を口に運んだ。

「あー、そうっすね。」

俺も相槌を打ち、酒を飲む。

「だからさ、年下の成海から誘ってくれて嬉しかったんだよ、俺は。」

仁さんはそう言うと、片手で俺の肩をポンと叩いた。そうなのか、喜んでもらえて良かった。

 仁さんは、日本酒ばっかり飲むから強いのかと思ったら、どうやらそうでもないらしい。だんだん姿勢を保てなくなってぐにゃぐにゃしだし、あまり呂律が回っていない状態に。

「そろそろシメを頼みます?」

俺がそう言うと、

「俺焼きおにぎり!」

と、仁さんが手を挙げて行った。なんか可愛いぞ。

 焼きおにぎりを食べ、店を出た。仁さんがスマホ決済で支払ってくれたので、半額を現金で渡そうとすると、仁さんはいらん、いらんと言って受け取らなかった。だが……。

「まだ帰りたくな~い。」

フラフラと歩きながら、仁さんがそんな事を言う。そして俺を振り返る。赤い顔をして。

「えーと、じゃあカラオケにでも行きますか?」

仁さんの赤らんだ顔を見たら落ち着かなくなって、とりあえず言ってみた。

「よし!カラオケに行こう!」

仁さんがこぶしを振り上げて言った。あまりにフラフラしているので、想わず肩を貸した。こんなに幸せな事があるだろうか。


 カラオケルームに入った。二人だから当然だが、とても狭い部屋に案内された。こんなところに二人きりだなんて、いいのだろうか。

「よし、歌うぞ~。」

仁さんはちゃんと器械を操作し、曲を入れて歌った。俺たちは酔っているので、またもやウーロン茶ではなくウーロン杯などとアルコールを摂取してしまった。

 1曲歌うと、仁さんはネクタイをぐいぐいっと緩めた。その仕草に思わずドキッ!こんな間近でそういう仕草を見たのは初めてだ。

「何?お前は歌わないのか?」

じっと見ていたら不審がられた、かも?

 2時間ほどでカラオケルームを出た。駅へと向かう。仁さんはやっぱりフラフラしているので、肩を組んでゆっくり歩いた。

「あ、仁さん地下鉄ですか?」

「ああ、そうだよ。」

「じゃあ、ここでお別れですね。」

俺はJRを利用するので、もう少し先の駅へ行く必要があった。だが、こんなフラフラな人を独りにして大丈夫だろうか。

「あの、送って行きましょうか?」

俺が言うと、仁さんは俺の肩から腕を放し、数歩前へ出て振り返った。

「大丈夫だよ。独りで帰れるから。」

「そうですか、それじゃあ……」

「なあ、俺たち付き合わない?」

「……え?」

俺は耳を疑った。

「ダメ?」

更に仁さんが言う。少し首を傾げ、俺の顔をじっと見ている。

「い、いえ、付き合いたいです!」

顔を横にフリフリ、俺は答えた。すると仁さんはニコッと笑い、

「そっか。じゃ、また来週!」

そう言ってくるりと背を向け、片手を上に上げてバイバイしながら地下鉄の階段へと歩いて行った。そのまま見守っていると、ちゃんと階段をスタスタと降りて行ったので、俺もホッとして歩き出した。そして徐々に感動が押し寄せる。

 仁さんと俺が?付き合う?いやいや、冗談か?それとも夢か?顔がにやけるのを止められないまま、俺は天にも昇る思いで帰宅した。


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