表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

第5話 もう一人の少女



夜の森を、カナは走っていた。

雨の匂いと焦げた土の臭いが混じる。背後では、追跡用の光が空を切る。


「カナ、こっちだ!」

セフィが淡い光を放ち、進むべき道を照らす。

しかしその声は、どこか不安げだった。


息を整えようとした瞬間――頭の奥に、誰かの声が流れ込んできた。


> ……たすけて。

ここは、暗い。冷たい。

……わたしを、閉じこめないで。




「え……だれ……?」

カナは立ち止まり、頭を押さえる。

視界が歪み、知らない映像が流れた。


金属の壁、拘束具、そして――鏡の中にいる“もう一人の自分”。

その少女は、涙を流していた。


> “わたしの名前は……リース。

あなたと同じ顔をした、もう一人の――カナ。”




カナの瞳が大きく見開かれた。

セフィの光が一瞬、強く明滅する。


「リース……? 同じ、顔……?」


> “お願い……もう、私みたいな子を作らないで。

もう、閉じ込めないで――!”




その悲痛な声と同時に、カナの胸の奥で何かが弾けた。

周囲の空気が震え、足元の地面が青白く光り出す。


セフィが震える声で告げた。

「……カナ、抑えきれない! “マイナス値”が、臨界に達してる!」


「リース……あなたの痛み、感じるよ……。

 だったら、私が――壊す!」


カナの手から光が迸り、世界の“測定値”を制御していた装置群が次々と崩壊していく。

数値の鎖が解け、無数のデータが空へと舞い上がった。


嵐の中心で、カナの髪が風に舞う。

その瞳の奥に、リースの姿が微かに重なる。


> “ありがとう、カナ……次は、自由に生きて――”




声が消えた瞬間、雨がやんだ。

静寂の中で、セフィがぽつりと呟く。


「……運命の“測定”が、変わり始めた」


カナはゆっくりと空を見上げた。

その手のひらには、プラスもマイナスもない“無限の記号”が刻まれていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ