目覚めた測定器(セフィ)
白い光が消えたとき、
私の目の前に、何かが浮かんでいた。
――黒い立方体。
測定装置の中枢部だったはずのその“核”が、宙に浮いている。
表面が微かに脈打ち、まるで心臓のように鼓動していた。
「……あなたは、だれ?」
“それ”は一瞬沈黙した後、淡い光を放った。
「識別――完了。対象、カナ・リース。あなたの測定結果を訂正します」
「訂正……?」
次の瞬間、黒い立方体は形を変え始めた。
光の粒が弾け、金属が音を立てて組み換わる。
――そして、目の前に現れたのは、掌ほどの小さなぬいぐるみのような生き物。
大きな瞳に、光の耳、羽根のようなコードを背に纏っていた。
「こんにちは。私はセフィ。君の“測定器”だよ」
「……しゃ、喋った!?」
「驚かないで。君のレベルは“∞”――つまり、システムの外側にいる。だから、私も自由になれた」
――自由? 測定器が?
「君はね、封印されていたんだ。『王家協会』が定めた“神域レベル”の規制対象。
本来、マイナス999は“存在を抹消された値”。君の力は、神々の数値を超えている」
セフィの声は穏やかだったが、その内容はあまりにも現実離れしていた。
「君を放っておけば、この世界の“秩序”は崩壊する。だから――彼らは、君を追う」
「……“彼ら”?」
セフィの瞳が、夜空のように深く光った。
「王家協会。神に代わり、この世界を管理する者たち。
すでに君の再測定を感知して、こちらに向かっている――」
その瞬間、隔離区画の外で警報が鳴り響いた。
扉が爆ぜ、黒衣の兵士たちが雪崩れ込んでくる。
セフィが叫ぶ。
「走って! カナ!」
私は息を呑み、
初めて、自分の運命から逃げ出した。




