【3】(過去1)
自分が周りと違うことに気づいたのは小学校に入学してすぐ。
あの頃の母は口を開けば「金がかかって最悪」だと言っていた。
だからみんなそういう認識だと思っていたのに、入学式に行くとそこはキラキラしていて、楽しそうで、想像していた場所と違うなと思った。
ただそんな場所でも俺は他の家族のように写真を撮ることもなく、誰かと喋るわけでもなく、終始どうでもいいという顔をする母の横顔を見上げながらすぐに家に帰ったのを覚えている。
そして次第に同級生にも俺は普通と違うと認識されるようになり、孤立するようになっていった。
放課後は毎日図書室で過ごしていたが、下校時刻を過ぎると学校を出なくちゃいけない。
だけどまっすぐ家に帰りたくなかった俺は、隣の学区内にある大きな公園で時間を潰すことが多かった。知っている人と会わないこの場所は落ち着いて息が出来る場所の一つ。
それに図書室の先生から聞いた話によると、この公園の近くにある大学は給付型の奨学金というのがあるらしい。
お金を返さなくていいなんてそんな夢みたいな話が本当にあるのだろうか。それを使えば経済的に難しい子でも大学に通えると言っていたが正直半信半疑だった。
勉強に明け暮れていたせいもあり、成績はクラスで一二を争うくらいよかった。
「あんな家の子なのに」とそのせいで言われる陰口の種類も増えていたが、家で聞かされる暴言に比べればそれくらいどうってことない。
それに上級生になった頃には聞き流すのもうまくなっていた。
反論したい気持ちはグッと抑え込む。
嵐が過ぎるのを待つように、我慢していればいいのだ。ただそれだけ。心を凪にしたまま俺はただ我慢する。そうすれば上手くいく。
公園のベンチに座り大学生が通っていくのを見て、自分もこうなるんだと言い聞かせていた。
教科書や、先生が持ってきてくれた中学生レベルの参考書を読んで、ただ日が暮れるのを待つそんな毎日。
ただあまりにも天気がよかったあの日、俺はぼんやりと公園にいる人を眺めていた。
******
半袖が寒く感じる頃になると日が暮れるのが早くなる。
そろそろ帰らなくちゃといけないが、中々重い腰が上がらない俺の目にとぼとぼ歩いてくる小さな子どもが留まった。
重たい足取りでやってきたその子は、汚れた鞄から中身を取り出すと水飲み場の蛇口をひねり鞄を洗い始める。
どこかに落としたのだろうか。
なんとなく動作を目で追っていると、三人組の子どもたちが公園に入ってきた。
その子たちは鞄を洗っている子を見つけると駆け寄っていく。あっという間に1人がその子を突き飛ばし、もう一人が鞄をとりあげ地面に放った。そしてもう一人がそれを踏みつけ、三人で耳馴染みの悪い笑い声をあげる。
「こいつまた泣きそうじゃん」
「女みたいな顔しているし本当に女なんじゃねぇの」
「すぐ泣くなんてダセェの」
思わず眉間に皺が寄った。
俺はあの子のことを知らないし、もちろん揶揄っている奴らも知らない。何のかかわりもない赤の他人なのに、むしょうに腹が立ってじりじりと胸が焼ける。
昨日珍しく帰ってきた母親に暴言を吐かれたばかりだったからかもしれない。何も言い返せず震える子に昨日の自分が重なった。
当事者のときは何も感じないでいられるのに、他人事だと思うからこそ腹の底から怒りが湧き上がってくるのか。
いや、これが偽善か。
この原動力がどこからくるものなのか定かじゃないが、そんなことどうでもいい。居ても立っても居られなくなった俺は腰を上げていた。
「あのさぁ」
小学生の頃は同級生の中でも背が高い方だった。
何度も鞄を踏みつける子たちに向かってそう声を張り上げると、三人組はピタッと動きを止める。その子たちの前まで近づき彼らを見下ろすと「な、なんだよ」と言われた。
「すぐ泣くと女なの?」
「この人誰」
「知らない」
「俺も」
「……いいから答えろって」
仲間内で話し出した三人に、不機嫌さを取り繕うことなく言うと彼らは目に見えてひるんだ。まだ低学年くらいだろうか。親や同級生には言えないくせに年下には強気に出るってどうなんだ。妙に冷静な自分が心の中で俺のことを嘲笑する。
けどここまできてやめるわけにいかない。
「っていうかお前たちがしていることに、女とか男とか関係ないだろ。それが相手の嫌がることをしていい理由にならないって分からねぇのかよ!」
分が悪いと思ったのだろう。
逃げ出そうとした三人のうち、左右の手で近くにいた二人の腕を掴む。ぎゅっと力を込めると「いたい」と言われた。もう一人の子も捕まった二人を見て足を止める。
「言い返さない……やり返さない方が弱いと思うな!」
そうか。俺こんな風に怒れるんだ。
自分でも出したことのない大声に自分が一番驚いている。
「はなしてっ」
「お前たちのほうがよっぽど弱いからな」
「こいつが、なよなよしてるから悪いんじゃん。俺たちのほうが強いに決まってるし」
「いや、弱い」
もう一度きっぱりと言い放つと、いじめっ子たちの勢いは目に見えてなくなっていった。
「恥ずかしいことをしているって自覚しろ!誰かをいじめて優位に立とうとするな」
誰かにちゃんと怒ったことも、自分の気持ちを正直に口にしたこともなかった。だからちゃんと伝わっているのかも分からない。分からないから、言葉を重ねてとにかく伝えることを優先した。
「いいか?別に俺は仲良くしろなんて言ってないから。ただ、こいつがお前たちに関わってほしいって言ったか?言ってないよな?だったらお前たちもこいつに関わるなよ。自分がやられて嫌なことはするな。……分かったな」
凄みを利かせた声で言うと、三人は口々に「分かった」と返事をした。一応伝わったらしい。パッと手を離してやると、三人は逃げるように公園を出て行った。
言いたいことを言ってすっきりした。
が、残されている子のことを思い出してごくりと唾をのむ。この子と彼らの関係性も知らないのに、俺のしたことは余計なお世話だったかもしれない。
俯いたまま黙っている子の横を通りすぎる。
自分の中にこんなに正義感があるとは知らなった。いや、これは正義感なんていいものじゃないか。心の奥底に閉じ込めていた感情が爆発しただけ。
地面に落ちたままの鞄を拾い上げ汚れを払っているとようやく少年は顔をあげた。
男の子、なんだよな?
たしかにあいつらが言っていたように、女の子と言われても分からないほど可愛い顔をしている。俺を見上げたその子は下唇を噛んだあとゆっくりと口を開いた。
「よ、けいなことしないで」
まつ毛が小刻みに揺れている。上擦った声でそう言われてやっぱり余計なお世話だったかと反省した。
「ごめんな」
「助けてもらわなくても、俺、よわくないから。ひとりで、だいじょうぶなのに」
「そっか。お前強いんだな……弱いなんて思ってないよ。余計なことしてごめん」
言いたいことも分かる。すぐ謝ると男の子は何か言いたげに口を開いたが、言葉が出てこないのかそのまま眉間に皺を寄せた。やってしまった以上どうにもできない。「ごめんな」ともう一度謝りながら鞄を渡して公園を出る。
自ら人に関わることなんてないのに、身体を震わせながら必死に耐えるあの子を自分と重ねて、気づいたら柄にもないことをしていた。
あの子は自分と違う。
そんな当たり前なことが頭から抜け落ちていた。
どの口が「弱い」なんて言ったんだろう。
どう考えても一番弱いのは俺だ。あいつらに言ったことを一番言いたい相手には言えないんだから。
とぼとぼと家に帰るとまだ母親はいなかった。
この時間なら帰っていてもおかしくないが、きっともう新しい“彼氏”でも出来たんだろう。
一昨日の夜に口を開けた8本入りのパン袋から一つ取り出し咀嚼する。
碌なものを食べていないのに背だけ伸びたのは見たこともない父親の影響か。それとも余った給食を全部平らげてくるからだろうか。
慣れないことをしてなんだか疲れた。早々にパンを食べた俺は、敷きっぱなしの布団の上で膝を抱えて横になった。
次の日、いつも通り公園のベンチに座っていると突然小さな子が駆け寄ってきた。
近づいてきた顔を見て昨日の子だと気づく。俺の目の前で止まったその子はおもむろに腕を突き出してきた。
「何?」
「ん」
差し出すようにもう一度グッと腕を突き出される。
その拳の中に何か見えたから、手の平を上に向けて出すとその子はパッと拳を開いた。ころころと丸い包みが3つ手の平に転がり落ちる。
これは、チョコレート?
「……ちゃんとお礼言ってなかった」
「お礼?」
「頼んでないけど……でも、助けてくれてありがとう」
あぁ。それで、と手の平に乗るチョコレートを見て笑った。
「気にしなくていいのに。お前の言う通り余計なお世話だっただろ」
そう言うとその子は一瞬躊躇った後大きく首を横に振る。
「ちがう。……本当は、自分じゃどうしたらいいかわかんなかった。いくら考えても。全然……全然わかんなかった」
「俺のしたことは迷惑じゃなかったってこと?」
問いかけると、今度はこくんと首を縦に振る。
「本当はあいつらに言い返したいのに。目の前に来ると喋れなくなっちゃう。悔しいのに。泣きたくないのに。なんか勝手に涙出ちゃうし、だから助けてもらったときも、自分が出来ないことをあっさりとされたことが、悔しくて」
男の子は一度ギュッと唇を噛んで俺の目を見つめてきた。不安気に瞳は揺れているがそれでも力強い意志を感じる。
「意地悪なこと言って……ごめんなさい」
意地悪なことなんて言われた覚えもない。
真意はどうであれ、昨日言われたことは彼にとって正当な意見だったはずだ。自ら反省し言葉で伝えてくれるこの子の素直さは俺も見習うべきだろう。俺よりよっぽど自分の気持ちを言葉に出来るこの子がなんだか急に可愛く見えてきた。
「謝らなくていいって。それよりこっち座る?」
男の子は素直に俺の隣に腰を下ろした。いじめっ子に言い返せないと言う割には、年上の俺に対して物怖じすることもない。まだ低学年くらいに見えるが本当にしっかりしている。
「今日は大丈夫だったか?」
「うん。なんにもされなかった」
「良かった。……でも偉いな。この状況を変えたいって、ちゃんと考えていたんだ」
「考えるだけじゃダメだもん。俺一人じゃどうにも出来なかったし」
拗ねたように頬を膨らませる子が可愛くて口元が緩む。くしゃくしゃと頭を撫でて、もらったチョコレートの一粒を差し出した。
「それでも諦めないで考え続けたんだから偉いよ。ほらそんな顔すんなって。一緒に食べよう」
「せっかくあげたからダメだよ」
「お前のおやつじゃないのか?」
「朝哉。俺の名前お前じゃない」
「そっか。そういえば名前言ってなかったな。俺は蓮」
「蓮」
至極当然というように名前を呼んでくる朝哉に思わず笑ってしまった。
「ははっ、呼び捨てか」
「嫌?」
「いや、慣れないだけだよ。嫌じゃない」
「……じゃあ蓮くん」
「いいのに。……ほら朝哉、口開けて」
朝哉は受け取らないくせにちらちらとチョコレートを見る。
本当は食べたいくせに可愛いやつだ。包み紙を開けて丸いチョコレートを朝哉の口元へもっていくと、素直に口を開いた。そこにチョコレートをぽんと放り込んでから、もう一つの包み紙を開けて自分の口に入れる。
口の熱で溶けていくチョコレート。一瞬独特の苦味を感じたがそれを上回る甘みが口いっぱいに広がり、幸せの余韻が長く続く。
ああ、美味しい。チョコレートってこんなにおいしかったっけ。
「蓮くんチョコ好きなの?」
「あ、……あぁ。まぁ」
最後に食べたのがいつか思い出せないくらい、久しぶりに食べるチョコレートの美味しさを堪能しているとそう聞かれた。
急に恥ずかしくなって曖昧に答えると朝哉はふわりと笑う。
「ふぅん。良かった」
「おやつ分けてくれてありがとな」
「いいの。これはお詫びだもん。竜に怒られたから……」
「お詫び?」
「うん。蓮くんに意地悪言っちゃったこと話したら怒られた。だからちゃんとけじめつけなくちゃいけないから、これはそのお詫び。口うるさいし怒ると怖いけど、竜は俺の家族だから言うこと聞いてあげるの」
「その人のこと好きなんだな」
「うん。まぁね」
兄弟の話でもしているのかと思って「いいお兄さんがいて羨ましいよ」と言うと、「竜はお兄ちゃんじゃないよ?」と朝哉は不思議そうな顔で首を横に振った。その意味が理解できないでいると、朝哉は少し考え込み「ちょっと待っていて」と言って公園の外に走っていく。
そして大学生くらいの男の人の腕を引っ張って戻ってきた。
「蓮くん。これが竜」
「人のことをこれとか言うな」
「いたいっ」
一切躊躇わずげんこつを落とされた朝哉が頭を押さえている。竜と呼ばれた男はそんな朝哉を放っておいて俺に顔を近づけてきた。
いつもこの公園を通る大学生を見ているが、その中でもこの人は綺麗なほうだと思う。綺麗な顔なのに一瞬ビクッとしたのは、どことなく母親が連れてくる男たちと雰囲気が似ているせいだ。母親が連れてくる男以外に大人の男と関わることはほとんどないから、余計にどうしたらいいか分からなくて咄嗟に目を逸らしてしまう。
「……昨日こいつのこと助けてくれてありがとうな」
ただ、かけられた言葉は思っていたよりも温かみがあって、おずおずと顔をあげた。
眼光は鋭いが、自分に向けられるのは攻撃的な気配ではない。そう思ったら怖いかもと思っていた感情が引いていく。
「助けた、とかそんなつもりはなくて。ただ自分と重ねただけっていうか」
「……そうか」
あまり考えず出た言葉だったがこの人は特に追及してこなかった。同情するような気配もなく小さく笑うだけ。見かけによらず優しいのかもしれない。
「こいつは生意気なガキだが、俺は俺で手出しが出来る立場じゃねぇから礼を言う。あと昨日こいつが言ったことはしっかり反省させたから許してやってほしい」
「許すも何も、余計なお世話だった自覚はあるんで……それにおやつも貰っちゃいましたし」
残っていたチョコレートを見せると竜さんは少しだけ口角を上げた。二人のやり取りを見ていた朝哉が俺の手を握る。
「竜はね、俺の事すぐ生意気って言うし偉そうだけど。でもお父さんには逆らえないんだよ」
「もう一度いるか?」
拳を作って脅す竜さんを見て朝哉がサッと俺の後ろに隠れた。それが面白くて思わず吹き出してしまう。自然と笑いが込み上げるなんて今までなかったのに。竜さんの独特の雰囲気と口調。そして年上をあっさり呼び捨てにする朝哉。兄弟じゃないのに家族と言う関係性は図書室で読んだ小説の設定と似ていた。
べっと竜に向かい舌を出す朝哉を見て笑いながら「なんだか極道の世界みたいですね」と冗談めかして言うと、竜さんが呆気にとられた顔をする。すぐにこめかみをぴくぴくと動かし、素早く俺の後ろに隠れている朝哉を捕まえた。
「おい、ちゃんと説明しないで俺を連れてきたのか?」
「あ。してない」
「この馬鹿。……はぁ。それじゃ、突然俺みたいなのが来て怖かっただろう」
冗談のつもりだったのに。
それにあの人の前の彼氏は「なんとか組の誰かの舎弟」とか言っていたし、初めて関わるわけじゃないから本当に怖くはないんだけど。
困らせてしまった。
溜息を吐きながら頭を掻く竜さんに今さらなんて訂正すればいいか分からない。けど、せっかく優しくしてくれたからなんとか気持ちを伝えようと頭で考えるより先に言葉が口から出ていく。
「あ、あの。本当に怖くは、ないです。俺、極道の人に会うの初めてじゃないから。あの人の、いや、母親の……前の、彼氏がそういう人で、でも竜さんは、その人よりも優しそうだし。……ほんの少しびっくりしただけで」
指でほんの少しと示しながらそう言うと竜さんはぐしゃぐしゃと俺の髪を混ぜた。
「そうか。お前度胸もあるしいい子だな。その通りだよ。俺たちはそういう世界にいる」
「えっ……じゃなんで朝哉がいじめられていたんですか」
「家のことは基本的に吹聴しないからな。それに助けを求めるなり、報復するなり、自分のことは、自分で考えて決めることを親父さんは求めている」
「あっ、それなのに俺……やっぱり勝手なことを」
「いや。いいんだ。それはあくまで俺達身内の話だから。そのおかげでこいつは自分の弱さと向き合えたし」
「だから俺弱くねぇもん」
頬を膨らませた朝哉を無視して竜さんは続ける。
「蓮だっけ?俺は竜だ。こいつのお目付け役ってところ」
「あぁ。……だから兄弟じゃないけど、家族なんですね」
「家族?」
「朝哉が言っていましたよ?怖いけど家族だから竜さんのこと好きだって」
竜さんの動きが一瞬止まる。
なにか気に障ったことを言ってしまったのだろうか?
一重の目を大きく見開いた後、何故か大きなため息を吐いた。
「……そうか。なぁ蓮」
「はい?」
「ありがとな」
あれ?不機嫌ではない?
なんで感謝されたのか分からないがとりあえず頷くとまた頭を撫でられた。無骨な手だけど、こんな風に誰かに撫でられたのは初めてでむず痒い気持ちになる。
それから俺がこの公園に毎日来ていると知ると、朝哉も毎日来るようになった。
竜さんはいつも見守っているようだけど、俺たちから呼ばない限り姿を見せることはない。大人だから、俺が普通と違うことに気づいているはずなのに何も言わなかったし、そういう目で見られたことも一度もなかった。やっぱり優しい人だ。
どこにも居場所がなかった。
別に直接いじめられていたわけではないがまるで腫れもののように扱われる。遠巻きに陰口を言われ、笑われ、可哀想だと決めつけられる。人の目線が気になるようになって、みんなが俺のことを何か言っているんじゃないかと、そんな風に思うようになっていた。
だから人と関わろうとしなかった。
友達を作ろうなんて思わなかった。
だけど朝哉といるときだけは違う。
朝哉は俺の親のことも知らないし、学校で俺がどういう立場でいるのかも知らない。
自分に懐いてくれて、慕ってくれて、心が砕けそうになっても朝哉に「蓮くん」と呼ばれるだけで自分の存在を認めてもらえたような気がした。
ちゃんとこの世界で生きていると感じられた。
可愛くてたまらなかった。
愛しくてたまらなかった。
だから本当の弟のように大切にした。
気にかけてくれ図書室の先生だって他の先生と同じように俺を苗字で呼ぶ。だから本当に朝哉だけが俺を名前で呼んでくれたんだ。
朝哉が俺をこの世界に繋ぎ止めてくれた。
朝哉といるとこの世が自分にとっても素晴らしいものであるように錯覚させてくれた。
本当にかけがえのない時間だったんだ。
でも俺はまだ子どもで、どうしても抗えない力がある。
ここまで読んでいただきありがとうございました!