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31:【それぞれの道】
高2の秋、進路についての説明があった。わたしはもう心に決めていた。一応わたしが通っているところは進学校なのでみんな普通の大学を志望する子が多い。その中で、わたしと琴音だけは違っていた。芸術関係の学部、あるいは大学に行くには、学校で行われる試験より「実技」に重きをおかれていることが多い。わたしはバイトをはじめ、そのお金で本格的なレッスンを受ける事になった。琴音は国内でも最高峰と言われるところに入るため、積極的にコンクールに出るようになる。
その隣には同じように切磋琢磨する美音が居た。事実上の入学枠を取り合うライバルとなるわけだが、相変わらず美音は思いつきで行動をするし、直情的になった琴音に振り回されたりしているようだった。わたしはもう、それすらも可愛いやりとりだと思う程度には気にしなくなっていた。




