3:【日常】
「はい次、藤岡琴音ー!」
「はい」
私は席を立ち上がると教壇にテスト用紙を取りに行く。
「すっご、また満点かよ」
机に帰り、椅子に座ると後ろから声が聞こえてきた。
幼馴染の白谷るりは私の解答用紙を覗き込みながら言う。
「すごくないよ、音楽的に初歩的なことしか出てなかったし」
「うわ、それ何気に嫌味?もでらーと?だっけ、私ドイツ語とか全然分かんないし」
「…教科書の後ろにまとめてあるよ。あとイタリア語ね」
「相変わらずつれないなぁ。冗談だって」
「るりの場合は冗談に聞こえないから。このテスト大丈夫だった?」
「いや、めっちゃ赤点!」
名前…「2-A 白谷るり」と書かれたところ以外、ほとんどにバツ印が書き込んである。
「それ、絶対補習行きだよね」
「だるいわー。数学とか他の教科もやばいのに」
小中高と同じ学校に通う幼馴染みのるりはぼやく。
「いいよねー琴音は頭良くて」
「要領がいいだけだよ。るりは要領悪すぎ」
「またもや嫌味かよ」
笑っていると後ろでチャイムの鳴る音がする。昼休みでざわりと教室内が動き出す。
「昼どうするー?食堂?」
「うん。私もそうするつもりだったから、一緒行こ」
そんな日常が―
―少しずつ、違うフレーズを奏で始める。
次回投稿予定【2024年2月5日】
ep.4【突然】、ep.5【取引き】、ep.6【代償】