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22:【連弾】
演奏を続ける美音の隣に琴音は腰掛けた。
美音が息を吸い込むタイミングに合わせて、琴音の指は鍵盤に踊り始めた。
音符と音符が合致する。流れるように二人の間を行き来するフレーズ。呼応していく二人の息。
「そっか…」
わたしはため息をついた。
うつむいて、泣きそうになる。
「…わたしじゃ、ないんだね」
わたしの知らない曲、知らない音色、知らない感情、琴音のすべてがそこにあった。
わたしは一人、改札に向かって歩き出す。
二人の連弾を聴きながら分かったことがある。
そこに、わたしの居場所はないという事。
琴音と美音の演奏聴いて、わたしは複雑な気分だった。あれから結局わたしは琴音を残して一人電車に乗って帰った。
夕飯も食べずに考える。
これからどうするか。どうしたいのか…。
答えはすでに出ているのに。




