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17:【待ってる】
ある日を堺に、私は琴音とるりに出会わなくなった。家に帰ってからレッスンがあるので、そう長い時間駅のピアノを弾いていることはできない。
連絡先も知らないし、ここで待つしか私にできることはなかった。
『何かあったのかな…?』
それでも私は駅のピアノを弾き続ける。ひとり孤独に弾く音色は少しずつ諦めと虚しさに変わっていった。
気が逸れてミスタッチが増える。
そんな自分にイライラした。
私の演奏を聴いてくれる人は随分増えた。そのなかに二人を探す。
今日は来てくれるかな?
明日は来てくれるかな?
そんなことばかりを考える。




