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10:【革命】
琴音の変化はすぐに分かった。
帰り道、一緒に最寄り駅に着く。すると必ず琴音は置かれたピアノに目を向ける。ほんの一瞬だけれど、期待に染まった瞳で。
あのピアノを弾く女の子は、いつも同じ時間帯にいることが多い。もちろん、毎日というわけではない。「今日はいるのかな?」そんな、一瞬の期待。どうしてもその瞳に嫉妬してしまう。
その日、駅の広場から多少のざわめきとピアノの音がしてきた。
あの子だ。
隣に並ぶ琴音は表情には出さないが、少しだけ早足になっていく。
ピアノを弾くその子の周りには十人ほど…いや、遠巻きに聴いている人を含めればもっとだろう。それくらいの人だかりができていた。
「革命…」
そうつぶやくと、琴音は自分からそのピアノに足を向けた。
「待って!」
わたしはそのピアノに琴音が近づかないように手を取ろうとする。でも、間に合わなかった。




