表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

初収穫


 スキルを試して意識を失ってしまってから数時間後には目を覚ました。だが、目を覚ました後は倦怠感があって、なんとか晩ご飯を食べた後には家族からの提案で大事をとってすぐに眠る事となった。


 翌日は、心配した両親と妹によりほぼ家に監禁状態になってしまった。自分で大丈夫だと説得していたのに倒れたので、今日は家族の言うとおりにしようと家で妹の相手をしながら、回復していた魔力を9カ所の耕作地に使ってみた。少し不安はあったが倒れることはなく大丈夫だったので、意識を失う前の時を考えてみると魔力をすべて使ってしまった事が原因だと仮定して、実験をしてみる事にした。


 夜、家族みんなで寝ている時にスキルを操作して10カ所目の耕作地を作った後、意を決して魔力を与えてみた。結果は、予想していた通りにすぐに意識を失いそうになるなか、やっぱり意識を失った理由が魔力を使い果たしたからだったんだと確信した後、次に意識を取り戻した時には朝になっていた。


 起きる時に体に()()()が残っているような感じはしたが、朝の畑管理と朝ご飯を食べるころには無くなっていたので、これなら無駄なく魔力を使い切れると思い、とりあえず本当に収穫できるか確認するまでは続けることを決めた。


 家で一日過ごした次の日には、あの時に倒れてしまったのは久しぶりに運動したから体がついて行かなかったからだと両親には話して、両親のどちらかの付き添いか妹の監視付きで様子を見ながらなら、いつものように手伝いをしてもいいと許可を得て過ごすこと7日目。


 朝から父と家の畑を手伝って朝食を食べて父が出かけた後、家の手伝いも終わって妹の遊び相手として外で見守っている時に、スキルが作物の収穫が出来るようになったことを知らせてきた。


 リヒトは、この7日間でスキルで他にできることがないか探すうちに発見したお知らせ機能や、最初は常に見えていたスキルの表示も見えなくすることが出来るようになっていた。


「リタ、そろそろ家に入ろうか」


「え~、もっとそとであそびたい~」


 妹のリタを家で昼寝でもさせてからスキルが本当に使えるのか試したかったけど、まだ昼過ぎだとリタの元気が有り余っているみたいだな。仕方ない、目立たない家の畑の近くで確かめるとするか。


「それなら、朝に手入れをした畑で気になる所があるから畑の近くで遊ぼうか」


「ん~いいよ~」


 家の前から裏に回ると、妹は庭に落ちていた小枝や石を拾って家の近くに集め始めた。リタが遠くに行く事もなさそうだなと思うと、小さな策で囲われた畑の中まで入ってスキルを表示した。


 表示された画面ではジャガイモ5か所、カブ4カ所が全てに()が表示されていて、試しに一か所のジャガイモをさわると収穫可能《取り出す・収納(不可)》と表示された。


 おそらく収納が出来ないのは収納箱を設置せていないからだと思うけど、本当にたった7日で出来た野菜を取り出すことが出来るか。


「・・・・・やれば分かるんだからやってやる」


 出来なかったときの不安と本当に出来るならという期待でかすかにふるえる指で《取り出す》をさわった。すると、目の前の画面から零れ落ちるようにして、形の整ったジャガイモ5個が足元へと転がり落ちた。


 リヒトが足元のジャガイモを見つめたまま立っていると、いつの間にか近づいてきていたリタに後ろから抱き着かれた。


「おにぃちゃ、みつけた~。あ~おいもだ~~」


 リタは転がるジャガイモに興味が移ったようで、零れ落ちてばらけていたジャガイモを一か所に集めようとしていた。リタが集めたジャガイモがばらけないように押さえながら、現実として起こった事を整理しようとして、この後どうするのかも考えていた。


 本当にできた・・・・・本当に作れてしまった。僕はどうしてこんなことが出来るんだ?みんなも出来るのか?いや、こんなことが出来るならもっとこの村は・・・。どうしよう、話した方がいいよな。とりあえず話してみて・・・・・変に思われないかな。


 あまりに不思議な出来事に直面して、リヒトが混乱と驚きや不安でまとまらない思考をしている時に、ジャガイモを集め終わったリタが嬉しそうに話しかけた。


「おいもいっぱい!きょうはおいもたべれるね」


「・・・・・そうだな」


 開拓村の現状では、1日2食の食事で沢山の料理を食べれることはほぼなかった。畑を作っていても大規模に広げることは出来ず、狩りの成果で食べれるものがさらに減る事もある。どうしてこんなところに住んでいるのか、なにか事情があるのか両親には聞いていない。だけど、こんな場所だけど必死に生きようと、少しでも生活を良くしようとしているのは知っている。だから、正直にすべて話す。なぜこんなことが出来るのかは分からないけど、食べ物はどれだけあっても困らないんだ。使えるだけ使いまくって絶対に飢えることのない生活にしてみせる。


「リタ、一緒に家までおいも持って帰ろうか」


「うん!」


 リヒトは4個、リタは1個のジャガイモを両手で抱えてふたりは家へと向かった。



お読みくださりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ