夢で見た景色
「どうしてこんなことになったのだろうか」
朝起きて部屋のバルコニーに出ると、眼下に見える景色を眺めながら男は一人呟いた。
男がいま見ているのは、自分が今いる城から城下町が遠くに見える城壁まで広がっている景色。ここが異世界である事を考えると違和感でしかない光景なことも、先ほどつい呟いてしまった理由ではあるのだが、一番の理由は今の自分の立場がいまだに信じられない事だった。
この立場になって数か月は過ぎているのに、朝起きるたびに今までの事は夢なんじゃないかと思うほどにいろいろあった日々だった。だけど、起床してから毎日見ている景色とこの後すぐに来る人達に会うたびに、確かに現実なのだと実感する。
最初は、ただ家族を少しでも助けたかっただけだったのに・・・。
思いにふける男の背後から部屋の扉をノックする音が聞こえると、男は部屋に戻り自ら扉を開けた。
部屋の前には珍しくここまで一緒に歩んできた人達みんながいた。男が立場を考えてくださいと自分で扉を開けたことに注意を受けながらみんなから挨拶される。
改めてみんなを見て一日の始まりを実感すると、みんなへ挨拶を返した。
「おはよう、みんな。今日もいい国を作る為に頑張ろうか」
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