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第11話 あんまり見ないでください!

 Tシャツや下着、スキンケア(お泊まりセットという使い切り商品が売っていた)を購入し帰ってくると、早瀬先生が寝る部屋を案内してくれた。


 唯一今まで入ったことがない部屋。早瀬先生のプライベートの寝室だ。


「あんまり綺麗じゃないけど」


 心なしか少し恥ずかしそうに見える早瀬先生。ただ部屋を案内してもらうだけなのに、風香まで照れ臭い気分になってしまう。


 妙に意識して馬鹿みたい……!

 

 カチャリ。


 白い扉を開けて現れたのは、セミダブルの大きいベッド。濃紺のカーテン。

 殺風景で、装飾品は何もなかった。床には未開封の白Tシャツが山のように積まれている。あれ?これってもしかして……。


 「その白いTシャツ、もしかして何枚も持ってるんですか?」



 早瀬先生が着ているシャツを指差す。


 「そうです!なるべく洗濯しないで済むように、タオルとかTシャツは常時ストックしてあるんです。未使用のタオルは洗面所の戸棚にあるのでおろして使ってください」


 「は、はあ……」


 「何か困ったら言ってくださいね。原稿終わるのは多分……朝5時くらいの心算でいてください」


 去っていく背中を見ながら、漫画家って本当に大変だなあと一息。


 スマホを見ると、時刻は23時。寝る時間はしっかりある。

 ただ、寝れるかと言われると……。冷静に考えて、結構な状況である。


 そもそも、男の子の部屋に来るの初めてだ……!!

 

 親しくもない男の子のベッドで寝るなんて、いけないことのような気がする。


 しかも6歳も年下の。


 落ち着けるわけもなく、風香は意味もなく部屋をぐるぐると周回した。慣れないことをした疲労も合わさり、結局寝たのは日付が変わってからだった。


◆◆◆◆◆◆◆


 「…香さん、起きてください。風香さん!」


 体を揺さぶれ、風香は微睡の世界から引き戻された。


 見覚えのない白い壁。

 肌馴染みのないタオルケット。

 極め付けに、彫刻のように整った顔の青年が風香をじっと覗き込んでいる。


 一瞬、状況が飲み込めなかった。


 そうだ、そうだった。昨日は早瀬先生の作業場に泊まったのだった。カーテンから漏れる朝日で、部屋は明るくなっている。


 「朝早くすみません。原稿上がったのでチェックお願いできますか?」


 「は、はい……っ」


 そういえば、今すっぴんだよね私……!


 顔を見られたくなくてタオルケットを顔まで引き上げた。


 「?何してるんですか?」


 早瀬先生はベッドに乗り掛かかり、タオルケットを剥がそうとしてくる。


 「や、やめてください〜!!」


 男性と朝、ベットで2人きり。男性が苦手な自分にとって、すごい状況である。何より……こんな美形にすっぴんを見られたくない!


 「ちょっと、あんまり顔を見ないでください。恥ずかしいので……!10分時間をください……支度しますから」


 「えー?可愛いのにな……」


 さらっとすごいことを言う。部屋から追い出し(これは早瀬先生の寝室なのだけれど)、なんとか心拍数を落ち着ける。


 何を緊張しているんだ。今は業務中なんだから。


 時間は朝の5時23分。


 デッドラインは7時と言っていたから、くだらないことで時間を消費している場合じゃない。風香は気持ちを切り替え、手早く身支度を済ませた。

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